TUP BULLETIN

速報877号 エジプト民衆蜂起ウォッチング @ ロンドン (その 3 )

投稿日 2011年2月2日

** ひどい暴力が横行しています。

** どうすればいいんだろう。

** エジプト大使館にメールを書くとか、何かできることはない?





◎メガリークの衝撃:ロンドンで聞くエジプトの声 その3

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刻々と変化するエジプト情勢から目が離せず、家にいる限りはテレビをつけっぱなしにしウォッチングしています。それらの一部をタイプして自分のブログ

http://newsfromsw19.seesaa.net/

に掲載し、TUPのMLにも流したところ、メンバーからTUP速報の読者とも共有しようとの提案があった。そんなわけで「エジプト民衆蜂起ウォッチング@ロンドン」第三弾を速報します。



第一弾、第二弾(速報875号・876号)はTUP速報のホームページでお読み下さい。

https://www.tup-bulletin.org/modules/contents/index.php?content_id=907

https://www.tup-bulletin.org/modules/contents/index.php?content_id=908



藤澤みどり/TUP

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<第6信>

2011年02月01日

革命なう@エジプト第8日-2

現地時間夕方5時過ぎごろからデモ隊が広場を出て行進を開始した。カイロの街はもう夕闇に包まれている。広場に集まっていたのは20万人ほど(それ以上は入れなかった)。入りきれなかった人が道路に、橋の上に、町中にあふれているとレポーターが伝えた。

軍は武力を用いないと約束しているが、大統領の宮殿などでデモ隊が暴力的な行為に出る可能性もないとは言えず、不測の事態も心配されている。暴力行為が発生した場合、軍はそれを止めるために場合によっては武力を使用せざるを得ないと目されてい
るからだ。

人々は口々に「世界が見ている」と言い交わし、暴力的な衝突が起きないよう呼びかけあっているという。

もうかれこれ2時間ぐらい前か、ヨルダンのキング・アブダラーが自国の国民の街頭プロテストの要求を入れて、政治体制の変革を約束した。(後述:プロテスターは首相の退陣と貧困の解決等を要求しており、王の退位を求めるものではなかった>王の命で内閣が総辞職し、新首相が任命されたが、この首相人事には市民は納得していないもよう)

アメリカのシニア政治家としては初めて、ジョン・ケリー上院議員が「ムバラクは政権を去るべきだ」と公に意見した。ジョン・ケリーはブッシュの二期目大統領選を争った(そして、おそらくは投票マシンの不正で負けた)民主党の大統領候補。

ヴェトナム戦争のときにキャプテンとして攻撃艇に乗り込んでいたヴェトナム帰還兵であり、最初の「冬の兵士」の証言をアメリカ議会に持ち込んだ人間でもある。かれが外交委員会でおこなったスピーチは、当時の反戦スピーチの中でも出色のものとして有名。(後述>とは言え、かれを平和主義者だと誤解してはいけない。欧米には日本の人が一般的に考えるような意味での平和主義者はほとんどいない。戦争と平和をめぐる議論は、ほとんどの場合、総論ではなく各論で交換される)

15.50 GMT(続く)

要件をすませてから駅前のウォーターストーンに寄る。ウィキリークス本はまだ平台に載っていない。「何かお探しですか?」と店員が声をかけてくれたので、しばらくためらってあとで「ウィキリークスについての本が今日出てるはずなんですが。ガーディアンから」というと調べてくれた。

「ああ、今月ウィキリークスに関する本が2冊出ますね。1冊は今日でもう1冊は半ば。今日の分はもう届いているはずなんですが、まだ箱の中かなあ」などと言っていたら、若い店員が「これ」と言って持ってきた。振り返ると、これから平台に載せようとしている『ウィキリークス ジュリアン・アサンジの機密戦争内幕』が20冊以上、床に積まれていた。

