TUP BULLETIN

速報229号 日本人外交官の死について 03年12月6日

投稿日 2003年12月6日

FROM: Schu Sugawara
DATE: 2003年12月6日(土) 午後10時13分

★私の意見★ 日本人外交官の死について 03年12月1日記 ———————————————————————

11月30日、イラク各地で一斉に各国の派遣要員が攻撃されました。  日本では外交官2名の死亡が大きく取り上げられていますが、スペイン、韓国、米国 の犠牲もあったことを合わせて考えなければなりません。  これがイラクの攻撃者から見たら「イラク解放戦争」であることは間違いないし、米 国メディアもようやく使い始めた(のに日本は使わない)レジスタンスでもあるので す。日本の外交官が、それらの攻撃の標的とされたことは、日本もまたイラク解放の敵 であるとされたことが明確になったことに他なりません。  日本が今のところイラク戦争に直接参戦していない段階では、イラクの敵になる必要 は無かったのに。二人の外交官も殺されることは無かったのに、なぜそうなったのか。 深く掘り下げる議論はまだあまりメディアにはありません。今後はそういう視点で報道 をしてほしいと切に願います。  私が12月1日、つまり事件報道の翌日に、その段階の情報を元に書いた文書を掲載 します。見直しや手直しなどはしていません。表現や構成はそのときの感情のままに なっています。 山崎 久隆 TUPメンバー

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あまりのことでちょっと尋常な気持ではありませんので、文章はだいぶ乱れているこ とでしょう。「日本の外交官が殺された」ことのみならず、いったい誰に殺されたのか ということが、ほとんどまともに論じられていないことに・・・。小泉純一郎、あんた が殺したんだ。(この断り書きは最後に書いたものです)

亡くなったお二人に心から哀悼の意を表します。そして、二人ともさぞや悔しかった ことだろうとお察しします。即死しなかったと思われる奥審議官の亡くなる直前の言葉 があったとしたら、なんと言ったのだろうと・・・。

浅井さんの全く同感の文書を読んでいて、いったいこの国は外交官をなんだと思って いるのかと腹立たしくてしかたがありません。ろくな安全対策も取っていなかったこと が容易に分かります。ティクリットといえばイラクで今もっとも危険な場所。そんなと ころでイラク占領の象徴である暫定行政機構がなんで会議など開くのか。いわば挑発そ のもの。そんな会議にわざわざ危険を冒して政府は出席させたのか。しかも護衛もつけ ずに陸路で。今や日本は米国とともにイラク占領に荷担をした「敵」であると名指しさ れているというのに。これっぽっちも危機感もなければ現場の苦労も知らない連中が霞 ケ関で荒唐無稽の戦略を練っているとき、現場では何の対策もないままに政府職員が戦 場のまっただ中を走らされる・・。

私の子どもの友達が、家族とともに今イランに住んでいます。父がイラン大使館勤務 だからです。  イランは米国が戦端を開くかもしれない国の一つです。  あの凶悪な国がどうでもいい理由で他国を攻撃したら、その瞬間、私の子どもの友達 の命も危機にさらされます。  浅井さんも書いていますが、外交の現場は情報が命です。文字通り自らの命を守るの だって、信頼できる友人を多く持つことと、情報収集に怠らないことが肝要なのです。 以前外交機密費事件というのがありました。これが不正に使われていたとか、着服した のがいたというので、大幅に削られました。しかし外交機密費にはこういった情報収集 や重要な情報提供者への謝礼や工作費というものもあったはずです。  今回の事件と関係があるかどうかは知りませんが、外交機密費バッシングが、在外公 館にホントウに必要な費用を奪い取ったのだとしたら、その罪は誰にあるのでしょう か。外務省の悪いところは、そういう目的に使用する「必要欠くべからざる」ものだと いう説明をしなかったか、納得させられなかったことでしょう。

二人を死に追いやったのは、スタンドプレイしか能のない首相の思慮に欠けた言動で す。日本の首相が何を言っているかは世界が注視しています。もちろん日本の独自外交 なんてものを期待するからではありません。莫大な金を持っている国がいつまで、でた らめな米国のブッシュ政権に追随し続けているのかを見守っているだけのことです。  英国にしろ、日本以外で追随している国にはそれなりの事情があります。でも日本は どっちの態度もとれた国です。何も好きこのんで戦場に軍を派遣しなければならない立 場にはない。憲法上の制約と言えば、どの国であろうと無理強いなどできない。  内政不干渉の原則と絶対平和主義という憲法の制約を掲げる日本の位置は、それぞれ 異なる位相で明確に日本の派兵拒否を根拠づけるに十分な理由だったのですから。  その国が、なぜか今回はやったこともない軍事力の展開というきわどい芸当を、常に 銃弾が飛び交い戦闘の坩堝にあるイラクで行おうというのですから、まともな感性を 持ったものであれば「ほんとうにどうしちゃったの」としか言いようのない目で見守っ ていたと言うことでしょう。これは、ごく好意的な立場からの視線ですけれども。

