TUP BULLETIN

速報714号 ドナより 正しいことを除けば、すべての弁論は封じられて、明日のD-デイ

投稿日 2007年6月20日

DATE: 2007年6月21日(木) 午前7時39分

戦争をとめるとイラクの人たちと交わした約束、それを果たそうとしたのです


 オーストラリア人女性ドナ・マルハーンは、2003年春イラクでの「人間の 盾」に参加し、04年春には米軍包囲下のファルージャに入り、その帰路地元レ ジスタンスによる拘束を経験し、04年冬から05年春にかけてイラク・パレスチ ナを旅して、05年8月アメリカからシンディ・シーハンのキャンプ・ケーシー について報告してくれました。オーストラリアに帰国したドナは自国のテロを 見据え、05年12月に米国主導のイラク戦争・占領にオーストラリアが最も貢献 してきたアリス・スプリングス近郊のパイン・ギャップ軍事基地に向かい民間 査察を強行して逮捕・起訴されました。  そして、最高7年の刑期を科せられるかもしれない裁判がついに始まりまし た。連日行われてきた裁判は、3週間目に入り最終段階に近づいてきた6月12日 (火)には被告側アデルとドナの証言と、それに対する検察側の反対尋問が行 なわれました。後は明日の13日(水)の検察・被告双方の最終弁論で終わりそ うです。ドナからの12日の報告です。 (翻訳:福永克紀/TUP)


正しいことを除けば、すべての弁論は封じられて、明日のD-デイ ドナ・マルハーン 2007年6月12日

お友達の皆さんへ

今日(火曜日)は、いつもと同じく高い調子で始まりました――裁判所への行 進です。でも今日は特別待遇――マーティン・ルーサー・キングの録音演説を 聞きました、それから私たち4人が支援者たちが歌う(毎朝するように)歌声 の中を裁判所に入っていくのです。「オー・ウェン・ザ・セーインツ、ゴー・ マーチンニーン、オー・ウェン・ザ・セイーンツ・ゴー・マーチーンニー ン……」 これには私たちはとてもバツの悪い思いをするのですが、警察官に も警備員にも裁判所内の他の誰にもいつも笑みを与えてくれます。しかし、今 日はハードな1日となりました、感情的で、いらだたしくて――それももう終 わりました、でもまだ笑い顔です、そしてこれからもこの旅は続くのです。

アデルが証言台に立って証言することから始まりました。いつものように心か ら語り始めた彼女は、パイン・ギャップに侵入した動機を熱心に伝えようとす るにつれ感情を高ぶらせました。ニュルンベルク原則とそれによって求められ る市民の行動が、いかに彼女をパイン・ギャップに侵入し戦争機構をとめる行 動に駆り立てたかを証言したのです。

それから私が証言台に立ちました。私が4人の最後であることもあり、デンボ 検察官は我慢の限界にきたようでした。

たびたび異議を唱えました、私が幾度かイラクでの目撃証言を伝えようとした ときは特に。これに関しては彼はまったく過敏になっていました。どんな文書 も写真も証拠提出を許されなかった証人は私だけでした。何ひとつ。

言うまでもなく非常に追い詰められたように感じましたが、全力をつくして私 のパイン・ギャップ行動はイラク戦争での私自身の経験に対する直接の反応だ ということを示したのです。バグダッドの避難所にいる我が子のような子供た ちの写真を、それに赤ん坊のヌーラや、孤児院の他の子供たちの写真を掲げま した。ひとりひとりの名前を紹介し、この子らが私が守っている子供たちであ ると説明したのです。 [訳者注:「赤ん坊のヌーラ」はドナがバグダッドで出会った両手両足のない 孤児の赤ん坊。http://groups.yahoo.com/group/ThePilgrim/message/44 Baby Noura loves to dance ?(未訳)の他にもいくつかでドナが報告している]

