TUP BULLETIN

速報983号 「アパルトヘイト」より悪質――ガザについてチョムスキーのインタビュー(2/2)

投稿日 2014年9月9日
◎制裁措置としてイスラエルへの武器禁輸が重要

8月26日ガザでようやく停戦合意がなされました。ハマースは前回の停戦を19カ月守りましたが、イスラエルはこれまで繰り返し停戦を破ってきました(チョムスキーインタビューパート1)。イスラエルに停戦を守らせ、封鎖の解除などの停戦条件を実行させるには、米国をはじめとする国際社会の圧力が必要です。ところが安倍政権は5月にイスラエルと新しい包括的パートナーシップと称する協定を結び、また、4月の武器輸出解禁にあたって紛争国の定義を非常にあいまいにしていますが、これは米国経由でイスラエル向けの輸出を可能にするためにほかなりません。米国でもヨーロッパでもイスラエルに対する世論がこれまでと違って厳しさを増しているとき、日本の姿勢は国際社会の動向に逆行するもので、わたしたちは強く反対して行かなければならないと思います。
チョムスキーのインタビューのパート1はこちらをご覧ください。
「速報982号 忌わしい暴虐――ガザについてチョムスキーのインタビュー(1/2)」

(翻訳:荒井雅子・宮前ゆかり/TUP)

パレスチナでのイスラエルの行為は「アパルトヘイト」よりずっと悪質

――ガザについてチョムスキーのインタビュー(2/2)
2014年8月8日

著名な言語学者、政治的反逆者ノーム・チョムスキーを迎えて、ガザ危機と米国のイスラエル支援、アパルトヘイト、BDS(ボイコット、投資引き揚げ、制裁措置)運動をめぐってお話を聴いています。パート2です。「占領地でイスラエルがやっていることは、アパルトヘイトよりずっと悪質だ」とチョムスキーは言います。「イスラエルの行為をアパルトヘイトと呼ぶのは、少なくとも『アパルトヘイト』が南アフリカのような形のアパルトヘイトを意味しているなら、イスラエルにとってありがたいことです。占領地で起きていることは、アパルトヘイトよりずっと悪質です。決定的な違いがあります。南アフリカ国民党は、黒人住民を必要としていました。黒人は労働力だったのです。占領地のパレスチナ人に対するイスラエルの関係はまったく違います。イスラエルはパレスチナ人がいることを望まない。出て行くか、少なくとも刑務所にいてほしいと思っています」

エイミー・グッドマン:こちらはデモクラシーナウ! 戦争と平和リポートのエイミー・グッドマンです。ノーム・チョムスキーのインタビューを続けます。世界的に有名な政治的反逆者、言語学者、著作家で、多くの著書があります。近著の一つは『危機の中のガザ』です。ここで、CBSのフェイス・ザ・ネーション司会者ボブ・シーファーの発言をお聞きください。最近の番組の締めくくりの発言です。

――ボブ・シーファー:中東では、パレスチナ人は、テロリスト集団に支配されています。このテロ集団は、自らの大義への同情を買うために、自らの子どもたちを殺させるという戦略に乗り出しています――戦略は実際に、少なくとも一部の人びとの間では、功を奏しているかもしれません。先週私は、ゴルダ・メイアのずっと前の発言を見つけました。メイアはイスラエルの初期の指導者の一人です。発言は昨日言われたとしてもおかしくないものです。「われわれはアラブ人が私たちの子どもたちを殺すのを赦すことはできる」と彼女は言いました。「しかし、彼らの子どもたちを殺すよう私たちに強いるのを決して赦すことはできない」

CBSのジャーナリスト、ボブ・シーファーの発言でした。コメントをお願いします。

ノーム・チョムスキー:わざわざCBSに耳を傾けるまでもありません。シーファーが引用している、イスラエルのプロパガンダ当局の話を直接聞けばいいのですから。米国のメディアが、暴力的な侵略国家のグロテスクなプロパガンダ当局の言うなりになろうと懸命なのは、恥ずべきことです。この発言そのものについてですが、イスラエル側の発言――シーファーが引用したイスラエルのプロパガンダ発言についてもっとも適格なコメントは、優れたイスラエル人ジャーナリスト、アミラ・ハスによるものでしょう。ハスは、この発言をただ「同情の仮面をかぶったサディズム」と形容しています。かなり正しい形容の仕方です。

エイミー・グッドマン:国連の役割と米国について――米国に対する姿勢についてもお聞きしたいと思います。国連人権高等弁務官のナヴィ・ピレイは、イスラエルによるガザ攻撃において米国が果たしている役割について、米国を批判しています。お聞きください。

――ナヴィ・ピレイ:米国は、現在イスラエルがガザで使用している重火器を提供しているだけではなく、イスラエル人をロケット弾攻撃から保護する[防空システム]「アイアンドーム」の整備にほぼ10億ドルを提供しています。しかしガザ住民には砲撃からのこうした保護は何もありません。ですから私は米国に、国際人道法と人権法の署名国であることを思い出していただきたく思います。

