TUP BULLETIN

速報426号 ドナのイラク報告(11) サタンを探して 041219

投稿日 2004年12月19日

DATE: 2004年12月19日(日) 午前11時15分

サタンに破滅をと、米軍はファルージャに侵攻した。サタンはどこにもいなかった。 ひょっとして、ホワイトハウスに?


 4月、米軍包囲下のファルージャに、人道救援活動のために入り、その帰路、地元 のレジスタンスによる拘束を経験したオーストラリア人女性ドナ・マルハーンが、11 月24日に再びバグダッド入りし、そこから送っている現地報告をお送りしています。 今回は、バグダッドの学校へ逃れてきたファルージャ難民を訪れたドナの報告です。 (翻訳:福永克紀/TUP)


ドナ・マルハーン サタンを探して 2004年12月11日

「この敵には顔がある」と、ついこの間のファルージャ攻撃を始める前、海兵隊中佐 が発表した。

「彼は、サタンと呼ばれている。今ファルージャにいる。我々は彼を滅ぼすのだ」

こうして、何千人もの重装備した「神の軍隊」が、かつて人口25万人を誇ったこの町 に侵攻し、町は灰燼と瓦礫と腐乱する死体の山と化してしまった。

サタンの捕獲を未だ米軍が発表していない以上、彼はまだ捕まってはいないものと思 われる。

今日、私はバグダッド中心部のある学校を訪れた。最近のハリウッド流欧米型ジハー ドの始まる前や、その最中にも、ファルージャから逃げ出した300人を越える市民 が仮住まいをしているところだ。

サタンが見つかっていない以上、ひょっとしてこの中にいるのだろうか?

到着すると、長老たちから歓迎の挨拶を受けた。その人たちは、私に着座を勧める と、飲み物を出して、手厚くもてなしてくれた。私たちは、長い時間、ファルージャ とイラク全土の状況を語り合った。私はこの人たちの見解や希望を聞き、たくさんの ことを質問した。長老たちは、明確な考えをもち、礼儀正しく上品だった。

最後には、私と友人たちをいずれファルージャに招待すると言われた――「平和が訪 れたとき」に、名誉のゲストとして。「そのときは、歓迎の祝賀会を開きましょう」 と、言ってくれた人もいた。

侵略国のオーストラリアからやってきた私に、こんなにも友情を示してくれるからに は、この男たちの中に変装して隠れているサタンはいるはずがないと確信した。

誘われて、外に出てみると、すばらしい光景で迎えられた。この難民避難所の子ども たちが、きちんと列にならんで私を待っていてくれたのだ。よちよち歩きからティー ンエージャーまで、それに私が抱き取らなければならなかった5か月の赤ちゃんま で、さまざまな、愛らしい子どもたちの群れが。

私は、米軍がサタンの卵扱いするこの子達の目を見つめた。しかし、邪悪なものは何 も見えない。

歯まで見せる顔いっぱいの笑み、大きな茶色の目、えくぼがあり、くすくす笑う子 も、ふざけながら握手する子も、ぎゅっと抱きついてくる子もいた。

そう、サタンは、ここでも見つからなかった。

私は学校中を歩き回り、それぞれの小さな教室に住むすべての家族たちと対面した。 女性たちはまるで自分の家族全体の友人に対するように、私に挨拶してくれた。

この人たちの目に浮かぶ温かみに、びっくりすると同時に心をうたれた。自分たちの 生活や受けた被害のことを、穏やかに話してくれた。

サタンなど、彼らの中にいるはずもなかった。

ある家族と話しているとき、若者たちが入ってきた。私が何者かどこから来たかを尋 ねた彼らは、オーストラリアが戦争に関わっていることについて語り始めた。彼らは 傷つき怒っていたのだ。

いかに私が援助を届けにきているといっても、私の国が彼らの国を侵略してめちゃく ちゃにし、実力で占領し続け、彼らの家をすべて壊してしまったことが、帳消しにな るわけはないのだ。彼らは、ジョン・ハワードのことも名指しで言った。

この若者たちの白熱した議論が長く続いた。今ここにオーストラリア人がいるのだか ら、これは絶好の復讐の機会だと考えるものもいた。

だが、話し合うにつれ、私たちのやっていることを見、私たちのメッセージを聞き、 彼らもようやく理解してくれた。

彼らはその痛みにもかかわらず、この事態を残念だと思う私たちの言葉と、彼らが幸 福に暮らせるようにと願う私たちの関心と、私たちが実際に援助と世話を提供してい ることを、認めてくれたのだ。最後には、感謝と友情の気持ちを見せてくれた。

この強烈な痛みや怒りの中にさえ、サタンは現れなかった。

私は、サタンを見つけることなく、このファルージャ市民のコミュニティをあとにし た。

かわりに私が見いだしたのは、ムスタファや、クサイや、カリードや、ゼイナブや、 ハンナや、オマール坊やだった。

私は人間をそこに見つけた。ちょうど皆さんと同じような人間を。

あなたの巡礼者

ドナより

追伸:この話の最後のほうで、「私たちの言葉、私たちの関心、私たちの世話」とい う言い方をしました。これは、(いろいろな方法で)イラクの人々を支持すると表明 してきた、皆さんと私のことです。

追追伸:今日の訪問のことは、この次にもっと詳しく書いて、この人たちの考えを分 かち合いたいと思います。最近インターネットの具合がよくなくて、通信状態は遅く てトロトロです。

追追追伸:今日は、きつい日でした。本当にハードな一日でした。でも、素晴らしく 価値ある一日でした。

追追追追伸:「(だが、驚くには当たりません。)サタンでさえ光の天使を装うので す。」――新約 コリントの信徒への手紙二 11章14節(新共同訳より)

(翻訳 福永克紀/TUP)

原文:[The Pilgrim] Looking for Satan URL: http://groups.yahoo.com/group/ThePilgrim/message/135