その他にも私の行動に影響を与えたものを話しました、つまり私の信仰、非暴 力直接行動の伝統、真実を伝えるとイラクの人たちと交わした約束、そして何 かをなすことが私の責任であることを。皆さんが私たちの証言全部を読めるよ うに、清書謄本をのちほど送ることができると思います。こんなにもたくさん 戦争のことを法廷に持ち出せたものだとお友達の弁護士の一人が驚いていまし たが、ときには裁判にかけられ裁かれているのは私たちではなく、この戦争で あるとすら思えるようでした。そこに意義があったのです、そして私たちが法 定代理人なしで戦った収穫のひとつなのです。

証言が終わるとデンボ検察官が立ち上がり、私たちの弁論全体を陪審員に証拠 として提出するかどうかの議論を持ち出したのです。ブライアンのすばらしい 実演に加えてアデルと私自身の陳述があったにも関わらず、予想通り判事はデ ンボ検察官の主張を採用しました。

つまり彼女は、陪審員が評決を考えるときには正当性を主張する私たちの弁論 をいっさい考慮することを許さないでしょう。

私たちへの反対尋問が終わってしまうとそれまででした。判事は、私たちが申 請した4人の鑑定人を認めようとはしませんでした。もうすべてが終わりまし た、後は明日の最終弁論だけです。判事は金曜日までに裁判を終わらせたいの が分かりました、今日の判事の決定でそうなることは間違いないでしょう。

反対尋問では、誰に対してもデンボ検察官の堪忍袋の緒が切れました。私たち の歯に衣を着せぬ返答と、あの土地が連邦所有のものだとは認めなかったこと に彼は明らかに狼狽していました。私たちは、私たちにそこに行く許可を与え てくれた伝統的土地所有者に属する土地だと主張したのです。

デンボ検察官は冷静さを失い、ある段階では泣きくれたジムについて下品でい やみな発言をして、法廷中を縮み上がらせました。このとき私は、陪審員の何 人かが私たち側に評決するかもしれないと思いました。

それで……、明日の最初は、デンボ検察官の最終弁論で、そのあと私たちの最 終弁論です。それから私が、私たちは公正な裁判を受けられなかったことを根 拠に裁判の無期限延期を申請します。これは(もし成功すれば)裁判は手の届 かぬところに押しやられ、それでおしまいになります。この「申請」は認めら れないでしょうが、申請することが大事なのです(特に私たちが上訴を望 むなら)。

つまり、希望をひとつ残しておくのです。

陪審員。

私たちが言わなければならなかったことを聞いてきた12人の人間。

今や彼らにかかっています。彼らが明日の午前中に評決の協議を始めるらし く、午後か夜かいつごろ表決に達するか分かりません。

どうか彼らが自らの良心に従うよう祈ってください。祈りをなさらないかた も、どうか幸運を願ってください!

しかしそうは言っても、私たちの大きな目標は無罪評決を勝ち取ることではあ りません、私たちの目標はパイン・ギャップの真実を暴露し、その機能に注目 を浴びせ、イラク戦争での役割を論ずることなのです。

私たちの目標は「勝つ」ことではありません、私たちの目標は人間であり続け ることなのです。

どうか私たちのブログで他の報告もお読みください。 www.pinegapontrial.blogspot.com http://www.abc.net.au/news/newsitems/200706/s1949068.htm

今日のメディア・リリースは下に。

結果が分かり次第ニュースを送ります!!

愛をこめて ドナより

[以下、ドナたちのメディア・リリース文]

パイン・ギャップ裁判――法廷情報アップデート 2007年6月12日 公正な裁判を受ける権利、判事が却下

パイン・ギャップの4人は、オーストラリア史上顕著な裁判の11日目に弁論全 体を剥ぎ取られてしまった。サリー・トーマス判事は、彼らの弁論は陪審員に 証拠として認めるわけにはいかないという連邦側の提議に同意した。

2005年12月9日、ケアンズのブライアン・ロー、ブリズベンのジム・ダウリン グとアデル・ゴールディー、シドニーのドナ・マルハーンは、市民査察を実行 するためパイン・ギャップの心臓部に侵入した。司法長官フィリップ・ラドッ クがかつて適用されたこともない防衛(特別事業)法1952年に基づきこのグ ループを起訴した。この法では最長7年の投獄を科すことができる。