エイミー・グッドマン:国連人権高等弁務官のナヴィ・ピレイでした。金曜日――パレスチナ人の死者数がキャストレッド作戦のときを上回っていた日でした。1400人を超えていました。オバマ大統領はホワイトハウスにいて、記者会見を開きました。大統領は記者会見でガザの問題を取り上げませんでしたが、すぐガザについての質問が出て、大統領は、イスラエルに対する米国の支援を再度肯定し、弾薬の再供給が行われていること、2億2000万ドルが「アイアンドーム」の拡張のために送られることを述べました。しかし、その後週末になって、またしても国連のシェルターが攻撃を受け、何千人ものパレスチナ人が非難していた学校の一つが攻撃され、子どもを含めて多くの避難者が殺害されました。そして、米国でさえ国連とともに、イスラエルがしていることを批判しました。米国が何をしてきたか、そして今、その姿勢に本当に変化が見えるのかどうか、ご意見をお聞かせください。

ノーム・チョムスキー:米国が何をしてきたかから始めましょう。国連人権理事会の発言の話を続けます。まさにあのとき、先ほど流した発言がなされたまさにそのとき、人権理事会では、ガザで何が起きているかについて調査をするかどうか――行動ではありません。調査だけです――の議論がなされていました。人権侵害の恐れがあるかの調査です。「恐れ」とはふざけています。調査は、反対1票で決定されました。誰が反対票を投じたかご想像ください。オバマは、慇懃な発言をしながら、調査には反対票を投じました。これが行動です。米国は、ピレイが指摘したように、暴虐に対して、非常に重要な、決定的な支援を提供し続けています。イスラエルの爆撃機と呼ばれるものがガザで、無防備の標的に爆弾を落としているとき、それは、イスラエルのパイロットが乗った米国の爆撃機です。ハイテク武器弾薬やそのほかのいろいろなものでも同じです。ですから、これもまた、同情の仮面をかぶったサディズムです。これらが行動なのです。

エイミー・グッドマン:米国の世論はどうでしょうか。世論が果たす役割についてお話しいただけますか。間違いなく注目すべき変化をいくつか目にしました。MSNBCには、元アルジャジーラ記者で、非常に尊敬を集めているアイマン・モヘルディンがいました。欧米の記者の中で、2008年にガザでキャストレッド作戦を報道したのは、モヘルディンとシェリーン・タドロスだけで、モヘルディンにはパレスチナで非常に豊富な経験があるわけです。ところがMSNBCはモヘルディンを退去させました。でも、これに対して非常に多くの批判があったため――流れていたのは「アイマンに報道させろ」だったと思います――、モヘルディンはその後戻されました。ですから、現場で何が起きているのかを人びとが知りたがっているという雰囲気がありました。何か変化の始まりがあったように思えました。米国の人びとの間で何か違いを感じておられますか――イスラエルと占領地で起きていることに対する態度に関して。

ノーム・チョムスキー:それは間違いありません。何年かの間にそうなってきています。多くの人に恐怖を与えたキャストレッド作戦の後、一種の変曲点がはっきりし、今またそれが起こっています。いたるところでそれがわかります。たとえば、『ニューヨークタイムズ』を例にとりましょう。『ニューヨークタイムズ』は、二日ほど前、論説ページのかなりの部分を、ガザ日誌に充てましたが、これは心に訴える悲痛なものでした。『ニューヨークタイムズ』には、過激主義のイスラエルの政策を強く非難する社説が掲載されています。これは新しいことで、米国で何かが起きていることを反映しています。世論調査でも、特に若い人たちの間で、それがわかります。世論調査結果を見ると、おおむね30歳以下の人たちは、今では、かなり姿勢が変化しています。大学のキャンパスでもわかります。というのは、わたし自身が経験しているからです。こういう問題について50年くらい講演をしてきましたが、自分の大学の中でさえ、文字通り、警察に保護されたものです。会合が、猛抗議によって、乱暴に解散させられたりしました。だいたいこの10年くらいのうちに、これがかなり変化し、今ではパレスチナの連帯がおそらくキャンパスで最大のトピックになっています。本当に大勢の人が聴きに集まります。悪意ある質問をされることはほとんどありません。これは非常に大きな変化です。若い人たちの間で顕著でしたが、彼らも年齢を重ねています。

しかし、米国について忘れてはならないことがあります。米国は民主制ではない、ということです。金権制なのです。主流の学術政治学の分野で後から後から研究が発表され、それらによれば、わたしたちがみな知っていること、あるいは知っているべきことは、政治的決定が、非常な特権と富と集中資本をもったごく少数の人びとによってなされているということです。国民の大半にとっては、自分たちの意見は政治体制の中ではまったく物を言いません。事実上、市民としての権利を奪われているのです。お望みなら詳しいことを説明できますが、基本的にはこういう話です。でも、世論は違いを生み出すことができます。独裁制においてさえ、民衆を無視することはできません。このように部分的にであれ民主的な社会においては、無視することはいっそう難しいのです。ですから、最終的には、これが違いを生み出すでしょう。そして「最終的には」がいつになるのかは、わたしたち次第です。

こういうことは前にも経験しています。たとえば、先ほども触れた東ティモールの場合です。25年間、米国は、インドネシアによる残虐な侵略と虐殺、事実上集団虐殺に等しいものを強く支持してきました。虐殺は1999年を通して起こり、当時、インドネシアの暴虐は増加し、激化していました。インドネシアによる攻撃の後、首都ディリが事実上明け渡された後も、米国はまだインドネシアを支持していました。ようやく、1999年9月半ば、国際的に、そして国内的にも相当の圧力を受けて、クリントンは、インドネシア軍の将軍に静かに告げました。「おしまいだ」。それまでインドネシアは決して撤退しないと言っていました。「我々の領土だ」と言っていたのです。彼らは数日のうちに撤退し、国連平和維持軍は、インドネシアの軍事的抵抗なしに東ティモールに入ることができました。ですから、これは、何ができるかを劇的に示しているわけです。南アフリカはもっと複雑なケースですが、類似点もありますし、この2つ以外に他のケースもあります。遅かれ早かれ、米国内の圧力によって、米国政府がこの問題について世界と同じ立場を取るようになる可能性があり――これは本当にわたしたち次第です――、それは決定的な変化となるでしょう。

