TUP BULLETIN

速報580号 マーク・エンゲラー 「ブッシュのお粗末なビジネス帝国」  060203

投稿日 2006年2月2日

FROM: hagitani ryo
DATE: 2006年2月2日(木) 午後11時11分

☆なぜか報道されないアメリカ製品ボイコット★

かつて南アフリカ共和国のアパルトヘイト体制が崩壊したのは、差別・抑圧された黒人の抵抗によるのはもちろん、国際世論にみなぎった反感と世界規模の同国産品ボイコットが大きな圧力になったためでもありました。本稿、マーク・エングラーの論文に、世界に嫌米感情が広がり、アメリカ製品・サービスに対するボイコットが静かな形で進行しているようすがうかがえます。トム・ディスパッチ編集者、トム・エンゲルハートも「あまりにも見過ごされている」と慨嘆していますが、この動きがメディアで報道されないのは、どうしてなのでしょうか? 井上

[本稿は、先日お送りしたものと同一ですが、先日は一部が文字化けしていましたので、再配信いたします。ご迷惑をおか
けし、申し訳ございません。TUP]

凡例: (原注)[訳注]〈ルビ〉《リンク》

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[マーク・エングラーの個人メールマガジン挨拶文]

友人の皆さん

ご覧のように、本稿のためにトム・エンゲルハートが序文を書いてくれましたので、私のおしゃべりは最小限にとどめておきましょう。本稿はトム・ディスパッチに掲載されています。同サイト、下記URLのもの《*》は、関連情報にリンクが張られていますし、読みやすくレイアウトされています。

http://www.tomdispatch.com/index.mhtml?pid=33201

あなたがトム・ディスパッチをご存知でないなら、いますぐチェックなさるようにお勧めします。トム・エンゲルハートは、戦争に的を絞ったご自身の評論をはじめ、マイク・デーヴィス、レベッカ・ソルニット、チャルマーズ・ジョンソン、その他多くの書き手による洞察力にあふれた論考を編集・掲載しています。これはすばらしい情報源であり、私としても、このサイトにいささかなりとも貢献できたことを誇りに思っています。

では、ご機嫌よろしく。ご感想など、お待ちしています。マーク

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トムグラム:

マーク・エングラー、戦争がビジネスにおよぼす災いを語る

トム・ディスパッチ、2005年11月3日掲載

まえがき

――トム・エンゲルハート

ブッシュ政権は、縁故企業を引き連れ、集団的な精神構造となっている根っからの盗人根性をもって、惑星を身ぐるみはがす勢いで世界に殴りこみをかけている。(宇宙空間の軍事覇権もそうだが)同政権の地球――それにエネルギー――支配に向けた計画は永久の時を視野に入れたものだが、ビジネスの目論見という点では、明日、あさってといった目先のことに限られているようだ。大統領とその仲間たちは、当面のあいだ、経済的には身から出る錆を心配することもなく、クロフォード[テキサス州のブッシュ家牧場の所在地]に引き返して、マイタイ[ラム酒、レモン、パイナップルジュースのカクテル]と薮払いの日びを楽しみかねない風情だった。まあ、今は、そんなこともしておれないだろうが。

マーク・エングラーは、あまりにも見過ごされているテーマ――この政権は、ビジネスにとって、(少なくとも冷戦後のブッシュ父およびビル・クリントン両元大統領の政権に比較して)いかにお粗末であるか、そのものずばりの分野――を取り上げている。彼はまた、実業界の主だった部門がイラクにおけるこの政権の戦争やこれに連動した政策に楯突〈たてつ〉くようになるかどうか、という問題をも追及している。おおむね忘れられてしまったが、かつて――ベトナム戦争時代に――同じことが起こっている。トム

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マイクロソフトやミッキー・マウスの世界市場を危うくする

ブッシュのお粗末なビジネス帝国

――マーク・エングラー

ブッシュ政権は、並外れて企業寄りのホワイトハウスを築いたという評判を取っている。ディック・チェイニーが主宰する陰の「エネルギー特別委員会」や大型減税があるし、それに、企業ロビイストたちが業界のために我田引水的な法規を起草しているありさまを加えれば、これはまことに説得力ある主張に仕上がる。

