TUP BULLETIN

速報259号 英国で劣化ウランの画期的判決 04年2月22日

投稿日 2004年2月22日

FROM: Schu Sugawara
DATE: 2004年2月22日(日) 午後8時30分

英国で劣化ウランと健康被害を認める画期的判決
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劣化ウラン研究会(Depleted Uranium Center /JAPAN)のメーリングリストに「ヒバク反対キャンペーンの振津かつみさんが投稿された英国の劣化ウラン訴訟判決を伝えるニュースの訳文です。91年湾岸戦争に派遣された兵士の健康被害に対する訴訟で、初めて劣化ウランと健康被害との因果関係が認められたケースとして重要な情報です。

振津さんに許可を得てTUP速報として配信いたします。
山崎久隆 TUPメンバー/劣化ウラン研究会
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皆さん、こんばんは。

「ヒバク反対キャンペーン」の振津です。

もうご存知の方も多いかと思いますが、スコットランドの湾岸戦争帰還兵士の年金控訴審勝利の記事が2〜3日前からいくつか報じられています。その一つ(ヘラルドースコットランド)を訳しましたので、ご紹介します。(読みやすいようにと、少し言葉を追加したりして訳した所もありますが、ご容赦下さい。「記事」ということもあり、正直言って原文そのものの医学的な表現や内容が適切でないと思う点もありますが、まずは内容をお伝えするために、ほとんどそのまま訳しました。)

英文の原文は下記で御覧になれます。

他にもいくつかのニュースソースがあります。

http://realitymacedonia.org.mk/web/news_page.asp?nid=2930
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ヘラルド(スコットランド)

2004年2月4日

劣化ウランの毒性による被害に対する賠償請求が初めて認められた

マーティン・ウィリアムズ

-湾岸戦争、ボスニア及びコソボ紛争に参加した英国の帰還兵16名についての調査では、通常レベルの14倍の染色体異常が検出されている。このような異常が次世代以降に癌や遺伝的疾患を引き起こすのではないかと心配されている。この研究の一端を担ったのがショット博士である。

スコットランドのある退役軍人が、1991年の湾岸戦争時の劣化ウランの毒性によって被害を受けたと診断され、退役軍人としては初めて、年金控訴審での勝利を納めた。
エディンバラで開かれていた年金控訴審で、裁判所は、クラックマナンのケニー・ダンカンが提出した医学的証拠を受理した。以前に国防省は、ダンカン氏の年金請求を却下している。今回の医学的証拠は、中東での軍務のために彼が病気になったことを明らかにするものであった。

ダンカン氏(35歳)は第7戦車輸送部隊の運転手を勤め、有毒な粉塵にまみれた、爆撃で破壊された戦車の輸送に従事した。子供達の健康問題が自分の軍務と関連していることを示す証拠があると彼は言う。10歳のケネス、8歳のアンドリュー、6歳のヘーサには、足指の変形、免疫系が低下して喘息、枯草熱、湿疹になりやすいなど、イラクの子供達とよく似た症状がある。ダンカン氏には、息苦しさや関節痛などの症状があり、これは劣化ウランに関連しているものと彼は考えている。

戦争中、米英軍はイラクの戦車に対して350トンの劣化ウラン兵器を使用したと推定されている。南イラクの医師らの報告によれば、癌や先天障害が著しく増加しており、これが戦車戦の劣化ウラン汚染によるものだとの疑いが強まっている。

スローウェイファース近郊のダンドレナン射爆場周辺での白血病の多発は、劣化ウランと関連があるとされている。射爆場に近接した街での小児白血病の頻度は、英国で最も高い。

ダンカン氏は、9年間、軍務に服したが、健康を害したために1993年に退役した。しかし、完全な年金の半額に当たる週にたったの40ポンドを受け取る資格しか与えられず、控訴に踏み切った。この判決を受けて、彼の年金の再評価が行われる。

「全国湾岸戦争帰還兵と家族の会」(NGVFA)は、この判決は、同会が求めている湾岸戦争による健康障害に対する全面的な独立した調査の重要性を改めて示したとコメントしている。また、政府は被害者の救済のためにもっと資金を費やすべきであるという会の主張を支持するものであるとも述べている。

ダンカン氏の訴訟では、ドイツの生化学者であるアルブレヒト・ショット博士が行った、電離放射線による染色体異常を検出する血液検査が根拠となった。湾岸戦争、ボスニア及びコソボ紛争に参加した英国の帰還兵16名についての調査で、通常レベルの14倍の染色体異常が検出されている。このような異常が次世代以降に癌や遺伝的疾患を引き起こすのではないかと心配されている。この研究の一端を担ったのがショット博士である。国防省はこの検査結果を「十分に検討されておらず、科学的根拠も薄い」と退けた。