エイミー・グッドマン:ノームさん、最近『The Nation』に掲載された、イスラエル/パレスチナ問題とBDS(ボイコット・資本引き揚げ・制裁措置)についての記事のことをお聞きしたいのですが。 BDS運動に批判的でいらっしゃいましたね。多くの反響があり、その一つが[ワシントンDCの]エルサレム基金とその啓発プログラムであるパレスチナセンター事務局長ユーセフ・ムナイェルのものでした。彼はこう書いています。「チョムスキーによるBDS批判は、今までBDSは権力力学を変えることができていないのだから、BDSでは権力力学を変えることはできない、というもののようだ。BDSにとって、先の道のりが長いことは疑いないが、運動が成長していることもまた疑いない。……外交や武装闘争をはじめ、変化をめざす他の方途はすべて功を奏しない、ということが今までにわかっている。そしていくつかの方途は、パレスチナ人の命と生活に少なからぬ代償を強いている」。お答えくださいますか。

ノーム・チョムスキー:実は、もう答えています。『The Nation』のウェブサイトで見つけられます。でも簡単に言うと、わたしは、BDSに批判的どころか、強く支持しました。BDS運動と呼ばれるものの奇妙なところの一つは、多くの活動家にとって、支持が支持として見えないことです。ほとんど崇拝のようなものになって、教理問答をおおむ返しに繰り返さない限り。わたしの記事をざっと見ていただければ、BDSのような戦術を非常に強く支持していました。実は、BDS運動が存在すらしないうちから、わたしはBDSにかかわってきましたし、支持してきました。これらは正しい戦術です。

しかし、活動家にとって習性となるべきことがあります――たいていはそうなっていますが――、何かの戦術を行うとき、それを推進するとき、被害者にそれがどのような影響を及ぼすことになるか、自問しなければなりません。ある戦術を、自分が満足感をもてるという理由で推進することはありません。戦術を推進するのは、それが被害者の役に立つだろうと判断するからです。そして、選択をする必要があります。これはずっと昔から問題になってきたことです。たとえばベトナム戦争の間、暴力的な戦術に訴えるべきか否かをめぐって論争がありました。たとえばウェザーマン(注)のようなタイプの戦術です。動機は理解できます――人びとは必死でした――が、ベトナム人は強く反対しました。そしてわたしを含む多くの人々も反対しました。理由は、おぞましい行為に対して強力な対抗行為が正当化されないということではなく、結果として被害者に害をもたらすことになるからでした。こうした戦術は暴力に対する支持を高めることになり、実際にそうなりました。こういう問いはいつでも持ち上がります。

(注)ベトナム戦争反対を唱えて連続爆破事件などを起こした米国の過激派組織

残念ながら、パレスチナ連帯運動は例外的にこうした事柄を熟慮しようとせずにいました。このことは、最近、法律団体アル=ハクの創設者ラジャー・シャハーデによって再び指摘されました。シャハーデは、ラーマッラー出身のリーダー的存在で、長年の支持者、非常に重要な、有力な人物です。彼が指摘したのは、パレスチナ指導部が、彼の言う、絶対的な正義――私たちの求める絶対的な正義――に焦点を当てがちであり、実際的な政策に注意を払っていない、ということでした。このことは数十年にわたって非常に明白です。本当に献身的で知識豊かな闘士イクバール・アフマド(注)のような人びとは、このことに激しく怒っています。指導部はどうしても実際的な問題に耳を傾けることができなかったのですが、これは民衆運動、ナショナリスト運動で成功するには重要なことなのです。これを理解できる人間が成功を収められるのであり、理解できない人間は成功することができません。そして……

(注)パキスタンの政治学者、反戦家。

エイミー・グッドマン:BDS運動や活動家はどのような選択をすべきだとお感じですか。

ノーム・チョムスキー:選択はとてもシンプルで簡単です。実は記事でもその話をしています。占領をターゲットにした行動は、かなり、非常に成功しています。そのほとんどは、BDS運動とは関係がありません。ですからたとえば、もっとも過激でもっとも成功したものの一つは、政府関係であれ民間であれ、占領地と何らかの関係をもっているいかなる組織とも関係をもたないという、欧州連合の決定、指針です。これはかなり強力な動きです。これは、南アフリカについても行われた動きです。ほんの2カ月ほど前、米国の長老派教会は、どのような形であれ占領と関わっている、いかなる多国籍企業からも資本を引き揚げることを求めました。次々とこのようなケースが出ています。これはまったく理にかなっています。

それに ――これまで制裁措置は何も行われていませんから、BDSというのは少し語弊があります。本当はBDですね。でも制裁措置はあり得ます。推進する明白な方法が一つ存在しているのです。長年存在していましたし、多くの支持もあります。実際アムネスティ・インターナショナルは、キャストレッド作戦の間にこれを呼びかけました。武器禁輸です。米国が武器禁輸を課せば、あるいは武器禁輸を議論しさえすれば、大きな話題となり、大きな貢献となります。可能な制裁措置の中で最も重要なものです。