だが、この世評に対する反論を一考してみるだけの理由がいろいろある――ジョージ・ブッシュとディック・チェイニーとは、上等の資本家どころではまったくないのかもしれない。

ジョージ・W・ブッシュのビジネスマンとしては落第だった前歴はよく知られている。ディック・チェイニー――保守派の目で見て、優秀な元CEO[最高経営責任者]、進歩派の目で見て、ハリバートンのサクラ――もまた怪しげな過去の持ち主だ。確かに、彼は、ハリバートンの最高幹部だった4年半の間に同社の外形を膨らませたし、彼の最大の業績は、ライバル企業、ドレッサー・インダストリーズに対する1998年の77億ドル買収だったが、あいにく、この会社は仰天するほどのアスベスト関連負債のせいで苦境に陥っていたことが判明した。チェイニーによる経営が後に祟って、ハリバートンの複数の事業部門が破産保護を申請し、同社の株価は急落した。2004年8月、ローリング・ストーンズ誌は次のように報じた《*》――

http://www.rollingstone.com/politics/story/_/id/6450422?rnd=1126254738277&has-player=true

「ハリバートン株には戦争特需分の上乗せがあるにもかかわらず、チェイニーの副大統領就任の直前に10万ドルを同社に注ぎこんだ投資家の手には、今では6万ドルに満たない額の金しか残っていないだろう」

多くのアナリストたちが、ハリバートンに数十億ドルもの負担を強いたドレッサー社のアスベスト問題は予見できたはずだとして、[ハリバートンが]落ち目になった責任を副大統領に帰している《1》。それほど辛辣でない批評家でさえも、チェイニーの企業指揮者としての成功を疑問視している。例えば、ヴィクトリー・キャピタル・マネージメントのエネルギー分野担当アナリスト、ジェイソン・E・プットマンは、ハリバートンの最高首脳としての「チェイニーは、せいぜい大目に見て、けっきょく月並みな仕事をしたにすぎないのだろう」と論じる《2》。ニューズウィークのウォール街情報編集者、アラン・スローンにいたってはもっと手厳しく、チェイニーは「絶好調期を帳消しにしたCEO」だったと評した《3》。

1 http://slate.msn.com/id/2089811/

2 http://www.businessweek.com/bwdaily/dnflash/oct2004/nf20041026_2453_db038.htm

3 http://www.washingtonpost.com/wp-dyn/articles/A64535-2005Jan10.html

イラクにまつわっては、ハリバートン、ベクテル、その他一握りの政府贔屓〈ひいき〉筋の企業に流れる予算のバラ撒きについて、私たちは多くのことを耳にしている。それにひきかえ、政権による「テロに対する戦争」がビジネスにとって重大な失政であった可能性を検討することは滅多にない。だが、ブッシュとチェイニーのパッとしない企業人としての記録を念頭に置けば、この政権の対外政策はまったく違った角度からハッキリ見えてくる。ホワイトハウスは米国企業の利得を図りながら海外十字軍を立案していると信じるとしても、それがごく順調に運んでいると推測するだけの理由はない。

ビジネス報道は、現政権がクリントン時代の企業活動グローバル化を新たな高揚期に押し上げるだろうと一度は期待していたはずの企業経営者たちが、今になって、ブッシュが引き起こした国際秩序がもたらす新たな命運を恐れていると伝え、そういう記事は日ごとに増えている。国内的には減税と規制緩和とが目に見える形の儲けものであってきたが、その他の面では、多くの米系多国籍企業が困った状況に直面している。ホワイトハウスにいる落第CEOたちは、せいぜいアメリカ経済界の限られた一部を利するのみで、その埒外にいる企業を民衆の恨みや経済不安に満ちた世界に追いこむ地球規模の政策を追求してきた。