ダンカン氏は、こう語っている。「あなたは劣化ウランの毒の被害を受けたのであり、嘘をついているのではないと、権威のある誰かが言ってくれるのは、まったく大きな助けになります。国防省は何が悪かったのか、いよいよ私達に説明しなければなりません。」「(この判決は)病気になって医者へ行ってもどこも悪くないと言われてきた全ての退役軍人のため、彼らのためなのです。そんな退役軍人達の助けになればと思います。」「判決で私自身、それほど多額の金額を得るとは考えていませんが、問題は金ではありません。正道が守られるかどうかの問題です。」

内閣は、「判決が出たからには、国防省に及ぶ影響をも考慮することになるでしょう。」とのコメントを、昨日、発表した。
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【コメント】

なお、以下に私のとりあえずのコメントをいくつか付記させて頂きますので、ご参照下されば幸いです。

*今回、「劣化ウランの毒性による被害」として認定されたということは、後に続く被害者の訴えを支援するためにも、また劣化ウランの被害全体を認めさせ、この兵器そのものの禁止を求めるためにも、大いに意義のある判決だと思います。(米国の湾岸戦争帰還兵の場合も、現在、いくらかの健康保障を受けている人は、PTSD(精神的トラウマによる症候群)としてしかその被害を認められていなかったかと思います。)

*「血液検査で染色体異常を認めた」ことが認定の決め手になったということですので、「初めての勝利」というのは、おそらく「劣化ウランによる放射線被曝を受けたことが認められた上で年金全額支給がなされることになった」という意味で「初めて」であり、「画期的」なことだったのだと思います。昨年、CADUのHPで、退役軍人の年金訴訟勝利の記事が出ましたが、それは湾岸戦争従軍によるPTSDで年金が認められた英国初のケースだったようです。(詳細は確認してみますが…。)PTSDの場合には、必ずしも劣化ウランそのものの毒性による健康への悪影響が認められたということにはなりません。

*今回の判決の根拠として重要だったのが「染色体異常」ですが、これは抹消血のリンパ球の染色体異常を見る検査(病院で、普通に行うような採血で5mlほどの血液サンプルがあればできます。但し、後の検査手技と判定には、それなりの熟練を要しますが。)で、放射線による染色体の損傷に特徴的な変化(二動原体dicentric、環状染色体ringformationなど)のある細胞の出現頻度を調べることによって、被曝線量をある程度推定することができます。このような異常が検出されれば(線源は特定できませんが)放射線被曝を受けたことの証拠になります。原爆被爆者をはじめ、チェルノブイリのヒバクシャ(汚染地住民や事故処理作業従事者など)、JCO事故による被曝を受けた労働者や住民など、これまでに様々なヒバクシャで、この検査が行われています。

*湾岸戦争、バルカンの帰還兵士についてのこの検査は、「記事」の中にもありますようにドイツのグループがやったものです。記事にはショット博士の名前が出てきますが、実際に中心的にこの研究を行ったのはハイケ・シュレーデルさんというブレーメン大学の女性の研究者です。彼女は昨年10月のベルラール会議とハンブルグ会議の両方でこの研究の結果を発表しています。また、RadiationProtectionDosimetryという科学雑誌にも昨年、論文を発表しています。(この論文は、ハイケさんの了承を得て現在翻訳中ですので、後日、またご紹介したいと思います。)論文では16人の帰還兵士についてのリンパ球の染色体異常の検出頻度は対照群の平均5.2倍だったとの結果が書かれています。下記のヘラルドの「記事」の中の「14倍」というのは、記者の誤りか、あるいは実際には「ダンカン氏のサンプルについては14倍だった」ということかもしれません。

*ハイケさんは、以前にこのメイリングでもご紹介しましたが、昨年新たに発足した「ウラン兵器禁止を求める国際連合」(ICBUW)の発足にも、かかわった中心メンバーのひとりです。ICBUWでは、劣化ウランの被曝被害を明らかにし、湾岸戦争などの帰還兵を支援するためにも、彼女達のこの研究の拡大継続が重要であるとの観点から、この検査を行うための資金集めを含めたプロジェクトを計画中です。(被害を引き起こした政府自身が資金をなかなか出そうとはしない中で、このような被害者のための研究も国際的な募金に頼らざるをえないのが現状です。)

