TUP BULLETIN

速報963号 イラクのファッルージャから

投稿日 2013年2月26日
10年前は偏執的で抑圧的なフセイン政権。今は新イラクだというのに……




オーストラリア人女性ドナ・マルハーンは、2003年の春にはイラクで「人間の盾」に参加した。04年春にはイラクで米軍包囲下のファッルージャに入り、その帰路地元レジスタンスによる拘束を経験し、つぶさにその報告をしてくれた。04年冬から05年春にかけてはイラク・パレスチナ「巡礼の旅」を伝えてきた。05年8月には、シンディ・シーハンのキャンプ・ケーシーに駆けつけ、アメリカからの報告は、ほとんど実況中継だった。05年12月にはオーストラリアがイラク戦争に最も貢献してきたパイン・ギャップ秘密基地に侵入し、「市民査察」を強行して逮捕されたが、08年2月に無罪判決を勝ち取った。09年末から10年初頭には、イスラエルによる包囲封鎖に苦しむパレスチナ・ガザ地区に入って援助を届け、現地から報告してきた。10年2月に、『普通の勇気―わが旅、人間の盾としてバグダードへ』を出版した。11年3月に、アフガニスタンのカーブルに向かい、地元の「青年平和ボランティア」と共に行動した。12年7月に4度目のイラク訪問を敢行し、劣化ウラン弾などの有毒兵器の被害に苦しむファッルージャの女性や子供の現地調査を終え、無事帰国した。

ドナは現在、イラクにいます。映画監督のデービッド・ブラッドベリと共にイラク国内を巡り、有毒兵器の被害を現地調査し、その過程をドキュメント映画に仕上げようとしています。イラク現地からの最初の報告です。

(翻訳:福永克紀/TUP)

イラクのファッルージャから
ドナ・マルハーン
2013年2月17日

お友達の皆さんへ

ファッルージャからこんにちは、イラクからです!

もうイラクの地を踏んでから2週間になりますので、ちょっと速報を送って連絡を取っておきたいと思っていました。

良い知らせは映画監督のデービッド・ブラッドベリと同行していることです。今回の旅が可能になったのは、友人でもある活動家が気前よく寄付してくれたおかげであり、この旅の話すべてが、偉大な映画監督の手でドキュメンタリー化される予定です――再びここでネビルに感謝を捧げます!

デービッドと私はイラク南部のバスラに飛行機で到着すると、早速近年の戦争がもたらした汚染問題を調査し始めました。すなわち1991年と2003年にバスラで米軍によって広範に使われた劣化ウランを含む兵器による汚染です。それは気の重い訪問でした。職を求める人々が地方から家族ぐるみで続々と町にやってくるうちにここ数年でスラム街が生まれ、町は劣悪な条件下にあります。環境は極端に汚染されていますが、それは戦争の遺物と、大規模な石油・ガス産業との両方に起因します。地域社会での癌や先天的肢体障碍児の発生率はいまだに非常に高く、環境汚染の除去は遅々として進んでいません。戦争に疲弊したこの町を修復すべく行なわれなければならないことは、まだまだいっぱい残っています。私たちはたくさんの医者、科学者、活動家と話をしました、そしてその驚くべき話は近いうちに報告します。

次に私たちは聖都ナジャフに向かい、そこで驚くほど素晴らしい人たち、ムスリム・ピースメーカー・チームの面々とその代表者サーミー・ラスーリーの歓待を受けました。ここでは、大学の先生方や地域の指導者の方々をインタビューしただけではなく、この歴史的聖地の比類なき文化を吸収する機会に恵まれ、世界最大規模の共同墓地を訪問し、古代バビロンの遺跡をさまよい歩きました。でもとりわけ良かったのは、ひたむきに平和の実現を目指すこのピースメーカー・チームの仲間による元気づけられる仕事の話を聞けたことです。このイラク人たちは、他の人たち多くも同じなのですが、イラクにおけるいわゆる「党派間暴力」という作り話を絶えず払いのけ、スンナ派もシーア派も、クルド人もキリスト教徒もサービア教徒も共に手を取り合い、癒しと触発のために共に働いています。この話をもっと皆さんにできる日が待ち遠しくてたまりません!

