TUP BULLETIN

速報574号 ドナより 12月24日 屋外監獄ベツレヘムのクリスマスイブ 051231

投稿日 2005年12月31日

DATE: 2005年12月31日(土) 午後8時11分

2005年に、マリアとヨセフはベツレヘムに行けるか? ドナのパレスチナ報告


オーストラリア人女性ドナ・マルハーンは、2003年春イラクでの「人間の 盾」に参加し、04年春には米軍包囲下のファルージャに入り、その帰路地元レ ジスタンスによる拘束を経験、04年冬から05年春にかけてイラク・パレスチナ を旅して、05年8月アメリカからシンディ・シーハンのキャンプケーシーにつ いて報告してくれました。オーストラリアに帰国したドナは自国のテロを見据 え、米国主導のイラク戦争・占領にオーストラリアが最も貢献してきたパイン ・ギャップに向かい民間査察を強行して逮捕され、現在保釈中の身です。その ドナが、クリスマスのパレスチナに思いを馳せます。 (翻訳:福永克紀/TUP)


ベツレヘムのクリスマスは屋外監獄 ドナ・マルハーン 2005年12月24日

お友達の皆さんへ

去年のこの時期、クリスマスイブには、私はベツレヘムにいました。

ベツレヘムに居られてうれしくもあり、同時にそこがおかれている状況を見 て、打ちひしがれる思いもしました。そこはイスラエル軍の占領道具に取り囲 まれていたのです。戦車や、マシンガンを持った若年兵士や、レザーワイヤー や、検問所や、憎悪や、抑圧に。

今年はもっと悪くなっています。イスラエルによるアパルトヘイトの壁(灰色 の巨大なコンクリート製怪物)が、小さな町ベツレヘムを完全に窒息させてし まっています。今や、小さな入口ひとつと出口ひとつがあるだけで、しかもほ とんどの者が通ることを許されません。町は屋外牢獄になってしまっていま す。

もし、マリアとヨセフが2005年にナザレからベツレヘムに旅したとすれば、明 らかに町には入れなかったでしょう。もし、たまたま潜りこめたとしても、ベ ツレヘム市民の動きを管理支配する検問所のために、間違いなく出て行くこと はできなくなるでしょう。

ベツレヘムに住んでいるのは、動物ではなく、実際の人間だということを思い 起こしてください。

今年、どうか、平和の王イエス・キリストが誕生した所と、そこでのイエスの 子供たちの戦いを忘れないでください。

下記は、アパルトヘイトの壁の結果、深刻な被害を同様に被っているパレスチ ナの村アボウドのキリスト教神父による話です。

もし、来年の平和を願う祈りがあるならば、聖地に平和がおとずれますよう に、そして、かの地のアパルトヘイトと抑圧に終わりがきますように。

皆さんの巡礼者

ドナより

追伸:現在イラクで拘束されている素敵なハルミート・スーデンに会ったのも 1年前でした。今なお、彼とCPTの人たちの解放を告げる知らせを待ち続けてい ます。どうか皆さんも祈り続けてください。

追追伸:このシドニー・モーニング・ヘラルド紙のすばらしい記事は、マリア とヨセフが2005年にベツレヘムへ行こうとすれば直面しなければならない障害 を詳細に述べています。 http://www.smh.com.au/articles/2005/12/23/1135032186796.html の 「まだ長き危険な2000年間の旅」(Still a long, dangerous journey 2000 years)です。

追追追伸:すみません、パイン・ギャップ行動と逮捕に続くアリス・スプリン グスの裁判結果をまだ報告していませんでした。私たちは全員現在保釈中で、 1月に何らかの告知があって(それには私たちは出頭する必要はありませ ん)、重罰(投獄)をともなうもっと深刻な容疑である「防衛(特別事業) 法」違反で起訴されるかどうかが分かります。私たちは、4月に公判付託手続 きのためアリス・スプリングスに戻らなければなりませんが、その時に裁判の 日にちが決定されるでしょう。ウェブサイトを速く立ち上げて(どなたか手 伝ってくれない?)、法廷闘争費用集めのキャンペーンを始めたいと思ってい ます。詳細はつづく……

追追追追伸:ハッピー・アンド・ホーリー・クリスマス・トゥー・ユー!

追追追追追伸:「私の宗教は、無条件にすべての人を愛しすべての人を受け入 れよと教えます。ここにはユダヤ教徒の良き人たちや、イスラム教徒の良き人 たちや、キリスト教徒の良き人たちがいます。私たちは、共に生きることがで きるのです。ここは、聖地なのです」――フィラス・アリダ神父
クリスマス、壁に分離されて フィラス・アリダ 2005年12月23日

ヨルダン川西岸の村、アボウドの教区司祭として私がしなければならないクリ スマスの準備には、教区民たちが私と一緒にベツレヘムに旅行する許可を求め るため、彼らの身分証明書番号を記録しイスラエル当局に申請をすることが含 まれています。ある者は許可を拒否されてベツレヘムに参拝するのを阻まれる かもしれません。私たちは、わが主キリストのめでたい誕生を祝うため教会の 飾り付けをする一方、イスラエルが1ヶ月前に私たちの村の土地に建設し始め たアパルトヘイトの壁に対する次の抗議行動のために横断幕の準備もしていま す。

