TUP BULLETIN

速報907号 日本を貶(おとし)める

投稿日 2011年4月26日

ケビン・メアの開き直り




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コロラド州ボルダー市在住のパンタ笛吹氏から届けられた続投速報第四弾。(宮前ゆかり/TUP)



米国務省日本部長ケビン・メア氏が「沖縄県民は怠け者でゆすりの名人」と発言した問題は、地震や津波の報道の陰に隠れ、今はもうどのメディアも取り上げてはいない。



あれほど沖縄県民の気持ちを逆なでしたのだから、問題の張本人は反省をしていると思っていた。



しかし近ごろ行われたビデオインタビューで、メア氏は自分の発言を完全に否定した。「あれは学生がでっちあげた偽造文書のようなものだ」と開き直ったのである。



ウソで塗り固められた米国外交に、またもう一つウソが上塗りされたと感じるのは、私だけだろうか。



翻訳・前書き:パンタ笛吹

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日本を貶(おとし)める

著者:デイビッド・ヴァイン
フォリンポリシー・イン・フォーカス(FPIF)
2011年4月20日

日本を大地震が襲うほんの数日前、米国務省日本部長ケビン・メア氏のコメントに端を発して、爆発的な論議が巻き起こった。

メア氏は沖縄県民を指して、彼らは「ゆすりの名人」で「怠け者」だと述べたと報じられた。そのニュースは多くの日本人に怒りの波を引き起こし、日本の新聞は第一面に大きく取り上げた。

問題の発言は、メア氏が米首都ワシントンのアメリカン大学の学生に行った講演の中でなされたものだ。その発言録は日本のジャーナリストに提供された。私はアメリカン大学の教授で、その講演の企画を立て出席もした。私のクラスの学生たちが、沖縄の米軍基地が与える影響を学ぶために沖縄と東京に学習旅行に行くのに先立って、その準備をさせるのがこの講演の目的だった。

講演の内容が公に知れ渡った最初の数日間は、メア氏や弁明を繰り返す国務省関係者は、あの講演は元々オフレコ(公にしない約束)だったと言い、学生たちがメモを元にして作成した発言録の正確さについても疑いをはさんでいた。しかしながら、誰一人としてメア氏の言ったことを否定する者はいなかった。

メア氏は降格された後、困惑した国務省から退職に追い込まれた。そして発言問題が起きてから一ヶ月以上も経った今になって遂に沈黙を破った。4月15日金曜日に行われたウォールストリートジャーナルによるビデオインタビューに応じたのである。
 
彼は問題の発言を「偽造文書のようなもの」と完全に否定し、あの発言は自分の口から出たものではなく、学生たちがでっち上げたものだと主張した。

*誤解の余地のないように話をはっきりさせておく*

誤解の余地のないようにするために、メア氏の講演会で私自身が記した細部にわたる記録を元に検証した。その結果、学生たちの記した発言録がしっかりした内容で、正確だったことを確認した。学生たちは、メア氏が発した特徴のある言い回しまで正しく記録していたのだ。
 
メア氏が述べた所見は、沖縄や日本の人びとを極端に一般化した発言であり、今でもあの発言を思い出すたびに怒りがこみあげ、恥ずかしい思いをしている。しかし、私がここで意見を述べなくとも、以下に表したメア自身の言葉は、説明を加える必要がないほどすべてを物語っている。

社会科学者として私は、講演会でメア氏が発言した一字一句を正確に記録しているので、彼が話したその通りを、ここに正確に引用できる。私はメア氏の言葉を変えたり言い換えたりはしていない。彼の講演の中で、私が確実に聞き取れたと確信した部分にのみ引用符を用いている。

私のノートと学生たちのそれとの間にある不一致は、メア氏の発言を記録する際に生じた取るに足らないささいなものだ。メア氏や国務省関係者があの議事録は「オフレコ」だったと語っているが、講演会の以前にも、最中にも、終了後にも、メア氏や国務省従業員が「オフレコ」という言葉を一度でも発したという記憶は、私には一切ない。

メア氏のコメントの中で最も人びとを怒らせたのは、沖縄の人びとを「ゆすり」の名人と言い表したことだった。沖縄の基地反対運動について講演している最中に、メア氏は実際に沖縄の人びとを指して、「彼らは東京(中央政府)からお金をゆすり取る名人である」と語ったのだ。
 