ブッシュ、チェイニー、コンディ[ライス現・国務長官]やネオコン勢力による世界経済に対する介入のこととなれば、「よく言って、平均的な仕事」というのが寛大な評価であり、「絶好調期を帳消しにした」というのがもっと現実に近い言い方だろう。イラクで始めた戦争に対処する大統領のやり方に反対する多数派――あるいは政権の対外政策を問い直しはじめた保守評論家たちの間に高まりつつある合唱――にこれから加わるはずの実業家たちは、まず最終決算書を確かめて、ご時勢に乗る理由の長いリストをほどなく手にすることになるのかもしれない。

ケンタッキー・フライド・チキンの戦争ではないのに

近年、ケンタッキー・フライド・チキンはイスラム教世界で何回か災難に遭遇している。2005年9月初めには、パキスタン、カラチの同社系列のフライド・チキン店内で爆弾が破裂した《1》。ケンタッキー・フライド・チキン・チェーンの店舗が標的になったのは、これが最初ではない。5月には、米国によるペルベズ・ムシャラフ大統領に対する支援やグアンタナモ湾[1]における人権侵害のニュースに怒りを募らせたシーア派の群衆が、別のケンタッキー・フライド・チキン店(星条旗のパターンにかぶせてカーネル・サンダース[2]の似顔絵をあしらった外装)を焼き討ちしている《2》。2001年、米国によるアフガニスタン攻撃の直後、別の2店舗が破壊されている。

[1. キューバ領内の米海軍基地:民間人を含むアルカイダやタリバンのメンバーとみられる容疑者が収容されている]

[2. 日本でもお馴染みのケンタッキー・フライド・チキン創業者で同社のブランド・キャラクター]

1 http://www.cnn.com/2005/WORLD/asiapcf/09/08/pakistan.blast/

2 http://www.guardian.co.uk/pakistan/Story/0,2763,1496267,00.html

ケンタッキー・フライド・チキンに降りかかった災難は、ファーストフード店の一系列に留まらず――マクドナルドも、パキスタンやインドネシアで襲われているように――やすやすと拡大するし、ファーストフッド店の焼き討ちは、変わりつつあるアメリカの対外政策がもたらしている新しいビジネス環境を過激な形で象徴しているにすぎない。クリントンの外交姿勢が、ミッキー・マウスやマイクロソフト、それにポップコーン・チキン[ケンタッキー・フライド・チキンのヒット商品]にとって安全な世界を用意するための不断の努力であると言えていたとすると、ブッシュ=チェイニー一派の外交政策は、ビジネスにとってまったく危険な代物であると言わねばならない。

クリントン政権は、協調的で「ルールにもとづいた」国際経済――批判派に「企業のグローバル化」として知られる多国参加型の秩序――構築の提唱者の役回りを堅実に任じていた。ブッシュ政権は、「自由貿易」といったような事柄に関心があると主張しながら、まったく相反するような枠組みの政策を推進してきた。同政権は、侵略的かつ一国行動主義的にも、「帝国のグローバル化」の新機軸を打ち出し、そのせいで、グローバル化反対運動の批判の矢面に立つ世界貿易機関(WTO)といった多国間制度を危うくするほどである。現政権は、そのような機関を通して行動するどころか、通商や開発をめぐる交渉において常に非協力的な態度を示してきた。諸外国に対する援助を自国の軍事的な特権に直に結びつけることに最大限の関心を払ってきた。戦争に飽きあきした「古いヨーロッパ」に対しては、グローバル化政策推進における主役に準ずる同盟者としてのその役割を否定しようとしてきた。その過程で、好況に沸いた1990年代には、それら多国籍企業に大いに貢献し、これまでの30年間、成長を促進してきた国際秩序の解体に踏み切ったのである。

つまり――ブッシュは石油業界の社長であっても、彼はディズニーを代表する社長ではないし、コカコーラの社長でもない。チェイニーがハリバートンの立て直しに精を出しているとしても、彼が一肌脱いで主導した戦争は、スターバックスのためには少しもいい結果を出していない。