そしてこれには根拠があります。米国のイスラエルの武器支援は、米国の法律に直接違反しています。米国の海外援助法を見てください。常に人権侵害を行っている国、単位、そのほか何であれ、そういうものへの軍事援助を禁じています。イスラエルによる人権侵害は非常に極端で常に行われていますから、論じる必要もほとんどありません。言い換えれば、米国のイスラエルへの支援、軍事支援は、米国の法律に直接違反しているということです。そしてピレイが先ほど指摘したように、米国は、ジュネーブ条約の締約国ですから、ジュネーブ条約の遵守に取り組まないことによって、自らが結んだ非常に重大な国際的約束に違反していることになります。米国のような締約国には、遵守義務があります。そしてそれは、国際人道法の違反を防止するということであって、間違いなく、違反をけしかけるということではありません。ですから米国は、国際人道法の遵守義務に違反しており、また米国の国内法にも違反しています。そしてこのことは少し理解されてきています。

エイミー・グッドマン:パレスチナの非暴力の問題について、ニコラス・クリストフへのコメントをおききしたいのですが。クリストフは、先月『ニューヨークタイムズ』紙にこう書きました。「パレスチナの武装闘争は何も達成しておらず、パレスチナ人の悲惨な状況を悪化させている。もしパレスチナ人が、武装闘争の代わりに、ガンディーのようなスタイルの大規模な非暴力抵抗運動をしていれば、その結果のビデオ映像が世界中で反響し、パレスチナは国家と自由を達成できているだろう」。ノーム・チョムスキーさん、コメントをお願いします。

ノーム・チョムスキー:そうですね。何よりもまず、これはまったくのでたらめです。パレスチナの非暴力はずっと続いていて、これは非常に重要な非暴力の行動です。わたしには、 たとえばクリストフのコラムにも、どこにも、その反響が見えませんけれど、わたしが言いたいのは、民衆運動の中には存在していても、クリストフが説明している事柄ではないということです。

クリストフの発言にはまた相当ねじれたところがあります。クリストフがやるべきことは、世界第一の暴力加害者である米国に向かって非暴力を説くことではないでしょうか。ここでは報道されませんでしたが、昨年12月、国際世論調査――米国ではギャラップ、英国でもそれに相当する調査会社という一流世論調査会社が、国際世論調査を行いました。尋ねられた質問の一つは、「世界平和への最大の脅威はどの国ですか」。第1位はどこだと思いますか。他国の追随をまったく許しません。米国はダントツです。ずっと離れて2位はパキスタン。これはおそらくインド人の回答によるところが大きいでしょう。いいですか、ニコラス・クリストフがコメントすべきなのはこのことについてです。クリストフは、自分のいる場所で、わたしたちのいる場所で、あなたとわたしのいる場所で、非暴力を呼びかけるべきなのです。それが、世界で大きな違いを生み出すことになるでしょう。そしてもちろん、わが国の顧客国家でも非暴力を呼びかける。たとえば、米国が暴力のための手段を直接提供しているイスラエルや、あるいは、何百億ドルという軍事援助そのほかもろもろを議論もされない方法で送っている、急進的で残忍な原理主義国家サウジアラビア。それなら理にかなっています。どこかにいる犠牲者のだれかに、「暴力を止めるべきだ。われわれは好きなだけ暴力をふるうつもりだが、お前は暴力を止めるべきだ」などと言いながら、非暴力を説くのは、安易なことです。

それはそれとして、勧告は正しいものです。実はそれは、長年にわたってパレスチナの権利のために献身してきた人びとが勧告していることです。先ほど名前を挙げたイクバール・アフマドは40年にわたって……ご存知ですね、彼の来歴は……アルジェリアのレジスタンスで活動し、第三世界の闘争で、非常に鋭い政治的分析と直接参加の両方で長い長い経歴をもっています。アフマドはPLOにとても近く、わたしも含めて本当に多くの人びとがしたように、一貫して非暴力を強く求めてきました。そして実際、非暴力抵抗もたくさん行われてきています。十分ではありません。でもわたしが言ったように、被害者に向かって「行儀良くしてろ」と勧めるのは安易なことです。安直です。正しいとしても、安直です。問題なのは、わたしたちが自分自身のことをどう語るかです。わたしたちには行儀のよい人たちになるつもりがあるのでしょうか。それが重要なことなのです。特にその国が米国である場合、まったく当然ながら国際的に世界平和への最大の脅威であるとみなされ、イスラエル問題の場合には決定的な脅威であるとみなされているからです。

エイミー・グッドマン:ノームさん、ガザにいるパレスチナ人の人権活動家モハメド・スリマンは、イスラエルによる攻撃の間に、『ハフィントン・ポスト』紙にこう書いています。「現実は、もしパレスチナ人が抵抗を止めたとしても、イスラエルは、その政治家たちが繰り返し言明しているように、占領を止めることはない、ということです。ワルシャワのユダヤ人居住区に押し込められたユダヤ人には「尊厳をもって生き、死ぬ」というモットーがありました。わたし自身ゲットーに押し込められて座っていると、パレスチナ人がこの普遍的価値にどのように敬意を払ってきたかを考えます。わたしたちは尊厳をもって生き、尊厳をもって死に、隷属を受け入れることを拒否します。戦争はうんざりです。……でもわたしはもはや、根本的に不正である現状に戻るのを認めることもできません。わたしはもはや、この屋外刑務所で暮らすことを受け入れることができません」。モハメド・スリマンが書いたことについてコメントをお願いします。