少し、話しがずれるかもしれませんが…「放射線の遺伝的影響」について、少し述べさせて頂きます。

*記事の中に「このような異常が次世代以降に癌や遺伝的疾患を引き起こすのではないかと心配されている」と書かれていますが、上記のリンパ球の染色体異常は体細胞(リンパ球やその他の多くの種類の身体を形成している細胞)での異常であり、生殖細胞(精子や卵細胞などの次世代へ伝わる遺伝情報を持った細胞)の異常を直接的に見ているわけではないので、「リンパ球の染色体異常」が即、「遺伝的(継世代的、次世代以降へ伝わる)異常」につながるとは言えません。もちろん体細胞に起きているような変化が生殖細胞に起きていることは、当然、考えられますが、継世代的影響発症のメカニズムはもっと複雑ですので…。(詳細は、長くなりますし専門的すぎるので、ここでは割愛させて頂きます。必要とあれば、別の機会に。)

*劣化ウランに限らず放射線の「遺伝的(継世代的)影響」については、動物実験、細胞レベルでの実験などでは証明済みではありますが、実は人間については(もしかしたら、意外に思われる方も多いかもしれませんが)未だに「科学的な論争の最中」にあり、そう簡単な問題ではありません。また、多くのヒバクシャがその被害すら認められず、補償もなされていない現状の下で、ヒバクシャとその子供達に対する社会的な「差別」の問題も現実にはあり、「放射線の遺伝的(継世代的)影響」はいろんな意味で非常にデリケートな問題であると私は思っています。正直申し上げて、マスコミや、運動の中でも、けっこう「簡単」に「遺伝的影響」「先天障害」「奇形」などと言った内容が取り上げられ、宣伝されているのに触れる度に、躊躇を感じてしまいます。被害者とともに、被害者の立場に立って運動をしてゆく際に、はたしてこれでいいのだろうか…と。(こんなふうに感じているのは私だけでしょうか…?)

振津 かつみ

First Award for Depleted Uranium Poisoning Claim

-Dr Schott’s research formed part of a study of 16 British veterans of conflicts in the Gulf, Bosnia, and Kosovo, which found that they had 14 times the usual level of chromosome abnormalities in their genes, raising fears that they will pass cancers and genetic illnesses to their offspring.

By Martin Williams

A Scots ex-soldier has become the first veteran to win a pension appeal after being diagnosed with depleted uranium (DU) poisoning during the 1991 Gulf war. A Pension Appeal Tribunal Service hearing in Edinburgh accepted medical evidence provided by Kenny Duncan, of Clackmannan, previously dismissed by the MoD, which revealed he had become ill after service in the Middle East.

Mr Duncan, 35, a driver with 7 Tank Transporter Regiment, helped move tanks destroyed by shells containing the poisonous dust.

He says he has evidence that his children’s health problems are linked to his service. Kenneth, 10, Andrew, eight, and six-year-old Heather, have symptoms similar to those suffered by some Iraqi children, including deformed toes, and low immune systems making them susceptible to asthma, hay fever and eczema. Mr Duncan has suffered increasing breathlessness and aching joints which he has linked to DU. During the conflict, US and British troops fired an estimated 350 tonnes of DU weapons at Iraqi tanks. Doctors in southern
Iraq have reported a marked increase in cancers and birth defects, and suspicion has grown that they were caused by DU contamination from tank battles.

DU has been linked to a leukaemia cluster around the MoD range at Dundrennan, near the Solway Firth. Communities close to the range show the highest rate of childhood leukaemia in the UK.

Mr Duncan’s appeal was launched after he was awarded only about £40 a week, half the full pension, when he retired from the Army through ill health in 1993 after nine years’ service. His pension will now be reassessed.

The National Gulf Veterans and Families Association (NGVFA) said the tribunal decision added weight to its call for a full independent inquiry into Gulf war illnesses and supported its view that the government should do more financially to help the victims. Mr Duncan’s case relied on blood tests carried out by Dr Albrecht Schott, a German biochemist, which revealed
chromosome aberrations caused by ionising radiation.

Dr Schott’s research formed part of a study of 16 British veterans of conflicts in the Gulf, Bosnia, and Kosovo, which found that they had 14 times the usual level of chromosome abnormalities in their genes, raising fears that they will pass cancers and genetic illnesses to their offspring.

The test results were dismissed by the MoD as “neither well thought out nor scientifically sound”. Mr Duncan said yesterday: “It is just a huge relief to have someone in authority say that you have been poisoned by this stuff and that you are not telling lies. It is now time for the MoD to tell us what went wrong.

“For all those veterans who have been going to the doctor with these ailments and are being told there is nothing wrong with them, this is for them, and I hope it will help them.

“I doubt that I will benefit much financially from this, but it wasn’t about the money, it was about the principle of the thing.”

The ministry said yesterday: “Once we have seen the decision, we will consider the implications it might have on the MoD.”