TUP BULLETIN

速報968号 ブラッドリー(チェルシー)・マニング:自由な社会で生きるためには

投稿日 2013年9月1日
戦争の実態を明かす機密情報を公開して35年の刑を受けた米軍兵士の声明




米軍兵士ブラッドリー(現在は女性としてのアイデンティティを公表しチェルシー)・マニングは、2010年、ウィキリークスを通じて、米軍によるイラク民間人銃撃ビデオ、イラクおよびアフガニスタンでの米軍戦場報告、さらに米国務省外交公電などの機密情報を公開したことで逮捕され、軍事法廷で裁判にかけられていましたが、8月21日、禁固35年の判決を受けました。35年という刑期は、過去の内部告発者と比べて非常に長く、また、イラクで非武装の民間人を殺害した米軍兵士やアブグレイブ収容所で捕虜を虐待した米軍兵士に対する刑よりも長いものです。マニングは、国連人権調査官が非人間的と指摘した、隔離された状況で長く拘置されてきましたが、拘置年数を差し引いても、仮釈放が認められるのは約7年後です。オバマ大統領は、マニングの裁判開始よりも前に、マニングを有罪とする発言をしていたことが指摘されています。今後、刑期の長さと正当な法的手続きが行われたかを争点に、控訴審が行われます。以下は、判決後マニングが、大統領恩赦願いのために発表した声明です。マニングは、機密情報を公開した理由として、情報は「公の共有財産に属するものであり……情報は自由であるべきだ……[私]は皆に真実を見てもらいたい、なぜならば情報がなければ市民として道理にかなった意思決定ができないからだ」と述べていました(『ウィキリークスの時代』)。マニングは情報を知り得た者としての責任を、多大な代償を払って、果たしてくれました。私たちも、戦争に反対する声を上げ、責任を果たさなければと思います。(翻訳:荒井雅子/TUP)
[ ]は訳者による補足

ブラッドリー(チェルシー)・マニング

2010年に私があのような決断をしたのは、自分の祖国に対して、また自分たちが生きている世界に対して懸念を抱いたからです。同時多発テロという悲劇的な出来事以来、米国は戦争状態にあります。米国が戦争をしている敵は、従来のどんな戦場とも違うところで米国に立ち向かうことを選んでおり、このため米国は、自分たちとその生き方に突きつけられた危険と戦う方法を変えざるを得ませんでした。

私は当初、こうした戦い方に賛同し、祖国の防衛に貢献するため志願しました。イラクに派遣されて軍の秘密報告を日常的に読むようになって初めて、私は米国がしていることの倫理性に疑問を持つようになりました。敵が突きつける危険と戦う努力のなかで、米国は自らの人間性をなおざりにしてきたと、そのとき気づいたのです。米国は、イラクでもアフガニスタンでも、人の命の価値を意識的に軽んじることを選択しました。敵とみなす人びとと交戦する際に、無辜の市民を殺害したことがありました。無辜の市民を殺害するたびに、米国は自らの行為に対する責任を引き受ける代わりに、国家の安全保障と機密情報というベールの陰に隠れて、国民に対する一切の説明責任から逃れようとしました。

敵を殺害することに躍起となるあまり、米国は内部で拷問の定義を見直しました。正当な手続きをとることなく、人びとをグアンタナモで何年も拘束しました。イラク政府が行った拷問や処刑に、なぜか目をつぶりました。そして米国によるテロとの戦いの名の下に、他にも数え切れないほどの行為を容認しました。

権力の座にある者が倫理的に疑問のある行為を擁護するとき、しばしば愛国主義が叫ばれ、賞賛されます。そうした愛国主義が叫ばれて、論理に基づくどのような異議をもかき消してしまうとき、何らかの不適切な任務を実行するよう命令を受けるのは、ふつうは米軍兵士なのです。

米国には、民主主義に照らして、似たような暗い過去がありました――「涙の道」[19世紀に行われた先住民の強制移住]、「ドレッド・スコット判決」[1857年、奴隷を人ではなく財産とみなした判決]、マッカーシズム[1950年代に行われた共産党員の糾弾]、日系米国人収容所などはその一部にすぎません。同時多発テロ以後の行動の多くがいつか同様な見方をされることは間違いないと私は思っています。

今は亡きハワード・ジン[歴史家、主著は『民衆のアメリカ史』]が言ったとおりです。「無辜の人びとを殺害するという恥ずべき行いを覆い隠せるほど大きな旗はない」

自分の行動が法律を犯したことを私は理解しています。私の行為が誰かを傷つけたり、合衆国に害を及ぼしたりしたのであれば、申し訳なく思います。誰かを傷つけるつもりはまったくありませんでした。私はただ、人の役に立ちたいと考えていました。機密情報を公開することを選んだのは、祖国を大切に思う気持ちと、これが他の人に対する自分の務めだという思いからでした。

恩赦の願いが却下されるなら、私は刑期をつとめます。自由な社会で生きるためには重い代償を支払わなければならない場合があることを知っています。私は喜んで代償を払うつもりです。それで私たちが、真に自由という理念に打ち建てられ、すべての女性と男性が平等に創られたという命題に取り組む国を手に入れることができるようになるならば。

原文の書き起こしはDemocracy Now! より:
http://www.democracynow.org/blog/2013/8/21/bradley_manning_sometimes_you_have_to_pay_a_heavy_price_to_live_in_a_free_society

○マニングの支援サイトが以下にあります(英語)。
http://www.bradleymanning.org/
現在、アムネスティインターナショナルとともに、マニングの恩赦請願署名運動が行われています(英語)。
http://pardon.bradleymanning.org/