TUP BULLETIN

速報317号 リバーベンドの日記、5月22日  04年5月31日

投稿日 2004年5月31日

FROM: minami hisashi
DATE: 2004年6月1日(火) 午前0時30分

親米派チャラビの失墜と結婚パーティへの攻撃


 戦火の中のバグダッド、停電の合間をぬって書きつがれる24歳の女性の日記『リバーベンド・ブログ』。イラクのふつうの人の暮らし、女性としての思い・・・といっても、家宅捜索、爆撃、爆発、誘拐、検問が日常、女性は外を出ることもできず、職はなくガソリンの行列と水汲みにあけあけくれる毎日。「イラクのアンネ」として世界中で読まれています。すぐ傍らに、リバーベンドの笑い、怒り、涙、ため息が感じられるようなこの日記、ぜひ読んでください。(この記事は、TUPとリバーベンド・プロジェクトの連携によるものです)。 http://www.geocities.jp/riverbendblog/


 世界を驚かせたイラク統治評議会の第一の親米派チャラビの失墜。さまざまな推測憶測が飛び交う中で、リバーは傭兵たるものの当然の運命と看破する。早く車を用意して国境を越え、次の傭兵競り市に出かけたら・・・と。(TUP/池田真里)


2004年5月22日 

土曜日

生まれて初めてもらったクレヨンの箱を憶えてる?

 たぶん、憶えてないでしょう。 じゃ、初めて手にした本物のクレヨンの箱を思い出して。あの子どもだましの八色のではなく、初めて持ったあの大きな箱のやつ――どの色も濃いのから薄いのまで四つの色合いがあって、どれを使おうか迷っちゃう。特に茶色は、絶対そんなにいらないのに六種類もあった――でしょう? それで、あの奇妙な色憶えてる?

 そう、赤土色。木を塗るにしては十分茶色ではないし、花を塗るにしてはオレンジ味が足りなすぎる。それが、家宅捜索後の昨日、チャラビがアル・アラビアの仰天インタビューでつけていたネクタイの色。

 彼は、グレー系のスーツに「赤土色」としか形容できないネクタイをし、気取った横柄な態度で座っていた。インタビューの間ずっと、薄い唇には愚かな微笑をたたえ、目は質問のたび憤りといら立ちの混じった光を放った。

 チャラビのインタビューはいつ見ても楽しい。質問に対する彼の答は、必ずイラクの世論とまったく正反対で、始めから終わりまで楽しめる。まるで1ダースのブルドッグの真ん中にいる攻撃的なチワワを見るようだ。笑わせるシーンが何度もあった。彼は腕を振り回し続け、重要なポイントを強調するため手を派手に動かした。注意を引いたいくつかの興味深いこと・・・彼はなんと「占領」という言葉を使い始めたのだ。これまでは、決して「占領」という単語を使わなかった。かつては侵略軍とその一味を「連合軍」と呼ぶように主張していた。そして、彼とその一派は、戦争と占領というこの無惨な大失策を一貫して「解放」と呼んできたのだ。

 彼は、家宅捜索やブレマーとの仲違いなどに関して芸のないコメントをいくつかした。私が気に入ったのはこれ。「私は栄誉を受けたのです! イラク国民として認められると言う栄誉を」と言って、歯のすきまが見えるほど大きくにっこりしてみせたやつ。彼が自慢げに述べていた栄誉とはすなわち、CIAと「占領」の側から失格とされたことを指す。彼はCPAのブラックリストに載ったので、イラク大衆の憐れみ深い腕に抱かれるだろうと思っている。彼の際限ない楽観主義にはほとほと疲れる。同時にアメリカが彼を持ち上げることから、「回れ、右!」とばかりの転換を決めたことは驚きだ。二、三カ月まえまで、ブッシュ政権に一目おかれていることが、チャラビが最も誇りにしていた勲章だった。彼はアメリカとのコネクションをことあるごとにひけらかしていた。

