TUP BULLETIN

速報179号 「平和を求める退役軍人の会」の二つの平和決議 03年9月28日

投稿日 2003年9月28日

ワシントンの「スミソニアン航空宇宙博物館」で1995年に企画された原爆展が中止に追い込まれたのは、退役軍人協会の反対によるところが大きかったと記憶している。しかし、アメリカの退役軍人の中にも反戦グループ「平和を求める退役軍人の会(Veterans for Peace)」が存在する。

8月に行われたその全国大会では、イラク占領反対、米軍撤退、戦争から社会福祉への予算転換、パトリオット法(愛国者法)廃棄をもとめ、10月25日ワシントンで行われる国際連帯大行進に賛同する決議を採択した。また、朝鮮半島の緊張を平和的に解決するために、米朝間で平和協定を結べと訴えてもいる。

これらの決議の発起人の中には、あの第9条の会の創始者のひとりで、パイロットとして朝鮮戦争に従軍したチャック・オーバービー氏も入っている。

ほかに、バーバラ・リー議員へのエール決議もあるが、ここでは前二つの決議を翻訳、紹介する。

寺尾光身(TUPメンバー)

「平和を求める退役軍人の会」の二つの平和決議

平和を求める退役軍人の会
10月25日行動賛同決議

2003年8月9日採択
カリフォルニア州サンフランシスコ

– 米軍を直ちに本国に撤退させよ
– イラク占領を終結せよ
– 資金を人間のニーズのために使い、戦争には使うな
– パトリオット法を廃止せよ

イラクの人びとはアメリカによる占領の終結を望み、在イラク米軍兵士は帰国を
望んでいる。われわれは問いたい、この戦争で利益を得ているのは誰か、その代
価を払っているのは誰なのか、と。

そして、毎日人びとが、この不法な占領の結果死んでいる。日々、世界帝国と企
業のグローバリゼーションへの流れの中で、人間の不幸が拡大している。ブッ
シュ政権が冷笑を浮かべながら「テロとの闘い」という大義を利用して貧しい者
から裕福な者へと富を移行する中、労働者は職を失い、彼らを支え、守るために
不可欠な社会保障は不当に奪い去られ、破壊され続けている。

そして、ブッシュ政権は、イラクへの戦争の実現に向けひた走る中で、国民に、
議会に、そして国連に嘘をついたのだ。今や数万のイラク人と数百の米兵が殺さ
れ、不具にされてしまった。ラムズフェルドの計算でさえ5月1日以降米軍への攻
撃は1000回を越えている。イラクの人びとの怒りが膨れ上がるのは当然であり、
それにつれてイラク・アメリカ双方の死者数はうなぎ登りに増加するに違いない。

そして、反戦運動家たちが予言したように、イラクの人びとは米軍を植民地占領
軍と見なし、解放軍などとは思っていない。ジョージ・W・ブッシュの取り巻き
の核心をなす石油独占企業と大企業エリートの利益にしかならない戦争で、米兵
たちは殺し、殺されているのである。その一方、米兵とその家族たちは、大半が
企業の役員を兼任する百万長者の政府高官たちが、イラクの豊かな原油を略奪す
るための私的保安派遣隊として、米軍を利用していることに気づきはじめている。

そして、ペンタゴンは“予見し得る将来にわたって”15万の兵士をイラクに駐留
させるとしており、この経費月間約40億ドルは、他の130ヶ国にある米軍基地の
維持経費に上乗せされることになる。このように急速な軍事力の増強と軍派遣の
拡大は、現在米国内で公民権、労働組合の諸権利やさまざまな給付金(退役軍人
対象のものを含む)、そして一般労働者の生活水準に対する、前例のない攻撃と
密接に結びついているのである。

そして、量の人種差別的公権剥奪と不正投票によって権力の座に着いたに過ぎな
いブッシュ政権は、彼らの“終りなき戦争”を口実に使って、権利章典に対する大
規模な攻撃を公然と行い、人種による選別を制度化し、大統領府に多大なる権限
を与え、パトリオット法のごとき抑圧的な法律を新たに成立させた。

そして、来たる2003年10月25日、反戦、公民権、社会正義および労働運動が、ま
すます増える軍関係者家族と退役軍人や他国からの代表団と一緒になって、アメ
リカによるイラクに対する戦争と占領の即時停止、パトリオット法の廃止、人間
のニーズへの資金投入と戦争への支出反対を要求してワシントンで行進する。

よって、平和を求める退役軍人の会は、2003年8月9日の年次大会において、以下
決議する。
要求:
1) イラクに対する米英の戦争と占領の即時停止 – 軍隊を直ちに自国に撤退させよ
2) パトリオット法および他の抑圧的諸法の廃止
3) 国家的優先課題を、我われ民衆のニーズを重視するよう変更すること。我わ
れに必要なのは職と真の安全保障であって、軍国主義や帝国建設ではない。

加えて、次の通り決議する。
平和を求める退役軍人の会は、「軍隊を直ちに自国に撤退させよ」、「イラク占
領を終結せよ」、「パトリオット法を廃止せよ」、「資金を人間のニーズのため
に使い、戦争と帝国には使うな」、との横断幕の先導の下に行われる2003年10月
25日のワシントン国際行進に賛同する。


朝鮮平和キャンペーン

2003年8月9日採択
カリフォルニア州サンフランシスコ

今年は、朝鮮戦争の凄惨な戦闘を停止した朝鮮休戦協定の締結50周年であるので、

休戦協定の根幹を揺るがしかねないブッシュ政権の向こう見ずな政策によって、
朝鮮戦争が息を吹き返す危険が増大しているので、

韓国と北朝鮮(朝鮮民主主義人民共和国)の政府と国民が、2000年6月に行われた
二人の指導者による歴史的な首脳会談以来、相互交流と協力関係を通して分断さ
れた国の平和的統一を推進しようとしているので、

約37,000の米軍の韓国駐留継続が、軍事的緊張、軍備競争、犯罪、数十億ドルも
の税金の無駄遣い、そして両国民の自己決定の障害となっているので、

北朝鮮が不可侵条約あるいは平和条約の締結によって朝鮮戦争を正式に終結し、
アメリカ合州国(下に訳註)との関係を正常化したいという意志を表明しているので、

よって、本日2003年8月9日、平和を求める退役軍人の会は、カリフォルニア州サ
ンフランシスコで開かれた全国大会において、

外国の干渉を受けることなく自身の主導によって朝鮮の自主的平和的統一を達成
するための正当な努力を続ける韓国、北朝鮮の両国民に対して、心からの支持と
連帯の挨拶を送るものであり、

ブッシュ政権に対し、北朝鮮に対する“ミニ核兵器”の初使用を含めた先制攻撃の
脅しとともに、韓国でのあらゆる軍備増強をやめるよう要求し、

合州国政府に対し、北朝鮮との直接交渉により、安定的とは言えない休戦協定を
恒久的な和平調停に替えることによって朝鮮戦争を終結して、最終的に韓国から
米軍兵士を本国に引揚げることを要求し、また

合州国議会には、アメリカの戦争犯罪、すなわち1945年以来朝鮮半島で犯した人
道に対する罪を調査し、朝鮮人犠牲者への適正な賠償を勧告するための、朝鮮に
関する独立委員会を設置することを要求する。


訳註:「United States」のこれまでの慣用訳は「合衆国」だが、英語の原意からは「合州国」が正しいと思われる。本多勝一氏、小田実氏らが使っているが、賛同者が増えており、最近はよく見かけるようになってきた。

翻訳:寺尾光身(TUPメンバー)

原文:
http://www.veteransforpeace.org/resolutions_2003.htm