「3 for 2(3冊買うと1番安いものが無料)」のスティッカーがついていたのでもう2冊何か買おうと思ったけど、読む時間がなさそうなので1冊だけ買ってきた。イギリスは再販制度(日本独特の書籍の流通方法)ではないので、出たばかりの新刊でも割引になることが多い。定価で買うとなんだか損したような気持ちになる。アマゾンがウィキリークスを追い出して以来、アマゾンボイコットしているので、前より本屋にいく回数が増えた。

今夜、もうしばらくあとで、ムバラクがス国営放送でピーチをする予定だとSKYニュースがアルアラビアの情報として報じた。

18.20 GMT

現時時間はそろそろ夜9時。タフリール広場を埋め尽くす人、人、人。

アルジャジーラではレポーターもスタジオのキャスターもみな興奮を隠せない様子。「すごい、光景です。すごい音です。これは間違いなくアラブ世界の現代史に残る光景でしょう」

アルジャジーラはエジプト政府によって取材を禁じられているので、広場に集まる人々のあいだに入って声を集めることができない。そのため、イングリッシュ・アルジャジーラでは広場を見下ろす高みのような場所にカメラを据え付け、その映像を流しっぱなしにしている。

群衆は次々にチャントを繰り返し、その割れるような声が広場の上空に響き渡る。「これはデモンストレーションというより、ずっと友好的で、お祭りのようで、まるでロックコンサートみたいです」

19.00 GMT

スタジオのキャスターが、今日、カイロで路上に出た人は百万人を越え、その他エジプト各地でさらに百万に及ぶ人がデモンストレーションに参加したと言っている。

まもなくムバラクが「一つの解決策」をテレビで発表するとのこと。(続く)

9.00 GMTからムバラクのテレビスピーチがあった。

まったく子どもだましにもほどがある。今日の今日、百万のオーダーの人々が平和的に行進したのに、いったいだれに向かって話しているのか。

わたしは見たし、あなたも見たでしょ。世界中が見たでしょ?

それなのに、この男は、デモは暴力に変わり、政府ビルに火がつけられたって、いつの話を持ちだしてるんだよーーー。この混沌が平穏と安定に変わるまでわたしは現職に留まって尽力するんだってさ~。

警官を引っ込めて解き放ったお手盛りの泥棒や放火犯も、市民の自警団と軍によって抑え込まれている。条件だけ並べればもっとアナーキーになっていてもおかしくないのに、カイロの街は驚くほど平常だとレポーターは言う。どこに混沌があるんだ。

約束したのは次の大統領選に出ないということだけで、権力の移行が平和的に終了するまでわたしが力になるんだってさ~。(大統領戦に立候補しない件については4日前のスピーチで約束していたような気がしてたんだけど勘違いだったみたいだ)

そんでもって、歴史が審判するだろうだってさ。イラク戦争について非難されたブレアが同じことを言っていた。そして、おまけに、わたしはエジプトに骨を埋めるだとさ~。

スピーチが終わったとたん、タフリール広場の全体像を映すアルジャジーラの映像が大きくうねり、大群衆が吠えた。

広場の人たちを地上から映したBBCのレポートでは、広場の壁に白いシーツが広げられ、それをスクリーンにしてテレビスピーチを見ていた人たちが、スピーチが終わったとたんに靴を脱いで振り回していた。

反対勢力(opposition、「野党」ではない)はムバラクが大統領の座を降りるまで交渉には応じないとしている。プロテストはまだ続くが、次の一手がむずかしいだろうなあ。

テレビを見ていただけなのにひどく疲れた、

朝日新聞衛星版。昨日(1月31日)のカイロ発の記事はとてもよかったのに、今日(2月1日)になったら記事の出所がカイロとワシントンの二方向になり、全体がワシントンの見解にひっぱられちゃって、なんだかなあの展開になっている。「ワシントン」も、「ワシントン」が世界で最高の場所だと信じる人たちも、「百万人」と一言で表される人ひとりひとりに名前と顔があることを忘れているようだ。