墜ちたブランド、アメリカ

米国による地球規模の覇権をめざす大胆な賭けが、短期的にしろ、長期的にしろ、有利であるかどうかは別にして、このやり方がビジネスに強いる代償はすでに明確になりはじめている。いの一番に言っておかねばならないが、世界に蔓延する反米主義の新しい波なるものは、南アジアのケンタッキー・フライド・チキン爆破や中東に広くはびこる敵意どころか、もっとはるかに広範に拡大している。アジアでは、米国に対する「激しい、高まる敵意」が地域におけるディズニー社の事業拡大計画の実行を難しくしているとサウス・チャイナ・モーニング・ポストが報じた。おまけに、従来の同盟諸国にあってさえも、ブッシュの帝国的な対外政策が消費者の反発を煽っている。

2004年12月、インタープレス・サービスのジム・ローブが、シアトルのGMI(グローバル・マーケット・インサイト)社によって公表された、各国の消費者8000人を対象にした調査について報告している《*》。

http://www.antiwar.com/lobe/?articleid=4235

この調査は、カナダ、中国、フランス、ドイツ、日本、ロシア、英国の「消費者全体の3分の1」が、米国の対外政策、特に「対テロ戦争」およびイラク占領が米国の印象を最も強く決めていると答えたと伝えている……「万国の消費者の目に、かつてのアメリカの対外政策はプラス要因として見られていたが、残念なことに、現在のそれは重大なマイナス要因として映っている」とGMI社のCOO[最高執行役員]・世論調査責任者のドクター・ミッチェル・エガースは論評する。

調査の報告時点で名指された特に不安を抱えているブランドには、マールボーロたばこ、AOL、マクドナルド、アメリカン航空、エクソン・モビール、シェブロン・テキサコ、ユナイテッド航空、バドワイザー、クライスラー、バービー人形、スターバックス、ゼネラル・モーターズなどがある。

最近の評価においても、このような傾向が再確認されている。じっさい、これまでの何か月か、経済新聞に繰り返し登場する一連の記事が、ビジネスの意気をそぐような事柄を大きく伝えていた。その典型例をあげれば、8月の英国フィナンシャル・タイムズ紙記事《1. World Turning Its Back on Brand America 「世界
は米国ブランドに背を向ける」》や9月の米国フォーブズ誌記事《2.Is
Brand America In Trouble? 「米国ブランドはピンチなのか?」》がある。

1 http://www.commondreams.org/headlines05/0802-02.htm

2 http://www.forbes.com/home/columnists/2005/09/21/us-branding-politics-cx_pm_0921brandamerica.html

USバンカー誌8月号の記事が、エーデルマン・トラスト・バロメーター[信用指標]社による海外エリート層を対象にした調査の結果を引用していて、それによれば「カナダのエリート層の41パーセントは、ブッシュ政権の政策を理由にあげて、アメリカ製品を買う意思がなく、その比率は、英国で56パーセント、フランスで61パーセント、ドイツで49パーセント、ブラジルで42パーセントになる」ことが判明した。

不信任を表明しているのは、お高くとまった外国人だけではない。アメリカ実業界の指導層じたいが、経済的苦境を帝国的な政策に結びつけはじめている。前述のUSバンカー誌記事は、「海外で[合計して]800万人を雇用する米企業のCEOたちの大多数が、現時点で、反米感情が問題であると認めている」と警鐘を鳴らしている。また、2004年のボストン・ヘラルド紙記事は、「マサチューセッツの財界:イラク戦争がマイナス要因――アメリカのビジネス競争力が犠牲に」と見出しに掲げ、「オピニオン・ダイナミックス社がおこなった調査によれば、企業幹部たちのうち62パーセントが、戦争がアメリカの国際競争力を損なっていると言っている」と指摘した《*》。

