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TUP速報999号 英国のEU離脱キャンペーンに見る市民の政治誘導と参院選

(2016年07月08日)

◎東西で、国民の愚かな選択と史書に記されるか?


質問「前進か、後退か。」

ただそう訊かれたら、誰しも「前進」と答えたくなりそうです。これが心理ゲームの一節ならば、その後、司会者が、「はい、目の前は崖でした。南無阿弥陀仏……」で一同、笑いに包まれる、というオチかも知れません。

でも、笑ってすまないのは、これが、まぢかに迫った参議院選挙において、安倍首相ひきいる自民党のキャッチコピーであることです。理性や論理ではなく、人の直感にどことなく感覚的に訴える政治的駆け引きですね。

先日、そんな形のキャッチコピーが人心をつかんだ、とも言えそうな世界的政治ニュースがありました。イギリスで行われた国民投票の結果、同国がEU(欧州連合)を離脱することが決まったものです。投票前、英国のほとんどの知識人がEU残留を支持していたことに示されるように、EU離脱の支持には、論理らしい論理がありませんでした。しかし、蓋を開けてみれば、 EU離脱がわずかながら上回りました。英国在住の筆者も含めて、数多くの英国人にとって、頭を金槌でぶん殴られたような衝撃でした。

この結果をあえて一言でまとめるならば、EU離脱を推すプロパガンダが成功を収めた、と言えるでしょう。折しも日本では、参院選が間近に迫り、戦後70年で初めての改憲が問われています。英国と同じように、後世、国民の愚かな選択と史書に記されることになるのでしょうか。以下、英国の国民投票におけるEU離脱キャンペーンと有権者の行動を振返り、その背景と示唆するところを考えます。

坂野正明/TUP (前書き、本文とも)

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TUP速報998号 バーニー・サンダース バチカン演説

(2016年07月05日)

昔も今も、公平な経済の仕組みを求める人類の葛藤は絶え間ない。現在の日本でもオリンピックに使うお金はあるのに、毎日ご飯が食べられない子供たちが多く存在する。

それぞれの能力にふさわしい労働でなりたつ暮しは可能だろうか。搾取することなく、お互いが支えあい、分かち合う経済は可能だろうか。勤労の成果や恩恵、余剰価値の配分は誰がどのような動機で行い、誰がどのような形で享受するのか。戦争の根源である貧困を人類は克服できるのだろうか。

現在、金権政治と軍事経済の既得権益の規模が多国籍にわたり、貧困と階級の格差が世界中に広まっている。そのような世界的環境で「倫理」が果たす役割とは何か。

新約聖書マタイ福音書25:14-30に伝わるキリスト自身の資産に対する考え方からマルクスの「ゴータ綱領批判」に至るまで、経済的正義という理念の系譜は時代を超えて受け継がれてきた。西欧的な「倫理的経済」の概念は、資本主義経済の歪みを修正し、貧困を撲滅するための近代の命題に活気をもたらした。経済的には社会主義の理論の検証や実践が試みられ、倫理的には解放の神学の台頭で南米の革命の動機や韓国の民衆神学への影響が高まった。

そのような歴史と言論空間の中で、バーニー・サンダーズ上院議員は2016年4月15日、大統領選挙の民主党予備選挙中に「倫理的経済への展望」に関するバチカンの学会に招待された。この学会には中南米諸国から多くの首脳が出席していた。ボリビアのモラリス大統領の隣に着席したサンダーズは「倫理的経済の緊急性:『新しい課題』回勅25周年への回想」と題する演説文を読み上げた。

米国民主党に内部改革をつきつけ二大政党政治の癒着を揺さぶるサンダーズと、 カトリック教会の巨大な金融汚職の構造を内部から改革するために奮闘しているフランシスコ法王の非公式のツーショットには、画期的で波乱に満ちたシンボリズムが潜んでいる。

(前書き:宮前ゆかり 、翻訳:法貴潤子/TUP)

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TUP速報997号 予備選で示されたクリントン候補とサンダース候補のイスラエル観

(2016年04月30日)

◎政治家は口先商売とはいうものの


今年11月に大統領選を控えた米国は今、各党の候補者を選出する予備選の真っ最中だ。4月19日には大票田のニューヨーク州の予備選挙が行われた。民主党の予備選はクリントン候補とサンダース候補の一騎打ちとなっていて、予備選に備え14日にはニューヨークで両者の討論会が開かれた。

討論会で2人の立場の違いを際立たせたのはイスラエルに対する立場だった。前国防長官のクリントン候補はイスラエルに寄り添う立場を強調し、サンダース候補はパレスチナに人びとに敬意を払い、その尊厳を尊重しなければならないと言った。

自身もユダヤ人であるサンダース候補がイスラエルに対する立場をはっきりと言及したのは、1988年だった。彼はジェシー・ジャクソン牧師が大統領選に立候補したときに支持を表明したのだが、ジャクソン牧師はパレスチナの独立権を訴えていたため、師を支持したサンダース氏(当時はバーリントン市長)は、第一次インティファーダ(占領に対する蜂起)中のパレスチナに対して尋ねられ「アラブ人の腕や脚を折るイスラエル兵の姿は非難されるべきだ。街を封鎖するイスラエルの考えはとうてい受け入れられない」と言い、イスラエルが話し合いの場をどうしても持たない場合はアメリカが軍事支援を断てばいいと断言したのだ。

しかしその後上院議員になった彼は、アメリカの外交ラインであるイスラエルとパレスチナによる領土分割という「二国家解決」の立場をとるようになった。以前の「軍事支援を断つ」といった言葉とは裏腹に、一度もイスラエルに対する軍事援助に反対票をいれなかったし、2014年のイスラエルによるガザ封鎖攻撃で多くの、無辜の一般市民が犠牲になった時でも同様だった。

2014年8月、バーモント州で開かれたタウンミーティングで、攻撃を受けていたガザへではなく、圧倒的な軍事力を持つイスラエルへのさらなる軍事援助するという議案に、バーニー・サンダース上院議員が賛成票を投じたことを参加者から指摘され意見を求められた。ISISのことを持ち出したりと歯切れの悪いサンダース議員に怒った聴衆に対し「シャラップ!」と怒鳴り、会場にいた6人を警察の手で退出させた。そのサンダース候補が、今回は一歩踏み込んでイスラエルの入植地は違法だと言ったのだ。アメリカの大統領候補者としてのこの発言は重い。

サンダース候補の支持者には若者が多い。選挙の寄付金も平均27ドルでおよそ350万人の個人献金から集めている。ニューヨーク予備選で勝ちをゆずり、民主党の公認候補になるには苦戦を強いられているが、もともとが民主党員ではないため、公認がとれなければ独立候補として出馬するのではないかとも噂されている。そうなれば、民主党の票が割れることは確実でトランプ候補がアメリカ大統領になるという悪夢に現実味が生まれてくる。

しかし、そんな悪夢ではなくて、氏が予備選で示している「社会主義者」としての政策を支持する若い層があるということにアメリカの未来をみたくなる。そういう気持ちをこめて、4月15日に放送されたデモクラシー・ナウ!から、クリントン候補とサンダース候補のイスラエルに関わる言論を紹介したい。

(前書き、翻訳:キム・クンミ/TUP)

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