TUP BULLETIN

速報297号 リバーベンドの日記(4月26日)から 04年4月30日

投稿日 2004年4月30日

DATE: 2004年4月30日(金) 午後11時38分

戦火の中のバグダッド、停電の合間をぬって書きつがれる24才の 女性の日記「リバーベンド・ブログ」。イラクのふつうの人の暮らし、 女性としての思い・・・といっても、家宅捜索、爆撃、爆発、誘拐、 検問が日常、女性は外を出ることもできず、職はなくガソリンの行列 と水汲みにあけくれる毎日。‘イラクのアンネ’として世界中で読ま れています。すぐ傍らに、リバーベンドの笑い、怒り、涙、ため息が 感じられるようなこの日記、ぜひ読んでください。 http://www.geocities.jp/riverbendblog/

4月26日の日記をお届けします。リバーもイラクの人々も心身とも に疲れ切っています。遠いところで決められている「国旗」や「国歌」。 重苦しい毎日を生きる人々のユーモアは健在です。

(池田真里)


2004年4月26日月曜日

チャラビ、旗、国歌・・・

過労にはふたつある。ひとつは、肉体の過労。たとえばバケツに水を 入れては階段を上ったり降りたりして屋上のタンクをいっぱいにする。 これを40回繰り返す――4回めか5回めで、筋肉が皮膚の下でぶるぶ る震えているのがわかる。バケツをおくと、腕は頼りなく重さがないみ たい――なくなってしまったような感じだ。もうひとつは、こころの過 労・・・それは、このバケツ運びを頭の中でやる、40杯分の水が、次 々と空けられていく過程を思いえがくとき、また心配や怒りや恐怖がど っとあふれて叩きのめされそうなとき。

まわりの人はみんな、このこころの過労状態だと思う。それは目の中 に見てとれ、緊張した声に聞きわけることができる。激しい感情の重荷 でいまにもぶっちぎれそうだ。みんな、まわりを用心深く見張りながら、 なんとか平常半の生活を送ることに神経を集中しようとしている。つな わたり。南部の状況は悪化するばかりで、毎日何人もの新たな死者の報 を聞く。ファルージャでは、再び戦闘が開始された。停戦はいったいど うなったんだろう。いま何が起こっているのかだってわからない。深い 疲労感がわたしたちを被っている。

チャラビが(うまくいけば)ほされかかっているという、記事を読ん でいた。チャラビが役立たずだという結論に達するのに、ワシントンは こんな長い時間が必要だったとは、信じられない話だ。チャラビが新時 代のリーダーとして歓迎されるだろうって思ってた人、いる? みんな、 この1、2週間、ファルージャ攻撃の間、チャラビが何をするか何を言 うかと注意深く見ていた。重大局面だった・・・みんな、操り人形評議 会のなんらかの動きを期待していた――ともかくなんらかの動きを。非 難の言葉・・・殺されていっているまたホームレスに捨ておかれている イラクの人々との連帯の表明を。だが、あるのは奇妙な沈黙だった。評 議会のメンバーひとりが、辞任を振りかざして脅した。しかしそれも憤 激したイラクの人々が、この事態をなんとかしないと評議会メンバーを 叩きのめしてやるという姿勢を見せてのちのことだった・・

チャラビはごく最近になって自分の安全な場所からあえて出てきて( いつものけばいネクタイで)、選挙の可能性を探るためにコフィ(国連 事務総長)から送り込まれた国連特使ブラヒミは、全面的に反シーア派 で偏向していると叫んでいる。それで、チャラビはいまや自分がイラク 中のシーア派の擁護者であると思っているらしい。この構図の愉快な点 は、誰もチャラビに、シーア派の間ではおまえはジョークになってるよ と教えてやってないらしいことだ。イラク人(スンニ派とシーア派)は こんなふうにからかいあっている。「じゃ、‘シーア派、時の人’、チ ャラビってわけだ、なるほど」。すると、言われたほうは憤然として、 そんなんじゃない、チャラビはたとえばイラクの・・・ブリトニー・ スピアーズだ。

テレビで演説しているチャラビをじっと見る。そして、彼がイラク社 会のなんらかの党派を代表していると考える人がどこかにいるなんてこ とがあるんだと思ってつくづくいやになる。チャラビがイラクの知識人 と非宗教主義者の旗手だと思われているなんて信じられない。彼はブッ シュ株式会社が、民主主義推進のためといって、兵士や戦車と一緒にイ ラクに送り込んだおもしろくもないジョークだ――17、8の男の子が 卒業記念ダンスパーティのためにダンスを練習するときの、プラスチッ ク人形のお相手みたい。

今日はまたこんなニュースもある。操り人形たちが国旗を変えるんだ って。前のとはちっとも似ていなくて、初めはすごく不愉快だった。し かし、関係ないんだと気がついた。操り人形評議会には法的根拠はなく、 よってそこで制定した憲法は無効で、そこで決定した旗はそこだけのも のだ。その旗は、評議会がイラクを代表している程度に、イラクを代表 している、その程度のものだ――内側の縫い目にそって“メイド・イン・ アメリカ"と縫いとりがしてあるんだろう。あれは操り人形評議会の旗 で、見るたび、その薄青い地色にチャラビたちの顔を見るわけだ。

アメリカにいるメール友だちで同業イラク人のシステム・アナリスト は、こんなことを言ってきた。彼女のメール中の傑作。「イラク人のみ なさんは、まったく法的根拠のないイラク操り人形評議会の手によって、 輝かしい色合いの国家的布きれが制定されたことの著しい重要性にきっ とひじょうに興奮していることと思います。もちろん新国旗のデザイン は、いつも趣味のよい着こなしの自称対テロ専門家イラク総督、ポール・ ブレマーが承認したもので、彼は、手縫いの戦闘用ブーツ、何千ドルの 特注スーツ、シルクのデザイナー・タイを着用していることで有名です。 次回の大ニュースは、国旗と国旗が代表する帝国に対して斉唱される ‘忠誠の誓い’となります。忠誠の誓いのアメリカ人作者の名前はまだ 発表されていません。」

近々制定される国歌の歌い手として、イラク版“レディ・ママレード" の豪華メンバー、チャラビ、アラウィ、ハキム、タラバニを提案させて ください。リバーによって掲示 午後11時37分

(翻訳:TUP/リバーベンド・プロジェクト、池田真里)