http://business.bostonherald.com/businessNews/view.bg?articleid=49917&format=

アメリカのイメージにかかわる問題についての報道に繰り返し登場するのが、BDA《Business for Diplomatic Action「外交活動を実践する実業家グルー
プ」》に結集する企業経営者たちである。BDAは、イラク戦争に関して明確な立場を示すことを避けながら、次のように主張する――

http://www.businessfordiplomaticaction.org/index.php

「高まりつつある反米感情がおよぼす損失が急激に増えている。安全保障面および経済面の損失から、世界において信用を醸成したり、最高最良の人材を確保したりするわれわれの能力の減退にいたるまで、アメリカにまつわるマイナス・イメージを覆すための方策を実行しなければ、米国は競争力を失うことになる」

ブッシュの帝国的なグローバル化がもたらしている悪影響に引き比べ、カレン・ヒューズ[作家、広報担当国務次官]流儀のブランド再建などはお笑い種〈ぐさ〉である――こんなことは、BDAも先刻ご承知だ。BDAは外交問題をわが物とし、その論客たちは「目下のところ、米国政府は信頼できる使者ではない」と直言している。

泥沼に追い込まれた企業

問題の所在は、感覚的なものだけにあるのだろうか? それとも、戦争の報いが事業利益を損なっているのだろうか? 2004年6月、USAツゥデイ紙の記者、ジェームス・コックスは、経営不振にあえぐ企業が、その元凶として、戦争をあげるようすについて、次のように書いている《*》――

http://www.usatoday.com/money/companies/2004-06-14-iraq_x.htm

「何百社もの企業が芳しくなかった2003年度決算をイラク戦争のためとし、その多くは、同地における米軍関与の継続が本年度の実績を損ないかねないと警告している。最近の証券取引委員会の市場調査報告において、航空、住宅建設、放送、住宅金融、投資信託、その他業種の企業が昨年の収益低下は戦争のせいであると苦言している」

ヒューレット・パッカードも批判する側にいて、イラク占領が不安をもたらし、同社の株価に悪影響をおよぼしていると主張する。一方、メディア業界のハースト・アーガイル・テレビ、シンクレア・ブロードキャスト・グループ、ジャーナル・コミュニケーションズは、テレビやラジオでコマーシャル時間の多くが戦争ニュースに食われていると嘆く。

戦争を指弾するのは、一部の働きの悪い経営者にとっては格好の言い逃れにすぎないかもしれないが、不満の大きさは特筆に価するものであり、そのことは、コックス記者が次のように描く、投資信託業者の率直な見解に表れている――

「ウェイン・ハマー所得信託の資産運用担当、デーヴィッド・J・ガルヴァンは『イラクにおける戦争が、企業を泥沼に追い込んでいる』と出資者に宛てた手紙に言う。

「ヴィンテージ相互信託は『(イラクとアフガニスタンにおける)これらの関与の代償は、アメリカ国民が予期し、あるいは受忍しうるものよりも大きいかもしれない』と判断する。

「ボストン均衡信託の支配人、ドメニク・コラサッコは、証券取引委員会報告において、現行の米軍占領は『嘆かわしく、ますます危険になる』と断定する」

[イラクの]再建に関連する業界が利益を計上しているのは、もちろん、周知のこと。ガス・マスクやハムヴィー装甲車の売り上げは上向いている。しかし、このような軍需企業はごく少数の一部にすぎない。他方で、観光産業の多種多様なビジネスが大打撃を受けている。一部の名をあげるだけでも、デルタ航空、ジェットブルー[低運賃の航空会社]、オービッツ[インターネット駆使の旅行会社]、プライスライン・コム[総合旅行サービス]、モートンズ・ステーキハウス、フェアモント・ホテルズ&リゾーツ、ホスト・マリオット[免税店]が、戦争のガッカリする配当をとがめてきた。旅行業界の担い手たちは次のように警告している《*》――

http://www.commondreams.org/headlines05/0509-06.htm

「米国は、海外におけるイメージ低下と官僚的な入国管理政策のために、国際観光客が訪米を思いとどまるせいで、何十億ものドルを得る機会を逸している……全米旅行産業協会(TIA)の最高経営責任者ロジャー・ダウ氏は『これらの問題に対処することが、経済にとって緊急の課題である』と述べた……彼はまた、観光業は米国が明るい印象を築くのに寄与していたことも強調した……『もしもわが国が観光業の抱えるこれらの問題に取り組まなければ、コカコーラ、ゼネラル・モーターズ、マクドナルドといった米国ブランドに与える長期的影響は非常に不利なものとなりうる』

