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TUP速報997号 予備選で示されたクリントン候補とサンダース候補のイスラエル観

(2016年04月30日)

◎政治家は口先商売とはいうものの


今年11月に大統領選を控えた米国は今、各党の候補者を選出する予備選の真っ最中だ。4月19日には大票田のニューヨーク州の予備選挙が行われた。民主党の予備選はクリントン候補とサンダース候補の一騎打ちとなっていて、予備選に備え14日にはニューヨークで両者の討論会が開かれた。

討論会で2人の立場の違いを際立たせたのはイスラエルに対する立場だった。前国防長官のクリントン候補はイスラエルに寄り添う立場を強調し、サンダース候補はパレスチナに人びとに敬意を払い、その尊厳を尊重しなければならないと言った。

自身もユダヤ人であるサンダース候補がイスラエルに対する立場をはっきりと言及したのは、1988年だった。彼はジェシー・ジャクソン牧師が大統領選に立候補したときに支持を表明したのだが、ジャクソン牧師はパレスチナの独立権を訴えていたため、師を支持したサンダース氏(当時はバーリントン市長)は、第一次インティファーダ(占領に対する蜂起)中のパレスチナに対して尋ねられ「アラブ人の腕や脚を折るイスラエル兵の姿は非難されるべきだ。街を封鎖するイスラエルの考えはとうてい受け入れられない」と言い、イスラエルが話し合いの場をどうしても持たない場合はアメリカが軍事支援を断てばいいと断言したのだ。

しかしその後上院議員になった彼は、アメリカの外交ラインであるイスラエルとパレスチナによる領土分割という「二国家解決」の立場をとるようになった。以前の「軍事支援を断つ」といった言葉とは裏腹に、一度もイスラエルに対する軍事援助に反対票をいれなかったし、2014年のイスラエルによるガザ封鎖攻撃で多くの、無辜の一般市民が犠牲になった時でも同様だった。

2014年8月、バーモント州で開かれたタウンミーティングで、攻撃を受けていたガザへではなく、圧倒的な軍事力を持つイスラエルへのさらなる軍事援助するという議案に、バーニー・サンダース上院議員が賛成票を投じたことを参加者から指摘され意見を求められた。ISISのことを持ち出したりと歯切れの悪いサンダース議員に怒った聴衆に対し「シャラップ!」と怒鳴り、会場にいた6人を警察の手で退出させた。そのサンダース候補が、今回は一歩踏み込んでイスラエルの入植地は違法だと言ったのだ。アメリカの大統領候補者としてのこの発言は重い。

サンダース候補の支持者には若者が多い。選挙の寄付金も平均27ドルでおよそ350万人の個人献金から集めている。ニューヨーク予備選で勝ちをゆずり、民主党の公認候補になるには苦戦を強いられているが、もともとが民主党員ではないため、公認がとれなければ独立候補として出馬するのではないかとも噂されている。そうなれば、民主党の票が割れることは確実でトランプ候補がアメリカ大統領になるという悪夢に現実味が生まれてくる。

しかし、そんな悪夢ではなくて、氏が予備選で示している「社会主義者」としての政策を支持する若い層があるということにアメリカの未来をみたくなる。そういう気持ちをこめて、4月15日に放送されたデモクラシー・ナウ!から、クリントン候補とサンダース候補のイスラエルに関わる言論を紹介したい。

(前書き、翻訳:キム・クンミ/TUP)

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TUP速報996号 インディペンデント紙の終刊/われわれが爆弾を落とし、かれらが傷つく

(2016年04月16日)

◎インディペンデント紙の終刊


英国の4大高級紙の一角を占めていたインディペンデント紙が、2016年3月26日をもって印刷版の発行を終了した。デジタル版はこれまで通りに発行され、オンラインで無料で読めるほかタブレットやスマートフォンで定期購読もできるが、キオスクやニューズエイジェント(英国の町のそこここにある新聞販売店、食品店や雑貨店を兼ねる場合が多い)の店頭で異彩を放つインディペンデント紙の一面を見ることができないのは実に寂しい。


インディペンデントはデザインに特徴があり、特に第一面にインパクトがあった。写真や図表を大きく使ったり、風刺画を使用することもあった。最も強く記憶に残っているのは、イラクの大量破壊兵器調査団を率い、その後、不審な死に方をしたケリー博士に対し、ブレア首相が圧力をかけて情報操作したとのBBC報道の真偽を問うハットン独立調査委員会の報告書が出た時のものだ。紙面の中央に「Whitewash?(ごまかし?)」と端正なフォントで印刷された赤い文字を見た時の衝撃は忘れられない。(本稿末尾でご覧いただけます)