彼はその後、日本人は全体的に、「ゆすりの文化を持ち、、、沖縄人は特にゆすりの名人で、、、彼らは東京をゆすってお金を得る沖縄経済を発展させている」と付け加えた。

日本人が最も痛みを感じ怒りを覚えたメア氏のもう一つのコメントは、沖縄人の特徴は「怠け者」だと決めつけたことだ。メア氏は、沖縄では離婚率が高く、家庭内暴力もあり、沖縄の地酒・泡盛を飲むせいで、生まれながらのアルコール中毒で飲酒運転も多いと説明し、「沖縄県民はこの島国根性を持っている」と語った。
 
沖縄県民は伝統的にサトウキビやゴーヤを栽培する、とメア氏は説明した後、しばらく言葉をとぎり、聴衆が待ちに待ったころを見計らって、「彼らはゴーヤを栽培するにはあまりにも怠け者だ」と侮辱の言葉を放った。

次にメア氏は、「こんなことを言うのは偏見かもしれないが、かつて沖縄の男性が私に言ったように、沖縄は日本のプエルトリコであり、沖縄県民はプエルトリコ人のように背が低く、肌の色も黒くて、言葉に訛りがある」と発言した。

*メア氏の発言と私の知る沖縄*

米国務省の交渉役を努めるメア氏は、東アジアにおける米軍基地を支援するため、日本政府にさらに多額の援助を支払うよう圧力をかけ続けてきた。そんなメア氏の講演会の発言には、多くの皮肉が含まれていた。その一つが、沖縄県民を「ゆすりの名人」と呼んだことだ。
 
最近、米国政府は、何千人という米海兵隊員を沖縄からグアムに移転させるための費用として、60億9千万ドルを日本政府に支払うよう要求した。メア氏は米軍基地の移転費用を日本が肩代わりしてくれることを指して、「われわれは、日本できわめて有利な取引をした。米国はびた一文払わなくていいのだからね」と学生たちに向かって語った。

沖縄県民の多くは、島から米軍が引き上げるように数十年にわたる弛みない努力で要求を続けてきた。数万人の人びとが毎日のようにデモを繰り返し、少なくとも島の二地域で長年にわたり不断の座り込みが続けられてきた。そんな人びとをメア氏は「怠け者」と呼んだのだから、そのことのほうがたぶん余計にショックだろう。
 
その上、沖縄の米軍基地内では、数千人の沖縄県民が米兵のために料理をしたり、床を掃除したり、軍服を洗濯したりして汗を流していることなど一言も触れていないではないか。それらの人びとが働かなかったら、基地は機能しないのだ。

私は昨年12月に沖縄を訪問したが、その時の体験から、沖縄県民の特性を表す言葉をいろいろと思いつくことができる。沖縄の人たちは、びっくりするほど気前がよく、心根は暖かく、他人を心から歓迎する、など等、、、しかし「怠け者」という言葉は思い当たらない。
 
メア氏があてつけで沖縄県民の性格を「島国根性」と呼び、プエルトリコ人との人種差別的な比較をしたことは、侮辱以外の何ものでもない。それはアメリカによる沖縄とプエルトリコの植民地化の歴史をまったく無視したものであり、あまりにも浅はかで偏見的な見方だ。沖縄は公式には1945年から1972年まで占領されていたが、非公式には今も占領は続いているのと同じだ。またプエルトリコは1898年から現在に至るまで米国により支配されている。二つの島国とも、占領政策が原因で、数々の悲しい社会問題が実際に起きている。

メア氏の発言が日本の人びとを傷つけたことについては、私は米国市民の一人としてお詫びしたい。しかし、彼の偏った見方が公にされたことは、実はよかったのではと今は思っている。
 
メア氏が、自分が以前発したコメントを突然否定し、私の学生たちの記録を「偽造文書」といつわって糾弾したことにはショックを受けた。それでもやはりこの事件は、沖縄の米軍基地政策の舞台裏で長い間伏せられていた態度や物の考え方を、日米両政府が調査するいい機会になると思う。
 
そしてまた、米軍基地のもと、沖縄県民がどんな生活を強いられているのか、彼らの声にもっとまじめに耳を傾けるいいチャンスであってほしい。
    
原文リンク
http://www.fpif.org/articles/smearing_japan
http://blogs.wsj.com/japanrealtime/2011/04/14/exclusive-video-u-s-s-ex-japan-head/
http://ryukyushimpo.jp/news/storyid-174366-storytopic-3.html