予言されていた経済的悪夢

毎年、スイスのリゾート地、ダボスに世界のビジネス・エリートたちが集まって、世界経済フォーラムを開催している。高揚期のクリントン政権時代、このグローバル化推進論者集会には意気軒昂の気分がみなぎっていた――もっとも、集会場の外では抗議行動が見られてはいたが。だが、2003年1月には、ダボスの雰囲気は格段に暗くなっていた。経済見通しの楽観論は衰えていた。それもとりわけ、イラクに予期されていた戦争が気がかりなせいだった。目の前に迫った一国行動主義的な侵略に関して、企業リーダーたちの熱意たるや、場外の抗議団体とたいして変わらぬありさま。評論家たちは「戦争の恐れが、きわめて不透明な要因として、世界経済の成長予測に影を投げている」と唱え、企業人たちの不安を掻きたてていた。

同じころ、進歩的なエコノミストたち、ディーン・ベイカーとマーク・ワイズブロットは、考えうる最悪ケースのシナリオを政策提言「イラクにおける戦争の経済的損失」において詳細に展開していた。彼らは、海外における反米主義にかかわる損失を挙げるだけにとどまらず、さらに3つの領域に着目して、危惧される事態を論じた。すなわち、アメリカ経済に数十万の雇用喪失を7年間は与えかねない戦争関連の石油ショック、安全保障経費の増大をもたらし、国内総生産(GDP)の成長を鈍化させかねない米国内におけるテロ攻撃の危険性の増大、石油価格の上昇が発展途上諸国を深刻な不況に突き落とす可能性である。

提言に表明されている危惧がどれほど的中したのか、筆者はベイカーに質問してみた。彼は、最悪の事態は現実になっていないと強調しつつも、心配な兆候をいくつか挙げる。石油価格がほんとうに急騰したが、これは主として中国とインドで需要が拡大したためであるとしても、イラクの石油生産がなくなったために状況が悪化したのである。しかも、新しい情報見積もりが出るたびに予告されているとおり、イラク占領のおかげで、わが国はより安全になったのではなく、より危険になったのであり、経済を麻痺させる攻撃のリスクが拡大している。私たちが空港の警備ラインで費やす時間や、都市地下鉄の延着で無駄にする時間は、すでに高くつく経済的損失である、とベイカーは指摘する。

それにもちろん、まだ現実化していないにしても、ゲリラ戦争とテロが嵩じて、おおむね防衛不可能なほどに長く延びている中東の壮大なパイプラインに対する破壊工作がいよいよ激化する可能性がある。中東史の教授でウェブサイト「情報通評論(Informed Comment)」のブロガー、ホアン・コールが、イラクにおけるブッ
シュの大失態を「世界経済の操縦席に手榴弾を抛<ほお>りこむ」ことになぞらえたのは、とりわけこのシナリオが想定されるためだ。

