TUP BULLETIN

速報490号 ドナからの手紙4月11日 「休戦下のパレスチナ人の生活」、これが? 050421

投稿日 2005年4月21日

DATE: 2005年4月21日(木) 午前10時51分

信じられない。でも事実です。イスラエルには普通のことなんかありえないのです。


 2004年4月イラクで、米軍包囲下のファルージャに人道救援活動のために入り、そ の帰路、地元のレジスタンスによる拘束を経験したオーストラリア人女性ドナ・マル ハーンは、現在パレスチナに滞在しています。ヨルダン川西岸で巡礼の旅を続けてい た彼女は、当初予定の短期間滞在を大幅に延ばした3箇月を超える滞在を終え、近く オーストラリアへ帰国する予定です。彼女が見たパレスチナ/イスラエルとはどんな ものだったか、おそらくパレスチナからの最後の報告となるでしょう。 (翻訳:福永克紀/TUP)


ドナ・マルハーン 分かりますか 2005年4月11日

お友達の皆さんへ

この週末にかけて、エルサレム旧市街の狭い通りに3000名もの重武装のイスラエル兵 と警官が集結し、旧市街境界壁を取り囲み、数十もの検問所であたり一帯の通行をス トップさせているのを見ました。

この重武装集団の出現は、世界中のイスラム教徒があがめる聖なるアル・アクサ寺院 がある旧市街の神殿の丘を、ユダヤ人右派グループが襲撃すると脅したことへの対応 でした。

この前、右派ユダヤ人(アリエル・シャロンのことです)が愚かにもこのような挑発 的行為に出た時には、第2次インテファーダ(反乱)が勃発し、過去4年間でパレス チナ人3500人以上とイスラエル人940人以上の死をまねきました。

ですから、当然にもここ数日のエルサレムはずっと殺気立った雰囲気です。

ひょっとして、この週末に3000人もの兵士や警官がパレスチナ人とその聖所を守って くれるなんて、なんと幸運なことでしょうなどと思ってはいません?

まあ、普通の民主国家ならどの国の人でも、警察や軍隊が派遣されて守られるのは、 過激な人たちから脅威を受けている人々だと思うでしょうね。

しかし、ここはイスラエルという国で普通のことなどありえないし、もしあなたの名 前がアブドゥルだったら間違いなく民主主義とは無縁なのです。

警察本部長は、警察と軍隊の強力派遣部隊についてメディアに説明するのに巧みでは ありませんでした。

彼は、攻撃に対しパレスチナ人がとるどんな反撃からもユダヤ人を防衛するために、 部隊が派遣されたのだと明言したのです。そうです、まさにそんなふうに言ったので す。彼が公平な態度を装おうともせず、国家公認の人種主義を隠そうともせず、脅威 を受けている人々を守るかのごとく振舞うこともしないことに、私は唖然としまし た。

また、いつものごとく、責任はパレスチナ人に課せられたのです。もし、何かが起 こっていれば、挑発的行為に訴えると脅す極右ユダヤ人には落ち度はなく、パレスチ ナ人の責任になっていたでしょう。

右派のデモは空振りに終わったものの、当地のパレスチナ人の生活がどのようなもの か、この大失態自体がわずかながら示しています。

週末を通じて、旧市街の周りに築かれた検問所で止められたのはパレスチナ人でし た。40歳以下の男性は、全員旧市街に入ることを拒否されたのです。それが意味する のは、男は学校や仕事や店を開けに行くことも、金曜の礼拝に行くこともできず、お よそ普段おこなっているすべてのことができないということです。多くの商売人も従 業員が来られないので営業することもできず、深刻な経済的損害を被ったのです。

一方、ユダヤ教徒たちは、大人数で旧市街に列をなして入域してきたのです。分かり ますか?

つまり、暴力と挑発の脅威から集団的懲罰の被害を受けたのは、脅威を与えた者たち ではなく脅威を受けた者たち、すなわちパレスチナ人なのです――分かります?

これは、極右ユダヤ人入植者が町のど真ん中に住むヨルダン川西岸の町、ヘブロンで は度々起こっていることです。

彼らはとてつもない人たちです――習慣として、パレスチナ人の子供たちの通学時に 窓からごみや熱湯を投げつけ、樹齢100年のオリーブの木を切り倒し、財産を破壊 し、人種主義的な落書きをスプレーで描き、つばを吐きかけ、ののしり、全面的テロ 行為や殺人をおこなっているのです。

ヘブロンの入植者たちがとりわけ暴力的になった時には、いつでもそのあとに起こる ことを予言できます。

その被害を受けるのはパレスチナ人です。ただ単にその暴虐の被害にあうことだけを 言っているのではありません。奇妙な形でいつも何らかの懲罰をも受けるのです。

たとえば、入植者たちが町中を暴れまわるたびに、外出禁止令を受けるのはパレスチ ナ人で、暴力的な兇漢たちではないのです。分かりますかね?

入植者たちが市場で露天をひっくり返して回り大混乱を起こせば、警察に市場から追 い出され、その後何日も何週間も時には何箇月も閉店させられるのはパレスチナ人 で、大混乱を起こした兇漢どもではないのです。分かります?

先週、私の友人の若いアメリカ人ふたりが、恒常的なユダヤ人入植者のテロから片田 舎の小さな村を守ろうとしていて、彼らから何発も殴られました。それを見ていたパ レスチナ人が事件を警察に通報すると、警官がしたことはただ電話を切ることでし た。負傷したふたりのアメリカ人が警察署に行ったところ、逮捕されたのは殴られた 彼らだったのです(冗談を言っているのではありません)。分かる?