ノーム・チョムスキー:ええ、これもまたいくつかのポイントがあります。まず、ワルシャワのユダヤ人居住区についてですが、ヘブライ語報道でワルシャワのユダヤ人居住区の叛乱は正当化されるか否かについて、イスラエル国内で非常に興味深い議論が巻き起こっています。それはある記事が発端で、生存者が書いた記事だと思いますが、その人は多くの詳細を記述しながら、ある種のならず者が関わったその叛乱は、実は、居住区に住んでいたユダヤ人の生存者――ユダヤ人に深刻な危機を及ぼし、彼らに害をもたらしたと発言しました。それに対する反論があり、議論が展開しています。しかし、こういった疑問こそ常に問われるべきことなのです。その行動は犠牲者にとってどのような影響をもたらすのだろうか。ワルシャワのユダヤ人居住区の場合、これは決して些細な質問ではありません。明らかに、ナチスは人類の歴史の中でも極度に残虐かもしれないですし、もちろんユダヤ人居住区の住人や生存者や犠牲者にする同情や支持の気持ちを抱くことは当然です。しかしそれでも方策上の疑問が生じる。議論の余地はありません。そして犠牲者に対し深刻な懸念を抱くのであれば、ここでも常に同じ疑問が問われるのです。

しかし、彼の一般的な論旨は正確であり、基本的に、わたしが前に言わんとしていたことそのものです。イスラエルは、鎮静を求めており、ニコラス・クリストフが要求するような形で、パレスチナ人が行儀よく静かで非暴力であることを求めています。そうしたらイスラエルは次に何を行うでしょうか。推測の必要はありません。これまでイスラエルがやってきたことを行うだけであり、抵抗がなければ単にそれを続けるでしょう。イスラエルがやっていることは、簡単に言うと、欲しいものは何でも略奪し、西岸で価値があるとイスラエルが見なしたものはすべて略奪し、パレスチナ人には実質的に生きていくことができないカントン[西岸でパレスチナ人に残された部分を指す]をあてがい、ほとんど投獄状態を強要しています。オスロ条約の厳粛なる約束を破って西岸をガザから切り離し、ガザに対する包囲攻撃やカロリー制限を継続しながら、ついでにゴラン高原を乗っ取って、明確な安全保障理事会の命令に背いてそれを既に併合しました。さらに、いかなる歴史的規模をも遥かに超える面積にエルサレムを広く拡大し、それを安全保障理事会の命令に違反して併合しました。巨大なインフラ事業は、西岸の快適な丘に住む人々がアラブ人の顔を見ずに数分足らずでテルアビブに行くことを可能にします。米国がイスラエルを支持する限り、イスラエルはこれまでやってきたようにこういったことを今後も継続して行うでしょう。この点が決定的な論点であり、わたしたちが焦点を当てるべき事柄なのです。わたしたちはここ[米国]に住んでいます。わたしたちにはここで出来ることがあります。そして、この場合、これこそが決定的な意味を持つ事柄です。そして、――これが唯一の要素というわけではありませんが、どういう結果を得ることができるかという決定的な要素となります。

エイミー・グッドマン:しかし、米国議会――あなたはアメリカ市民が意見を変えるということをお話しているわけですが――全会一致でイスラエルを支持する決議を通過させた議会がありますね。全会一致ですよ。

ノーム・チョムスキー:そうです、それは――だからこそ我々が組織と行動によって闘わなければならない理由なのです。南アフリカの例をもう一度見てみましょう。議会が制裁措置を通過させ始めたのは、1980年代になってからです。前にも言ったように、レーガンはこれら制裁措置に対し拒否権を発動し、さらに議会がその拒否権を覆して制裁措置を通過させるとそれに違反したわけですが、少なくとも議会は制裁措置法案を通過させました。しかし、それは世界中で巨大な抗議行動が広がってから数十年も後のことです。事実、BDS型の作戦――BDS運動なるものは存在しませんでした――70年代後半にBDS型の作戦は米国内で大衆レベルで実施され始め、80年代になってから非常に盛んになりました。それはこういった大規模な行動がその他の地域で展開されてから何十年も後になってからのことです。そして、最終的にそれは効力を発揮しました。しかし、わたしたちはまだそういうところにまで到達していません。思い出してください――米国議会が南アフリカに対する制裁措置法案を通過させた頃には、政策の決定に最終的な影響力を持つ米国のビジネス界でさえもすでにアパルトヘイトにほとんど背を向けていたということを思い起こすことは重要です。彼らにとってもうその価値はなかったのです。そして、わたしがお話したように、最終的に達成された合意は彼らにとっても許容できるものでした――これがイスラエルの場合と異なる点です。わたしたちは今そういったところにいません。今現在、イスラエルは米国投資受領者の最上位を占めています。例えば、最近ウォーレン・バフェットが購入したのは――イスラエルのどこかの工場のために2、30億ドルを支払いましたが、それは分割払いの一回分で、イスラエルは米国外の投資先として最良の場所であると言いました。インテルが大きな新世代チップ工場をあそこに設立しています。軍事産業はイスラエルと密接な繋がりがあります。こういったことすべては南アフリカの場合とかなり違います。ですからわたしたちは努力しなければなりません。目標を達成するためには大変な努力を必要とするでしょうけれども、やらなければなりません。

エイミー・グッドマン:それでも、ノームさん、イスラエルによる領土占領と南アフリカのアパルトヘイトとの比喩は疑わしいとおっしゃいます。どうしてですか?