英国では全国紙を宅配で読む人はそれほど多くはなく、特に都市部では、ほとんどの人は店頭で購入する。高級紙も大衆紙もそれぞれ政治的な色分けがはっきりしており、その中でインディペンデントは、創刊された1986年以来、どの政党にも肩入れしない「独立した」立場をとっていた。何年か前にBBCで放送された法廷もののドラマで、陪審員団の代表に選ばれる温厚な中年男性が母親と二人で暮らす郊外の家に配達される新聞がインディペンデントだった。とても短いシーンだったが、その一瞬で、政治的に独立した新聞を宅配で読むこの人は、きっとバランスの取れた考え方をするに違いないといった事柄が視聴者に説明されるような、インディペンデント紙はそういう新聞だった。


しかし、13年間続いた労働党内閣が保守党の挑戦を受けた2010年の総選挙で、インディペンデントとしては異例なことに、議会第三党だったリベラル・デモクラッツ(自由民主党、通称リブデム、中道左派)を推す立場を取った。当時の労働党は、サッチャーの正統な後継者とも言われるブレア首相とブラウン財相(選挙時には首相)が推進したネオリベラル政策で、もはや労働者の政党とは言えなくなっており、中道左派のリブデムが、党を挙げてイラク戦争開戦に反対票を投じて以降、英国の主要政党では最左派になっていた。リブデムとインディペンデント紙は、勝者総取りの小選挙区制は有権者の意志を反映しないとして選挙制度改革を求める立場で一致していた。この総選挙ではどの政党も過半数を占めることができず、第一党の保守党と第三党のリブデムの連立政権ができた。政策的には水と油のような二党の連立でリブデムは大きな妥協を余儀なくされて公約を破り、裏切り者の烙印を捺され、2015年の総選挙で議員数一桁台の議会第四党に落ちた。



インディペンデントは高級紙の定型サイズとも言えるブロードシート版(日本の高級紙のサイズ)から、大衆紙の定型サイズであるタブロイド版に、英国で最も早く切り替えた新聞だった。「タブロイド」は大衆紙の代名詞でもあるので、インディペンデント自身はコンパクト版と呼んだこのサイズは通勤・通学時に電車やバスの中で広げやすい。その後、他の新聞もインディペンデントに続いてサイズの縮小に取り組み、英国で昔ながらのブロードシート版で発行されている全国紙は、今ではテレグラフとファイナンシャルタイムス、サンデイタイムスだけになった。インディペンデントが選んだデジタル版のみでの発行も、もしかすると将来の新聞ではあたりまえの姿になるのかもしれない

* * * * *


インディペンデント紙の終刊にあたり、12年前に、あるメールマガジンで配布した原稿をTUP速報で再配布することを思いついた。インディペンデントの記事や紙面作りに影響を受けて書いたものだったからだ。今に続く中東と世界の混乱の発端を思い返したり、報道はどうあるべきかなどを考えるきっかけになれば幸いだ。なお文中にあるマドリード列車テロの犠牲者数は、二重に数えられていた人があったために修正されている。

 前書き・本文(2004年3月20日初出):藤澤みどり


 

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TUP速報995号 反逆者の集い――スノウデンに会いに行く(4)

(2016年02月15日)

反逆者の集い


「スパナを放り込んで戦争マシンを止めることができる人は限られている。素手よりもわずかに多くを持つなら、君には特別な役割があるはずだ」

反戦の歴史家、故ハワード・ジンは常々「小さな反逆」を人々に説いていた。そして反逆する多くの人々とつながる喜びについても頻繁に語った。そんな時、ジンはいつもいたずらっ子のような笑い顔だった。

素手よりもわずかに多くを持つ反逆者、ダニエル・エルズバーグ、ジュリアン・アサンジ、エドワード・スノウデン。そして無名の内部告発者たちがジンの系譜を踏み、今、新しい歴史を綴っている。

彼ら内部告発者の支援団体「報道の自由基金https://freedom.press)」の理事の一人であるジョン・キューザックは、ロシアに亡命し ているスノウデンをエルズバーグと共に訪れるというアイデアを思いついた時、ふと、もう一人の反逆者を誘うことにした。子供のような好奇心で本質に切り込 むアルンダティ・ロイだ。

エルズバーグ、キューザック、ロイ、スノウデン、アサンジ。笑いと涙が交錯するこの反逆者の集いの記録を読みながら、ジンのあの嬉しそうな顔が脳裏をかすめた。

キューザックによる記録を4回のシリーズで配信します。

(前書き:宮前ゆかり、翻訳:宮前ゆかり/TUP)

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