このような侵略開始前に予想されていた代償は、ダボスにおける開戦前の悲観論がまさしく当を得ていたことを示唆している。だが、以上に挙げたような控えめなリストでは、イラク、その他におけるブッシュ政権の政策にまつわって考えうる経済的な“マイナス面”を語りつくせない。例えば、議会支出に関する論争については、少なくとも言及しておくだけの値打ちはある。イラク関連や減税のせいで膨張する財政赤字はビジネスにとって必要悪であるとする財政保守主義者が正しいかどうか、あるいは軍事ケインズ主義[1]は周期的に訪れる経済不況の緩和に役立っているかどうかはともかくとして、犠牲を伴わない戦争という考え方は、いやしくも商売にたけた経営者の耳にはうさんくさく聞こえる。千億ドル単位で流出する戦争の直接経費に、退役傷病兵の医療費を加算し、小規模経営を犠牲にして召集された州軍予備兵たちの損失を投入すれば、たちまち金銭問題の現実に迫ることになる。過大評価されているドル価は、対米債権国の双璧、中国と日本の中央銀行に陣取る担当者たちが当面のあいだ容認しておくように決めたものだが、ある時点で下落することになるし、おそらく
;O”$l$K7P:Q$b0z$-$:$j$*$m$9$@$m$&!#$=$&$J$C$?$H$-!”DK$_$r46$8$k$N$O!”%+!<%M%k!&%5%s%@!<%9!N#2!O$R$H$j$G$O$J$$$@$m$&!# [1. 軍事支出が有効需要を生み、経済を活性化するという主張] [2. 前出、ケンタッキー・フライド・チキンのブランド・キャラクター] 実業界は背を向けるだろうか? 2004年選挙戦さなかの8月、ケリー陣営は候補者の政策を支持する企業経営者204名のリストをばらまいた。けっこうな試みだったが、ブルームバーグ・ニュース[金融情報サービス]が報じた《*》とおり、企業からの支持の面で、民主党はブッシュに大きく水を開けられていた。その時までに大企業の最高幹部52人がケリーに献金していたが、現役大統領の再選運動に献金していたのは280人にのぼっていた。(ビジネスは商売であり、「ケリーの献金リストに記載されたうちの少なくとも3人の経営者は、ブッシュの再選運動にも限度額いっぱいの2000ドルを献金していた」) http://quote.bloomberg.com/apps/news?pid=10000103&sid=auxZCfC4m5xM&refer=us 選挙から1年経った。勝利を誇った大統領だったが、支持率は史上最低レベルに貼りついたままであり、それでもワシントンの表向きイラク政策は「規定路線の堅持」を掲げたままである。このような状況にあって、(開戦前にウォール・ストリート・ジャーナルの論説欄で「これは、疑いなく高くつくものになり――米国と世界の経済に深刻な影響を与えることになるだろう」と警告していた)ブレント・スコウクロフトのような共和党の“現実主義者たち”がふたたび騒ぎたてているのも、驚くべきことではない。彼ら、ブッシュ支持派のCEO[最高経営責任者]たちのなかに、大統領選挙に敗北したマサチューセッツ州選出上院議員や多くの他の民主党員たちが今でも主張している類のクリントン流の多国参加型グローバル化政策への復帰を切望するものが増えるとすれば、完全に理にかなったことになるだろう。 これら反対陣営のどちらも、とりたてて進歩派の気を引くようには思えないが、イラクから身を引くこともかなわないようである帝国的なグローバル化推進論者たちには、ほんものの脅威を投げかけている。共和党内部の対抗者たちは――中間選挙の年[2006年]に入ると、増えるだろうが――ホワイトハウスのタカ派たちをレイムダックにするのに決定的な役割を果たすはずである。企業リーダーたちが、ブッシュの対外政策の代償を再評価し、帝国は金にならないと分かって、このタカ派解体が加速するなら、めでたいことである。 [筆者]マーク・エングラーは、ニューヨークで活動する作家、フォーリン・ポリシー・イン・フォーカス[「焦点の対外政策」]解説スタッフ、トムペイン・コム、ニュースデイ、イン・ジーズ・タイムズに寄稿。連絡先―― http://www.DemocracyUprising.com ケイト・グリフィス(Kate Griffiths)が本稿執筆のための調査を支援。 [原文]Tomgram: Mark Engler on the War Woes of Business Bush’s Bad Business Empire Making the World Unsafe for Microsoft and Mickey Mouse Posted at Tom Dispatch on November 3, 2005 http://www.tomdispatch.com/index.mhtml?pid=33201 Copyright 2005 Mark Engler [翻訳] 井上利男 /TUP