ノーム・チョムスキー:理由はたくさんあります。「アパルトヘイト」という言葉を例にとってみましょうか。パレスチナ占領地区では、イスラエルはアパルトヘイトよりずっと悪質なことをやっています。あれをアパルトヘイトと呼ぶのは、イスラエルへの贈り物です。少なくとも「アパルトヘイト」という言葉を使う場合に南アフリカ風のアパルトヘイトを意味するのであれば。パレスチナ占領地区ではもっと酷いことが起きています。決定的な違いがあります。南アフリカ国民党は黒人の住民を必要としていました。彼らにとっての労働力だったのです。[黒人]が全住民の労働力の85%を占めており、それが基本的に彼らの労働力でした。彼らが必要でした。彼らを扶養しなければならなかった。バンツースタン政策は酷いものでしたが、南アフリカは彼らを扶養しようと努力しました。南アフリカは黒人たちにダイエットを強要しませんでした。南アフリカ国民党は、国のために必要な労働を行うために黒人たちの充分な健康を維持しようと努力しました。彼らはバンツースタン制度に対する国際的な支持を得ようとしました。

イスラエル人のパレスチナ占領地区に住むパレスチナ人との関係は完全に違います。イスラエル人はパレスチナ人を必要としていません。イスラエル人はパレスチナ人に出て行ってもらいたい、または少なくとも牢獄に入れたい。そしてイスラエル人はそのように行動しています。それこそが非常に著しい違いであり、アパルトヘイトを比喩に使うこと、南アフリカのアパルトヘイトをパレスチナ占領地区に対する比喩に使うことは、イスラエルの暴力に贈り物を送ることを意味しています。それよりももっと酷い。イスラエル国内を見ると、様々な弾圧や差別があります。わたしは数十年そのことについて広範に詳しく書いてきました。しかし、それはアパルトヘイトではありません。ひどいですが、アパルトヘイトではありません。ですから、この言葉を使うことは適切ではないと考えるわけです。

エイミー・グッドマン:元イスラエル国家安全顧問ギオラ・エイランドに対するあなたのご意見をいただきたいと思います。ニューヨークタイムズ紙に語ったエイランドはこのように言いました。「片方の手では戦いながら、もう一方の手で水や食糧やガスや電気を供給し続けていたら、効力のあるゲリラ組織に勝利することはできません。イスラエルはガサという実質的国家に対する戦争を宣言するべきだったのであり、ガザに苦難と飢餓があるのであれば、相手がそういった困難な意思決定をするようになるかもしれません」。ノーム・チョムスキーさん、この発言に対するご意見がありますか?

ノーム・チョムスキー:それがおおむねイスラエルの上級政治階級内で行われている議論なのです――生存最小限のダイエットでパレスチナ人を生かしておくというドヴ・ワイスグラスの考えに従うべきだろうか、子供たちには決してチョコレートのお菓子は与えないが、朝にチェリオは食べさせてもよいだろうか?どうすべきか?

エイミー・グッドマン:実際のところ、ノームさん、それを説明してくださいますか?先ほどそれについてお話されたときの感じでは――このダイエットは単なる暗喩であるように聞こえたのです。でもこれは実際のダイエットであるとおっしゃった意味を説明してくださいますか?例えば、カロリーの数値についてお話していますね。実際に、子供たちがチョコレートを食べることができるかどうかについて、お話していますね。

ノーム・チョムスキー:イスラエルは――イスラエルの専門家たちは、文字通り、ガザの人々が生存するためには厳格に何カロリーを必要するかということを詳細に計算してきました。そして、イスラエルが強要する制裁を考慮するなら、こういった制限は異様です。本当に、ジョン・ケリーでさえもイスラエルを辛辣に非難しています。残忍です。やっと生き延びるだけのカロリーですよ。そして、もちろん、これには比喩的な部分もあります。なぜならば、ガザの人々が完全には死なない程度の物資がトンネルを通して届くということを意味しているからです。イスラエルは医薬品を制限していますが、ほんの少量の流通は許されなければなりません。わたしが2012年11月の攻撃の直前にガザにいたとき、カーン・ユーニス病院を訪問したのですが、院長が案内してくれて、簡単な医薬品すらないけれども、何らかのものがある、という状況を見せてもらいました。こういったことはあらゆる面で同じようなことが起きています。文字通り、ガザの人々にダイエットを強要するということ。その理由は、――とても簡単で、イスラエルは実際こう言っています。「ガザの人々が死んでしまうとイスラエルの評判が悪くなる。我々が占領軍ではないと主張していようとも、世界中のすべての人々がそれに合意していない。米国ですら合意していない。我々は占領軍である。もし我々が占領下にある人々を全滅させてしまうと、見た目によくない」。今や、米国が国の領土を拡大し、原住の人々をほぼ絶滅させた19世紀ではないのです。ええ、19世紀の帝国的標準によれは、こういったことは問題ではなかったのですがね。現在これがちょっと違うところです。占領している領地に住む人々を絶滅させることはできません。それがハト派であるワイスグラスの立場です。タカ派はエイランドの立場で、あなたが引用していましたね。「奴らを皆殺しにしろ」と。