アボウドは、ヨルダン川西岸の西部にある町ラマラのオリーブ段々畑に囲まれ た村です。住民は2200人で、その内900人がキリスト教徒です。村内には7つの 古い教会があります。最古のものは3世紀に遡ります。イエスがローマ街道を ガラリアからエルサレムに向かった時、アボウドを通ったと私たちは信じてい ます。イスラエルが建設しているアボウドを通るこの壁は、イスラエルの安全 のためではありません。それは、違法なイスラエル人入植者たちを安心させる ためのものです。

イスラエル政府は、壁はイスラエルの土地に建設しているとの偽りを主張し続 けていますが、アボウドは、1967年以前のイスラエルとヨルダン川西岸地区と の境界であるグリーン・ラインの内側3.75マイル(訳者注:約6キロ)にあり ます。壁は、ふたつの違法なイスラエル入植地のために私たちの土地1100エー カー(訳者注:約445万平方メートル)を切断することになるのです。

時としてイスラエル人は、キリスト教徒に特別待遇を与えます。時には、イス ラム教徒には検問所を通過させないで、キリスト教徒の通行は許可します。私 たちを分裂させようとして彼らはこのようなことをするのですが、実のとこ ろ、私たちイスラム教徒とキリスト教徒は兄弟なのです。

私たちの教会のオルガン奏者ユーセフは、「外国人のなかには、パレスチナの キリスト教徒にとって最大の脅威はイスラエルの占領ではなくむしろイスラム だと、信じている人たちがいます。これはイスラエルのプロパガンダにすぎま せん。私たちをイスラムから守っているのはイスラエルだと、彼らは世界に言 いたいのです、しかしそれは本当ではありません。アボウドでは、私たちイス ラム教徒とキリスト教徒は、普通の平和な生活をともに送っているのです」 と、私に話してくれました。

「先週私たちの村では、村の守護神である聖バーバラの祝日を祝いましたが、 村外にあるその聖堂は2002年にイスラエル軍から損傷を受けています。私たち は、イスラム教徒の人たちを招待し、伝統的な聖バーバラの祝日を共に祝った のです。彼らもまた、伝統的なラマダンの夜の食事には私たちを招待し、とも に頂くのです。私たちは良い関係にあります。イスラム教徒は平和的な人たち です」

プラカードを掲げ、歌を歌い、祈りを唱え、私たちの村では毎週イスラエルの アパルトヘイトの壁に抗議してきました。平和的なデモとオリーブの植樹を通 じて、イスラエルによる私たちの土地の収奪に反対していると、イスラエル人 と国際社会に伝えたいのです。

私たちはこの地で平和のために力を注いでいます、しかしイスラエル兵は今も なお、警棒や音響爆弾や催涙ガスやゴム皮膜鉄製弾丸で私たちの平和的抗議行 動に攻撃を仕掛けています。

12月11日私たちは、聖地の最高位ローマ・カトリック聖職者、エルサレムのラ テン総大司教ミカエル・サバ師によるアボウド訪問という栄誉に浴しました。 パレスチナ人であるサバ総大司教は壁の建設予定路にオリーブの木を植え、平 穏に抗議している1000人の人に向かって言いました。「この壁は、イスラエル はおろか他の誰の安全にも寄与しないでしょう。私たちの祈りは、現在建設中 のこの物理的な壁の撤去のためのものであり、私たちの土地を返還させるため のものであります」

「私たちの心には、愛が満ち溢れています、そして誰に対する憎悪もありませ ん。私たちは、信念と愛をもってこの壁の撤去を要求します。これは誤りであ り、私たちの土地と財産に対する攻撃であり、また、両民衆間の友好的な関係 に対する攻撃である、と断言します」

「あなたの信念と愛のなかに、すべての抑圧に対するあなたの政治的行動と抵 抗の指針が見つかるでしょう。政治にとって愛は未知の言葉だと、あなたは言 うかもしれません、しかし、私たちが経験するすべての悪にもかかわらず、愛 にはそれができるのです。私たちがそれをできるようにするのです!」

サバ総大司教が帰ったすぐ後に、私たちと一緒に抗議していたイスラエル人 が、オリーブの木を植えているときにイスラエル兵に逮捕されました。私たち には、イスラエル人の良い友人がいます。イスラエル兵がすべて悪いと言うわ けではありません、彼らはただ命令に従っている兵士にすぎないのですから。

そう、ここアボウドに、ベツレヘムに、エルサレムに、ラマラに、そしてガザ に、パレスチナ人のキリスト教徒がいます。私たちは地の塩なのです。

私の宗教は、無条件にすべての人を愛しすべての人を受け入れよと教えます。

ここにはユダヤ教徒の良き人たちや、イスラム教徒の良き人たちや、キリスト 教徒の良き人たちがいます。私たちは、共に生きることができるのです。ここ は、聖地なのです。

もし、アボウドの私たちがこのクリスマスに世界へメッセージを送ることがで きるなら、それは、ユダヤ教徒もキリスト教徒もイスラム教徒も、平和に共に 生きなければならないということなのです。

アリダは、占領下にあるパレスチナ・ヨルダン川西岸のアボウド村のローマ・ カトリック悲しみの聖母教会で司祭を務めている。

原文:Christmas in the open-air prison of Bethlehem URL: http://groups.yahoo.com/group/ThePilgrim/message/178