「ワシントン」の思惑がどうであろうと、そんなもので動くのはごく少数の人間だけだ。そのごく少数の人間が拷問や収監で人々を縛り、意見を奪ってきた。その人たちが声を取り返したいま、ワシントンの思惑を聞く耳は、ワシントンの前にまずその人たちの声を聞かなければならないのではないか。

カイロの記者は自分が目の前で取材している人の存在そのものを信じられないわけでもあるまいに、opposition(反対勢力、反政府勢力)を「野党(Opposition)」と訳したとたんに、もう頭の中には「野党=ムスリム同胞団」という「ワシントンの定義」に染められちゃうみたいだ。ワシントンの思惑がなんであれ、目の前にいる人を色眼鏡を外して取材するべきではないか。

ストレス解消に真夜中のキッチンでタコカレーを作った。

オバマのスピーチ。政治体制の移行は平和的で、意味のあるものでなければならず、また、いますぐ始めなければならない。子分を諭すようなスピーチだなあ。

昨日のインディペンデントのロバート・フィスクのカイロ取材記事がとても良かったので部分的に訳そうかと思っていたけどなんだか疲れた。もう寝る。

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<第7信>

2011年02月02日13.53GMT(日本時間02月02日22:53)

革命なう@エジプト第9日

9.00 GMT (現地時間:11.00)

解放広場(タフリール広場)で夜を明かした人々が今日のデモンストレーションの準備を始めている。かなり冷え込んだようだ。街のあちこちから広場を目指す多数の人々の流れを、数カ所からBBC24ニュースが伝える。

軍からはもう抵抗運動はやめて帰宅するようにとのウォーニングが出ている。国営テレビで発表があり、また、今朝から回復したテキストメッセージ(携帯電話のメール)を使って同じメッセージがまかれているようだ。インターネットも今朝から回復したようだ。

様子が違うのはムバラク支持者が街頭行動を始めたことだ。ムバラクが大統領職に留まると知って、ムバラクが国を出て行かないと知って、士気の上がった支持者が外に出てきた。昨日までのお手盛りのものとは様子が違う。とても危険な感じがする。

解放広場に入ろうとするムバラク支持者と、反政府勢力のあいだで小競り合いがあり、いまのところ、軍隊がムバラク支持者が広場に入るのを止めているようだ。

ムバラク同様に30年以上にわたって大統領職にあったイエメンのサレハが、街頭プロテストが拡大することをおそれ、ムバラクと同様のオファーを発表した。2013年に予定されている次の大統領選には出馬せず、また、息子も出馬しない。ここのところがムバラクとは違う。ムバラクは息子の件については昨日のスピーチではふれなかった。

ヨルダンでは国王が指名した新しい首相にプロテスターは満足せず、さらなる抵抗運動が予定されている。しかし、もともとこちらは数千人と規模が小さく、また国王の地位については最初から問題になっていない。

11.00 GMT (続く)

事態はどんどん悪くなっている。

タフリール広場に入ろうとするムバラク支持派のデモを軍は最初は止めていたが、どこかの時点でGOになり、広場内に入るのを止めるどころか、むしろエンカレッジしている(BBC ジョン・シンプソン)という。そして、対決する反政府勢力とムバラク支持派のあいだで投石などが始まっている。

ムバラク支持派は明らかにジャーナリストを閉め出す意図を持っているとシンプソンが言う。午前中は、ムバラク支持は外国人記者にあまりフレンドリーではないです、などとレポートしていた記者も、いまでは意図的な排除が行われているとレポートしている。

ジョン・シンプソンは、ムバラク支持派の中に私服の警官が混じっているとレポートする。平服を着た警官が丸腰の市民を傷めつけたり、それを撮影する外国人レポーターに暴力をふるったりしている。そして、これは天安門のときと同じ戦術だ、と。

また、別のBBC記者(ジェレミー・ボーエンとジョン・レイン)は、ムバラク支持者の中に金で雇われたごろつきがいるという証言を得たと言っている。

ケヴィン・コノリーもいま平服の警官が混じっているとレポートしている。ジェレミーは、これは犯罪行為だと断言した。

13.53GMT (現地時間:15.53)