エイミー・グッドマン:では、誰が最終的に説き伏せるとお考えですか?この停戦の最中にお伺いしているわけですが。

ノーム・チョムスキー:ワイスグラスの立場が優勢になるでしょう。なぜならば、イスラエルは――すでに国際的につまはじきされ始め、国際的に嫌われ者になっているからです。もしイスラエルがエイランドの提言を達成しようとするならば、米国でさえもイスラエルを支持することはできなくなります。

エイミー・グッドマン:興味深いことに、アラブ諸国のほとんどはイスラエルがガザに対して行ったことに強く抗議する発言をしていないのに、南アメリカ諸国の場合は、ブラジルからベネズエラからボリビアに至るまで次々と抗議発言をしています。駐イスラエル大使を呼び戻した国もあります。ボリビアの大統領エヴォ・モラレスはイスラエルのことを「テロリスト国家」と呼んだと思います。南アメリカについて、さらに南アメリカのイスラエルとの関係についてお話してくださいますか。

ノーム・チョムスキー:ええ、アラブ諸国というのは、我が国の味方、アラブ独裁政権を意味することを思い出してください。つまり、我が国の敵であるアラブ圏の人々のことを意味していません。

しかし、あなたが南アメリカについて言ったことは非常に重要です。つい最近まで、南アメリカは裏庭と呼ばれているような存在でした。何でも我々の言うとおりに従っていた。戦略計画では、南アメリカについてほとんど言及されませんでした。なぜならば、南アメリカは我が国の支配下にあったからです。何か我々に気に喰わないことが起きた場合には、軍事独裁政権を配置したり、巨大な大量殺戮を行うか、それを支援するなどで対応します。とにかく基本的に南アメリカは我が国が言う通りに動く。過去10年から15年の間に、それが変りました。そして、それは歴史的変化です。コンキスタドール到来後500年で初めて、南アメリカは帝国支配からの独立に向かう一定の進展を見せており、同時にある程度の統合化を果たしていることは非常に重要です。あなたが今さっき説明した事柄はその顕著な一例です。全世界の中で、わたしが知る限り、南アメリカのわずか数国がこの問題について名誉ある立場を取りました。抗議として、ブラジル、チリ、ペルー、エクアドル、エルサルバドルは大使を呼び戻しました。他の残虐行為に対する反応として、もっと早くから大使を呼び戻したボリビアとベネズエラにこれらの国々が合流しました。これはユニークな出来事です。

そして、これは唯一の例ではありません。非常に著しい例が、1年ほど前にもあったと思います。オープン・ソサエティ・フォーラムが[他国への]囚人特例引き渡しに対する支援について調査を行いました。ご存知のように、囚人特例引き渡しは最も極端な拷問の形態です。何をするかというと、人々、つまり気に入らない人々を捉え、お好みの独裁政権に送り込んでこの人々に対する拷問をさせるわけです。おぞましい。これがCIAの囚人特例引き渡しプログラムでした。誰がこのプログラムに手を貸したかというのがこの調査の内容でした。はい、もちろん、中東の独裁政権がこれに手を貸したわけです――おなじみのシリア、アサド、ムバーラク、その他――つまり、こういった国に人々を送り込んで拷問を行った――カダフィも。彼らはこれに手を貸した。ヨーロッパのほとんどすべてがこのプログラムに参加していました。英国、スウェーデン、その他の国々は、拷問室へ送り込まれた囚人たちがグロテスクな拷問にあうことを許し、それを幇助しました。実際のところ、世界中を見渡してみると、本当に例外はたった一つしかありません。南アメリカ諸国はこれに参加することを拒否しました。とにかく、一つの理由は、これらの国の独立性を示しているということで、これは本当に注目すべきことです。しかし、もう一つの理由は、これらの国々は米国のコントロール下にあった時期には世界の拷問の中心地だったということで、――これはつい最近までのことであり、ほんの二、三十年前のことだったという点です。これは本格的な変化です。

そして今では、半球規模の国際会議では米国とカナダは孤立しています。前回の主要な半球規模の国際会議では、半球の他の国々に米国とカナダが合意しなかったため、主要な問題に関して総意に基づく決定に到達できませんでした。主要な問題とは、キューバを半球規模の国際システムにキューバを入れることと薬物の非犯罪化へ向かうステップでした。これは南アメリカにとって極端な負担です。問題は米国にあります。南アメリカ諸国は、右翼の国でさえも、このような負担から逃れたいと考えています。米国とカナダはこれに応じませんでした。このような事柄は、世界事情における非常に重要な変化です。

エイミー・グッドマン:ここで、チャーリー・ローズによるハマースのリーダー、ハーリド・マシャアルとのインタビューをご紹介したいと思います。

――ハーリド・マシャアル:[翻訳]これは前提条件ではありません。生命は前提条件ではありません。生命はパレスチナに住む我が国民にとって権利のひとつです。2006年以降、世界が私たちの選挙の結果を拒否してから、我が国の国民は実質的に8年間もの間、包囲攻撃を受けながら生きてきました。これは集団的処罰です。私たちはこの包囲攻撃を解除する必要があります。私たちは港を必要としています。私たちは空港を必要としています。これが第一のメッセージです。

二番目のメッセージがあります。流血を止めるために、根本的な原因を検討する必要があります。占領について注目する必要があります。占領を止めなければなりません。ネタニヤフは我々の権利を重んじません。そして、数ヶ月前にケリー氏は、占領のない生活と我々の国を実現するという私たちの目標を達成するために、交渉を通して何らかの手段を探そうと努力しました。ネタニヤフは私たちの希望を殺し、私たちの夢を殺し、米国の構想を殺しました。