米国との戦闘を継続する者たちにとっては、いかなる軍であろうと援軍として差し向 けられそうであれば、機先を制して攻撃をかけるのは、別段珍しい話ではありません。 古今東西歴史に名だたる戦略家の取った行動にいくらでも見いだすことが出来るという ものです。  軍の常道は「弱い環からたたけ」  日本を含む戦列を想像してみてください。米英あるいはイタリアとかオランダとかの 軍隊と並んで日本軍がいたとすると、その中でもっとも弱いところは日本の防衛線であ ろうということは容易に想像がつきます。そこが狙われるのは軍事的には常識。  後方攪乱戦法などというのは、これもまた常識中の常識。  「テロに屈しない」などというのは愚か者が自分は愚かだと公言してはばからない言 質の典型。今イラクで起きているのは戦闘そのものであり、外交官を狙う行為も典型的 なゲリラ戦の戦闘様式でしかありません。  これは警告に耳を傾けない日本に対する、もっとも残酷な形で発せられた最後通牒と いっても良いでしょう。イラクの日本大使館が銃撃を受けたことが「攻撃されたかどう か分からない」などとあきれ果てた福田官房長官の発言で、ほとんどまともに取り上げ られていないことを知ったとき、これはとんでもないことになると感じたものでした。  今回の事件は「ほんとうに日本がこのまま米国に追随したまま軍を派遣するならば、 全ての日本人、文民、軍人、それだけでなくジャーナリストもNGOも全て標的となす」 という意味での警告です。  歴史には、米国がこれを無視した結果、ジャーナリストやNGOも標的にされた実例は いくらでもありました。

その背景には、日本のメディアではほとんど報道されていませんが、毎日のように行 われる米軍の掃討戦によって、イラク市民が米軍兵士の何倍もの数殺されているという 現実があります。

イラクで戦闘行動を続けている人々の動機や背景はいろいろなものがあるでしょう。 傭兵のようなものも、単なる強盗もいるかもしれません。しかし決定的に重要なのは、 イラクには人民の海が存在していることです。  攻撃者はその海に逃れてもいいし、またその海から新しい”兵士”をスカウトしても いいし。そのことを分かった上で日本が軍隊を出そうとしているのだったら、もはやそ れは自ら標的になりに行くようなものです。

弾幕の中に飛び込むことが「テロに屈しない」ということなんだとしたら、この国は とっととテロに屈してほしい。人道支援が銃弾の中で出来ると思っているのだとした ら、一度JVCなりジャパンプラットホームなりに一年くらい参加をしてみろ。といいた い。愚かしいにもほどがある。

日本の自衛隊がサマーワに展開し、基地を「人里離れた砂漠の真ん中に孤立させて設 営するから攻撃者が接近しようとしてもすぐ見つけられる」のだと言う。 こんな大バカな話をホントウに自衛隊がしたのだとしたら、あんたら自殺しに行く気か と問いたい。  こんな陣地ほど危険なものはないだろう。それとも周りに10メートルほどの掘り割 りでも作るつもりか。大阪城でもあるまいに。(大阪城も落城したけれど)

質問 このような陣地にはどういう攻撃が一番有効か。

答え 夜間、遠距離迫撃砲や狙撃銃による間断ない砲銃撃

例えば、あたろうとあたるまいと、自衛隊の持っている武装の最大射程(たぶん 500メートル程度)の外側からRPG7を毎夜のごとく撃ってきたらどうなるか。 あたらなくても、犠牲者が出なくとも自衛隊員は寝ることも出来ず攻撃してくる相手に 打つ手もなく、一週間もたたずに疲弊しきって、神経が持たなくなるでしょう。  古今東西ゲリラ戦というのはそういうもので、孤立した陣地ほどそういう攻撃には極 めて脆弱だというのは、ディエンビエンフーの戦いを出すまでもない話。もちろん日本 の自衛隊が1954年当時のフランス軍に比べたら軍隊としてはお話にもなりませんの で、50日も持つはずはなくまた、実際に攻撃をかける必要さえないでしょう。  こんな戦闘は米軍が毎日のように経験している。そのあげくに何が起きるか。  精神状態に異常を来した米兵が、M16を乱射してまわりじゅうのイラク人を射殺し た。子どもも含めて多数の犠牲者が出た。これが自衛隊員に起きたら。

話はそれましたが、この国の政治家は、物事を軍事的に解決するということがどうい うことか分かっていない連中が多すぎる。シビリアンコントロールなどというが、こう いった無知なシビリアンほど、いとも簡単に戦争を始めてしまう愚か者ぞろいだという ことだ。