 家宅捜索について聞いたとき、当然ながらさまざまな思いが浮かんだ。最初は、「そろそろ潮時かもね・・・」。次にニュースが十分腑に落ちてくると、この考えはしぼんでいった。チャラビはアメリカのペットの小型犬だった。彼は、なぜ突然新生イラクに不都合となったのか。彼は数年前にヨルダンで有罪宣告を受け、誰もが彼がペテン師でろくでもない政治家であることを知っている。彼がイラクにおいてまったく人気がないことなんて、ブッシュ政権だって十分知っていたはず。彼は単なる操り人形ではなかった。彼は傭兵だったのだ。何十万ものイラク人を殺し、国をぼろぼろにした制裁を促進した。戦争と占領を熱烈に支持し、自分の目的を進めるために、武器と脅威についての嘘をでっち上げた。彼は犯罪者だ。それもちゃちな。

 結局アメリカは、チャラビがまったくの役立たずであることを知るはめとなった。だとしても、この一番の傭兵に対する今回の突然の心変わりはなぜ? 人々は、彼の人気を上昇させるための策略だと言っている。しかし、私はそうは考えられない。目下のイラクの状況に苦慮している当局者はそれほど馬鹿みたいに楽観的になれるだろうか。そうでなければ、これまでほんとうにこんな見込み違いをしていたなんてことがありうるだろうか。アラビア語のことわざで、「en knit tedri, fetilk musseeba…in kint la tedri,fa il musseebatu a’adham」 というのがある。この意味は、 「知っていたなら、大厄災ですむ。知らなかったなら、事はもっと重大になる」。

 一方、二、三日前、イラク西部で結婚のお祝いの最中に、四〇人が殺害された。アメリカのヘリコプターが民間人に発砲し、女性や子どもを殺した。どうやら結婚式の客人が空に向かってカラシニコフを撃ったらしい。もう今ではアメリカ人だってカラシニコフを空に向けて撃つことがお祝いの儀礼だってこと知ってるはずだと思うでしょう? それにお祝いの集まりはとても辺鄙なところで行われていたことを考えれば、発砲には何の危険もなかった。サダムが捕らえられた時、人々が空砲を撃つの誰も咎めなかった。バグダッドが数時間もほとんど弾丸の嵐の下にあったというのに、それはOKだった。それは、「許容範囲内」であるばかりか、「当局」にとっても望ましいことだったのだ。なるほど大勢の女性や子ども、祝っている男性は「脅威」になるでしょうよ。ええ、その通りだわ。 『昨夜ペンタゴンは声明を発表・・「内部の報告によると、これは結婚パーティではなかった。最初に発砲したのは、反連合軍勢力だった・・・」』。

 ええ、もちろんそうよ。結婚パーティであったはずがないでしょう。それは女性と子どもたちからなる抵抗勢力だった(うち一人は狡猾にも結婚衣装まで着けていた)。爆撃されるときには、モスクがモスクでなくなり病院が病院でなくなるように、それは結婚パーティではなかった。祝っていた女性や子どもは民間人ではない。米軍に同行しイラク人を拷問し殺傷する「請負業者」たちこそが民間人だ。CIA職員が「民間人」だ。そして、戦争を計画し実行した者どもはすべて民間人。私たちは民間人ではない。私たちは暴徒、犯罪者、巻き添え被害者予備軍だ。サディスティックな拷問事件についての示唆に富むコメントをmykeru.comで読んで。

 結びにかえて、チャラビへの助言――あなたは売り買いされる傭兵。さあ再び自分を売りに出し、入札を待つときがきたわ。車を準備し、トランクをできるだけ居心地よくして身を隠し、国境に向かいなさい。 一七時一六分

イラクに戻る・・・  クリス・アルブリットンがイラクに戻ってきた。彼のサイトをチェックしてみて。チャラビ失墜の記事が載ってるわ。 一七時二三分 (訳:リバーベンド・プロジェクト/山口陽子、池田真里)