ヘブロン南部の入植者たちが、パレスチナ人の家畜を全滅させようと彼らの村の周辺 にある丘に毒薬を撒いたとき、数人の目撃者がいたにも関わらず、警察はだれも逮捕 しませんでした。その代わりに、毒を撒いた者たちと同じ入植地の人物を事件の「調 査」担当者として選任したのです。貴重な家畜がたくさん殺され長年にわたって土地 が汚染される事実にもかかわらず、どんな逮捕も期待できません、そう、民主主義を 標榜する国においてです、まったく私たちには理解できません。

メディアが平穏な停戦を吹聴している一方で、当地の私たちはシャルム・エル・シェ イク首脳会談以来、数十名のパレスチナ人が殺されたことを知っているのです。皆さ んは彼らの失命の話を聞いたことはありませんか? メディアは報道しませんでした か? 考えてみてください、そしてなぜかを問うてください。

非人間化させる検問所はパレスチナ人を青空監獄に閉じ込めたまま維持され、何千人 もが刑事手続きも裁判もなくいまだ投獄されていて、イスラエルのアパルトヘイトの 壁(隔離壁)建設のためパレスチナ人の土地は収奪され、家屋破壊の命令が発令さ れ、羊飼いたちはテロ攻撃を受け、今週は3人の若者が銃殺され、入植者たちは毒を 撒き草を枯らし家畜を殺す、そして、それがまだ続くのです。

これが、休戦下のパレスチナ人の生活です。これが、彼らにとっての「平和」なので す。

こんな観点からの話を聞いたことはないでしょう? 私はパレスチナに来る前は、あ らゆることでパレスチナ人の観点からの話を聞いたことはまったくありませんでし た。もし、私がパレスチナに来ることもなく自分自身で目撃していなかったら、おそ らく、こんなことが起こっていようなどとは信じなかったでしょう。

先週私はイスラエル「本国」で過ごし、たくさんのイスラエル人と話をしました。彼 らは、彼らが言うところの「イスラエル」側からの話をしたがりました。彼らの話を 聞くと、それは私にはなじみの話に聞こえました。そっち側の話はすでに聞いたこと があるという気がしてきたのです。

実際、ほとんど毎日の生活の中で私はそれを聞いていて、今も聞いているのです。日 曜学校で、歴史の授業で、メディアの報道で、テレビで、本で、映画で、私はそれを 習っていました。子供の私はイスラエルの歴史物語に相反するどんなことも聞いた記 憶はありません。それをそのまま受け入れていたのです。

しかし今や、私はパレスチナ人の物語を聞いただけではなく、実際に見たのです、そ してそのことに深く困惑し、そして、理解できないのです。また、皆さんが聞いたこ ともないかもしれないという事実に困惑しているのです。このことは皆さんをも困惑 させるでしょうが、この悲劇的な話のもうひとつの側面がなぜこんなに意図的に私た ちに隠されているのかを問わなければなりません。

私はパレスチナにはほんの数週間だけ居るつもりでしたが、3箇月半の滞在の後、失 望と悲しみと当惑と怒りを抱え、明日当地を出発します。

帰国するに当たり、皆さんに強く勧めます、もしできることなら、どうか当地に来て 過去になにが起こってきたのか自分自身で見て、聞いたこともない話を聞き、今なに が起こっているかを見て、テレビのニュースでは見たこともない話を目撃してくださ い。バランスをとるのです。

その時皆さんが見るのは、人権侵害であり、国家による土地の強奪であり、穢れた巨 大なコンクリートの壁であり、制度化された人種主義とアパルトヘイトであり、非人 間化させる検問所であり、処罰なき暴力であり、国連決議違反であり、国際法の無視 であり――すべてが西側スタイルの「民主主義」下で――そして、世界がそうさせて いる。

私にはまったく理解できないのです。

皆さんの巡礼者 ドナより

追伸:下部および添付の写真は、週末にエルサレム旧市街に現れた軍隊の写真です。 [訳注::[TUP-Bulletin]では、写真の添付はできません。 TUPの星川さんが下記の 自分のサイトに掲載してくれています。 http://blog.melma.com/00126388/20050417214937 ]

追追伸:本当はこの重要な時期に当地に残り仕事を続けたいのですが、5箇月も国を 離れてしまって、帰って果たさなければならない約束があるのです。4月21日にシド ニーで会いましょう! 私は今、よく冷えたハンターバレー産のヴェルデーリョ・ワ インと、素敵なチーズ/フルーツの皿盛りが欲しくてたまりません(ヒント、ヒン ト)。

追追追伸:火曜日にヨルダンに向けて出発し、できればシリアに立ち寄って、来週シ ドニーに向かうつもりです。

追追追追伸:帰国後、少しの間雲隠れするつもりですが、パレスチナ状況やイラク最 新情報の話を皆さんとしたいと思っています。

追伸ⅹ5:4月26日に始まるクイーンズランドのウォリック・ピース・フェスティバ ルで講演する予定です。これはすばらしいプログラムで、皆さんにも参加をお勧めし ます。http://www.peacefestival.org.au/ [訳注:英語]を参照してください。

追伸ⅹ6:モルデハイ・バヌヌ支持への呼びかけに応えてくださった皆さん、ありが とう。その結果彼はオーストラリアからのメッセージを受け取り皆さんの支持に感謝 しています。彼の規制の再検討は今月末の予定ですので、どうか圧力をかけ続けてく ださい。

追伸ⅹ7:「3百50万人ものパレスチナ人を占領下に置き続けようとする考え方は、 イスラエル人にとっても、パレスチナ人にとっても、そしてまたイスラエル経済に とっても、最悪のものだと思います」――イスラエル首相アリエル・シャロン、2003 年5月27日(これをどうやって分かれというのよ!)

(翻訳:福永克紀/TUP)

原文:Figure it out URL: http://groups.yahoo.com/group/ThePilgrim/message/157