エイミー・グッドマン:これはハマースのリーダー、ハーリド・マシャアルの言葉です。残り最後の二、三分の間に、ノーム・チョムスキーさん、ハマースの要求について、そして今ハーリド・マシャアルが言ったことについてお話してください。

ノーム・チョムスキー:そうですね、彼は基本的にこれまで長い間彼やイスマーイール・ハニーヤやその他のハマースのスポークスパースンが言ってきたことを繰り返して話していましたね。実際のところ、ハマースが結成された1988年に戻っても、ハマースが機能する組織になる以前でさえも、――イスラエルに暗殺された――シェイク・ヤースィーンやその他のハマースの指導者たちは、調停案を提示しましたが、それらは却下されました。そしてその状況は今でもほとんど変りません。今や、それは非常にあからさまです。かなりの労力を費やしてもこれを見逃すことは困難でしょう。ワシントンポスト紙を読めばわかります。ハマースの提案とはこういうことです。ハマースは二国家解決に関する国際的総意を受け入れています。ハマースは「はい、国際的国境における二国家解決を実行しましょう」と言っています。ハマースは「イスラエルを認識します」とまでは言いませんが、「はい、二国家解決を実行して長期の、例えば50年間の、停戦協定を結びましょう。その後でどうするか考えましょう」と言っているのです。ええ、それがずっとハマースの提案なのです。これはイスラエルのどのような提案よりもずっと前向きです。しかし、ここではこういったことは示されていません。読んでみると、ハマースが興味を示しているのはイスラエルの破壊だけであるかのように書いてある。聞こえてくるのは、ボブ・シーファーが繰り返すような、最も下品なイスラエルのプロパガンダばかりです。しかし、これがずっとハマースの立場なのです。ハマースが良い人たちだというわけではないですよ――例えば、私がハマースに投票することはありえません――それでも、これはハマースが取ってきた立場なのです。

エイミー・グッドマン:現在、ガザの損害は60億ドルです。約1900人のパレスチナ人が死亡し、現時点ではすべての瓦礫が掘り出されていないので、実際にはその数は不明です。避難民は50万人。18万人におよぶ人々が学校や避難所に身を寄せている。そして学校では二、三週間のうちに新学期が始まるはずなのに、パレスチナの人々がこういった学校や臨時の避難所で暮らしていることは、学校にとってどういうことを意味するのでしょうか。今、エジプトでの交渉が行われている間、現場ではどういう現実が展開しているのでしょうか。

ノーム・チョムスキー:ええ、もう何年間も使われてきたスローガンのようなものがあります。イスラエルは破壊し、ガザの人々は再建し、ヨーロッパは金を払う。多分そういったような感じで、それは――次の「芝刈り」があるまで続くわけです。そしてそれは――米国の政策が変わらない限り、最も可能性が高い状況とは、イスラエルがこれまで実行してきた政策を継続するということです。イスラエルの立場からすれば、彼らがこのような政策を止める理由はまったくない。そしてこれが私の言ってきたことです。イスラエルは西岸から欲しい領土を奪い、イスラエルに統合し、そこに住むパレスチナ人には役に立たないカントンを残し、それをガザから隔離し、ガザには包囲攻撃の下でダイエットを強要する――そして、勿論、西ゴラン高原をコントロールしてそれを管理し――さらにより大きなイスラエルの開発を試みる。ところで、これは国家安全の理由ではありません。これは、イスラエルの指導陣によって数十年もの間理解されてきたことです。多分1970年頃に遡って、エゼル・ヴァイツマン、後の将軍、空軍の将軍、その後に大統領になった人ですが、彼はガザ占領地を乗っ取ることで我が国の国家安全の状況は改善されない――実際のところ、悪化させるだろう――と正確な指摘をしていますが、同時に、彼は、占領により現在イスラエルが享受している生活の規模や質を確保できると発言しました。つまり、イスラエルは豊かで強力で拡大主義の国になることができる、ということです。

エイミー・グッドマン:しかし、ハマースの憲章にはイスラエル破壊を呼びかける内容がある、ということを繰り返し耳にします。そして、どうしたらイスラエルの人々を脅かす何千ものロケット弾を止めるという保証ができるでしょうか。

ノーム・チョムスキー:とても簡単です。まず、ハマースの憲章は実際には何の意味もありません。それに注意を払っているのは、そうことが大好きなイスラエルのプロパガンダ専門家だけです。言及されているのは、1988年の攻撃、包囲攻撃を受けている人々の小さな集団によってまとめられたものです。それは原則的に無意味です。何らかの意味を持つ憲章がいくつかあるのですが、それについては話題になりません。例えば、イスラエル政府与党、リクード党の選挙プログラムには、ヨルダン河の西にはパレスチナ国家は決して存在することはできないと明確に主張しています。リクード党は単にそれを憲章の中に含めているだけではなく――それはパレスチナの破壊を呼びかけるものであり、あからさまな呼びかけです――、リクード党はこの呼びかけを彼らの憲章、彼らの選挙プログラムに入れているだけでなく、彼らはそれを実行しているのです。それはハマースの憲章とはかなり異なるものです。

原文
August 08, 2014
Noam Chomsky: Israel’s Actions in Palestine are “Much Worse Than Apartheid” in South Africa