被告たちは、自分たちの行動の合法性を主張するために刑法典10条の3、4、お よび5(必然性、正当防衛・他者の防衛)を論拠に使おうと計画していた。

マルハーン氏は今朝の証言で、いかに彼女の行動が「他者の防衛」の産物かを 説明した。緊張した声と涙の中、「パイン・ギャップ行動を準備していると き、どこか遠くの人たちのような抽象的概念はまったくありませんでした。彼 らは現に私が知っている人たちなのです」と彼女は述べた。

「パイン・ギャップへの侵入を準備するとき、それは私がくい止めようとする 犯罪の大きさに比べたら私にできる最低限のことだと思いました。私は、私の 行動は妥当でふさわしいものだったと信じます」

「それまで私がやってきたすべてのことは、戦争の進行を中断させることはあ りませんでした、しかしパイン・ギャップに行ったとき中断したのです。戦争 をとめるために何かをするとイラクの人々に約束したことを、私は果たそうと したのです」

今朝アデル氏も証言し、1999年に東チモール人民の爆撃に向かう途中のB52戦 略爆撃機に損傷を与えたシーズ・オブ・ホープ・プラウシェアズの話をした。 彼らは陪審員により無罪とされた。また彼女は、イラク民間死亡者数は当時控 えめに見積もっても10万人だったことをランセット報告を引用して述べた。そ の後報告は情報改定を重ね、現在ではイラク民間死亡者数は60万人以上と推計 されている。

「私はニュルンベルク原則のことを聞きました、そして私は世界の市民の一員 としての義務だと知ったのです――私はそれを止めるために行動しなくてはな らないと」とゴールディー氏は述べた。彼女はニュルンベルク憲章を証拠提出 しようとしたが、許可されなかった。

その後、連邦検察官ヒルトン・デンボ勅撰弁護士が、パイン・ギャップの4人 の弁論は証拠採用されるべきではないと提議した。法廷代理人なしの被告たち の雄弁な反論にも関わらず、サリー・トーマス判事は被告側に不利な決定を下 し、「適切に説示された陪審員は、誰も国政を考慮するよう要請されることは ない」と述べた。

これで事実上、いまだ試されたこともない冷戦時代の法で起訴され代理人も付 かない非暴力平和活動家たちは、自分たちを代弁した陳述さえも無くなったこ とになった。裁判は明日午前10時(6月13日)に再開される。パイン・ギャッ プの4人が申請した鑑定人は、検察側の関連性を根拠とする異議が認められる と予想され、明日は早いうちに検察側の最終弁論に進むと思われる。

パイン・ギャップの4人の支援者たちは、再び午前9時40分に「祝賀と連帯」の パレードをトッド・ストリート・モールからシェパード通りを通って裁判所ま で行う予定である。

イベントとインタビュー 6月13日市民集会――リチャード・タンターと共に タンター教授は、RMIT大学ノーチラス研究所のフェローである。彼は、オース トラリア、日本、インドネシアで諜報と軍事問題関連書籍を広く出版してき た。本日パイン・ギャップの本質に関する鑑定人となるべくアリス・スプリン グスに到着したが、法廷に鑑定人として出廷することは認められなかった。

集会詳細――6月13日(水)午後7時 フリン・メモリアル・チャーチ・ホール  アリス・スプリングスのトッド・モール。タンター教授はメディアの取材に も応じる用意がある。

6月13日午前9時40分 トッド・ストリート・モールから裁判所まで、支援者の 「祝賀と連帯」のパレード

6月13日午前9時50分 被告たちとの写真撮影 アリス・スプリングスのハート リー通りの裁判所前階段 (すべてのイベントの写真はご要望によりお渡しできる)

被告たちとのインタビューは余裕ある通告ならば設定できる。被告人の写真撮 影、ならびに(個人およびグループの)写真および査察前のデモの動画なども 可能。

原文:[The Pilgrim] D-day tomorrow with no defence except what is right URL: http://groups.yahoo.com/group/ThePilgrim/message/216

*問い合わせが膨大な数になっています。  ご返事が書けない場合がありますので、ご容赦ください。