ナジャフからラマーディー経由でファッルージャまで旅をして、ファッルージャ総合病院で古い友人たちと再会を果たし、現在そこに滞在しています。イラクのニュースに注目してこられた方ならご存知でしょうが、ファッルージャの町が率先して毎週金曜日に大規模な反政府デモを展開していて、目下ファッルージャがイラク政治の中心となっています。引き続き、ご注目を……

この新イラクでの私たちの旅は、楽なものではありませんでした。始終イラク警察や軍隊に止められ、検問所で留め置かれ、尋問を受けました。もし機転がきくイラク人の友人たちがいなければ、15カ所ほどの検問所を通過してファッルージャに到着するすべはなかったでしょう。

昨日は、ファッルージャを目指していたCNNのチームが、軍の道路閉鎖のためにバグダードに戻らざるを得ませんでした。イラクの人々は、バグダードで予定されたデモに参加するためにバグダードに向かうのを阻止されました。ジャーナリストの人たちも逮捕されています(あるフランスのジャーナリストは、水処理場の写真を撮ったために3週間投獄されました)。

報道の自由、移動の自由、言論の自由が欠落しているという意味では、この新イラクは旧イラクと非常によく似てきていると思われます……こんなに長く被害をこうむってきたイラクの人々は、もっとましな状況を享受すべきです。

当地で「民主主義」という言葉が使われると、人権の侵害や、治安問題や、基本的行政サービス問題などに日ごと苦闘しているイラク人は、いつもお腹を抱えて笑うしかありません。

アメリカ・イギリス・オーストラリアのイラク侵略と占領の遺物であるこの悲しいニュースをお伝えするのは、世界中の1500万人が戦争反対の民意を大規模に噴出させた週末のちょうど10年後にあたります。その日は、私たちが自分自身の声を共に張り上げた日で、その声を無視した政府もいくつかありましたが、それでもなお私たちの異議を表明し、それを歴史に刻んでおくことが重要でした。

私の友人が、オーストラリアで戦争に反対して行進した人々に捧げるすばらしい短編ビデオを作成しました。ちょっとご覧ください。あなたが映っているかもしれません! ビデオのリンクは以下です。

こういった意見や解説も楽しめるかもしれません。
http://www.theweek.co.uk/world-news/51511/lest-we-forget-anti-iraq-war-protesters-were-right#ixzz2KxlOVNUq
http://www.countercurrents.org/ferner120213.htm
http://www.theage.com.au/opinion/politics/for-democracys-sake-lets-talk-about-our-war-in-iraq-20130213-2ed6y.html

これまでの旅の多彩な写真をいくつか私のフェイスブックのページに投稿してありますので、どうかページを開いて写真を見てください。
http://www.facebook.com/donna.mulhearn?ref=tn_tnmn

追加の感想をまた書き送りたいと思っています――デービッドと私は、この警察国家では外国人ジャーナリストとしての私たちの危険な立場はよくわかっていますが、それはなんと皮肉なことでしょう――10年前は、偏執的で抑圧的なフセイン政権でした、今は新イラクの政府だというのに……

皆さんの巡礼者
ドナより

追伸:ツイッターの@donnamulhearnで私をフォローすることもできます。

追追伸:グラビア誌を読むのを好まれる方々、今月の『マリ・クレール』誌を買ってみてください。彼らから、大規模デモ10周年に関する記事を書いてくれと依頼があったのです――よくやってくれました!

追追追伸:添付の写真は、新イラクでシュロの木々が、どんなふうに戦争と石油・ガス産業の廃棄物に土地を明け渡しているかを示しています。
画像:シュロの木々を絶やしていく石油・ガス産業の廃棄物

追追追追伸:「任務完了、とジョージ・W・ブッシュは宣言した。だが、その任務とは一体何だったのかね」――ラマーディー大学のH教授は尋ねる

原文:From Fallujah, Iraq
URL: http://groups.yahoo.com/group/ThePilgrim/message/265