TUP BULLETIN

速報183号 03年10月7日 星川 淳のピースウォッチ#1

投稿日 2003年10月7日

FROM: Schu Sugawara
DATE: 2003年10月7日(火) 午後9時44分

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 星川 淳のピースウォッチ #1(03.10.07) ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

代表的な独立系サイトの一つ CommonDreams.org の最新記事タイトル “So Many Scandals. So Little Time” (スキャンダル多すぎ、時間なさすぎ) http://www.commondreams.org/views03/1003-10.htm のとおり、イラク情勢やブッシュ政権の窮地など、事態の展開に翻訳が追いつか ないので、ダイジェスト紹介を試みてみます。

(星川 淳/TUPメンバー) ――――――――――――――――――――――――――――――――――――

★『金で買えるアメリカ民主主義』の著者グレッグ・パラストが、カリフォルニ ア州知事リコール選挙を取り上げて、シュワルツネッガー擁立の背後には同州電 力危機で税金泥棒を働いた不正企業エンロンがついており、いっぽうデービス+ ブスタマンテ現知事・副知事コンビは、エンロンその他の電力会社がかっさらっ た90億ドルを返却させる訴訟中と暴露。デービス知事リコールの主な名目は8 0億ドルの州財政赤字ですから、裏はかなりクサそう! シュワちゃん知事が誕 生すれば、エンロン訴訟は立ち消えになる運びでしょう。

Arnold Unplugged – It’s hasta la vista to $9 billion if the Governator is selected By Greg Palast October 3, 2003 http://www.gregpalast.com/detail.cfm?artid=282&row=1

★一難去ってまた一難――イラクによるニジェール・ウラン密輸疑惑のウソをすっ ぱ抜いたジョセフ・ウィルソン元大使への報復として、ブッシュ政権高官がウィ ルソンの妻をCIA工作員とリークした問題は、政権中枢を揺るがしはじめまし た。アシュクロフト司法長官が、リーク源と取り沙汰される政権最大の黒幕であ りブッシュの選挙参謀でもあるカール・ローブと近すぎるため、司法省の捜査で はなく、クリントンのモニカ事件のときのように独立検察官を立てる必要ありと の声が高まっています。ついにコンヤーズ下院議員から、独立検察官任命は法律 に定められた義務との指摘。

Outing a CIA Operative? Rules Call for Special Counsel By Congressman John Conyers Jr October 3, 2003 http://www.truthout.org/docs_03/100603D.shtml

この問題は、ウィルソンの妻ヴァレリー・プレームが一般人としての入念な偽 装のもとで国際的な大量破壊兵器拡散防止の秘密工作にたずさわる危険かつ重要 な立場にあったこと、彼女の属する工作員ネットワーク全体が瓦解し、各自が生 死のリスクにさらされること、秘密工作員の身元暴露は重罪になることがあいまっ て、「現政権は自己保身のためなら法律も安全保障も踏みにじるのか!」という、 これまでになく強い反感を生んでいます。英語圏のネットは関連記事の洪水!

★第二次大戦中、米軍は4年近くかけて1万人を超える日本語能力保有者を養成 し、太平洋での戦闘はもちろん、日本の敗戦と占領に備えました。その人びとが、 戦後日米関係の架け橋ともなったのです。それに比べると、ブッシュ政権はイラ ク侵攻に向けて何の用意もしなかったに等しく、イラク占領米軍にアラビア語を 話せる兵士もイラク系アメリカ人も数えるほどしかいません。対日戦線と日本占 領に日本語通訳兵としてかかわった経験から、対イラク開戦に備えたアラビア語 特訓の必要をペンタゴンに訴えて聞き入れられなかった政治学者が、イラク情勢 泥沼化の一因であるコミュニケーション不全の問題を鋭く突きます。ネオコンの 掲げる「中東民主化」が空念仏であることは、こんなところからも明らかです。

Lost in Translation During WWII, the U.S. taught Japanese to thousands. Why wasn’t a similar program put in place for Iraq? By Frank Gibney September 28, 2003 http://www.latimes.com/news/printedition/suncommentary/la-op-gibney28sep28,1,1232940.story?coll=la-headlines-suncomment

★ハリバートンやベクテルをはじめ、ブッシュ政権縁故企業への独占発注が問題 視されるイラク復興で、予算不足に悩む占領当局は、イラク経済の投げ売り的民 営化を急ごうとしています。外資によるイラク企業保有奨励、関税の事実上廃止 (大英帝国支配時と同じ5%?)といった荒療治は、物価高騰、失業増加、法体 系不在によるさらなる無法化など、ソ連崩壊時のロシア経済混乱を上まわる惨事 を引き起こす可能性が懸念されます。イラク人によるイラク政府が成立する前に、 イラクをグローバル資本の草刈場にしてしまうことが許されるのでしょうか?

Say no to privatisation Leader September 23, 2003 http://www.guardian.co.uk/Iraq/Story/0,2763,1047638,00.html

★ワシントンに駐在するフランス企業の幹部が、ペンタゴンからイラク関連契約 をまわさないと門前払いされ、厳しい叱責を予想して本社にこわごわ電話したと ころ、大西洋のむこうの社長は大笑い――「心配するな、1〜2年待てばアメリ カ企業こそイラクで仕事ができなくなるさ」と答えたとか。これがアメリカ以外 の世界の視線。対イラク開戦前、ワシントンでは亡命イラク人でもネオコンの息 がかかった人間しか政府と接触を許されず、イギリスのブレア政権もその異常ぶ りに気づかなかったそうです。最近イラク入りしたイラク人によると、イラク国 民から隔離されて米国人有力者たちがたむろする高級レストランでは、何を血迷っ たかウェイターにインド人のターバンをさせているとのこと。何をか言わんや!

A Failure of Historic Proportions The Iraq Wreck By PATRICK COCKBURN September 16, 2003 http://www.counterpunch.org/cockburn09162003.html

★6か月イラク戦線に従軍した米兵ティム・プレドモアが、復員直前、英ガーディ アン紙に勇気ある真情吐露を行ないました。「イラクの自由作戦」が謳った“衝 撃と畏怖”は、自分の心の奥底で鳴り響いている。米英は他国に従えと求めるルー ルをみずから破った。戦争は第一発目から欺瞞だらけ。米兵捕虜の映像を流した アラブメディアには報復しながら、フセインの息子二人の死体映像を世界に流す 破廉恥さ。不発弾で大怪我をした子どもを母親が米軍キャンプに連れていっても、 一時間待たせたあげく追い払うのでは、何が解放か、人道支援か。自分は残虐行 為を直接目撃しなかったけれど、イラク戦争そのものが究極の残虐行為だ、と。

We are facing death in Iraq for no reason A serving US soldier calls for the end of an occupation based on lies Tim Predmore September 19, 2003 http://www.guardian.co.uk/comment/story/0,3604,1045297,00.html [日本語全訳] http://www.jca.apc.org/~kmasuoka/ →「イラク・米軍兵士の異論」をクリック

(要約解説:星川 淳/TUPメンバー)