TUP BULLETIN

速報425号 ドナのイラク報告(10)  イラク人の創造性、そして陶芸教室

投稿日 2004年12月19日

DATE: 2004年12月19日(日) 午前11時12分

この国ではいたるところに芸術がある。街路には彫刻、川べりには劇場があり・・・


 4月、米軍包囲下のファルージャに、人道救援活動のために入り、その帰路、地元 のレジスタンスによる拘束を経験したオーストラリア人女性ドナ・マルハーンが、11 月24日に再びバグダッド入りし、そこから送っている現地報告をお送りしています。 今回は、バグダッドのいい話の続編とも言える内容で、イラク人の文化的水準の高さ を紹介しており、この国に対するイメージの塗り替えを迫ります。

(萩谷 良/TUP)


ドナ・マルハーン 2004年12月12日 イラク人の創造性、そして陶芸教室のことなど

友人の皆さん 戦争前に初めてイラクに来たとき、感動したことのひとつは、バグダッド市民の間で 文化的、創造的な活動がさかんに行なわれていたことだった。

いたるところに芸術があった。街路には彫刻があり、川べりには劇場があり、空中に は音楽があり、画廊は表現であふれ返り、詩と文学に対する人々の愛好はよく窺われ た。

私は驚いている自分を認めたが、あとで自分が驚いたことを恥ずかしく思った。

どうして、この古くからの文明国が、深い創造的、芸術的文化を持たないはずがあろ う。私の無知は、イラクの豊かで多彩な文化の存在をまったく伝えてこなかった西洋 のメディアのおかげで心に形成されてしまった ステレオタイプのイメージから出て きたものであることがわかった。

この国ではいまなお芸術が花開く。

私がこれまで見たうちで、いちばん心に響いた、すばらしい絵のうち、いくつかは、 あるイラク人画家が、アメリカの侵入と占領を、「アリババ」伝説のレンズを通して 表現したものだ。

その絵は、バグダッドのある小さなギャラリーの所蔵となっているが、じつに息を飲 むすばらしさだ。私の友人の一人、モハメッドは、若い画家で、世界のどんなギャラ リーに出しても恥ずかしくない抽象絵画、彫刻作品をもうかなりの数作っている。

私の友人で十代のワリードは、ヘビメタ・バンドのシンガー、ファリスはアラブの古 典音楽の弦楽器ウード〔訳注 琵琶、リュート、マンドリンと同系の卵型の胴をもつ 撥弦楽器〕を弾く。エマッドは劇の脚本を書く。この人たちは大半が一流の実力をも っている。

イラク国立劇団に所属する友人たちは、まばゆいばかりに華やかだ。きちんと刈り込 んだ口ひげ、チェックのベスト、カラフルなスカーフといういでたちの彼らは、毎日 劇場のロビーで今後の上演作品の話をしている。

占領の苦難のもとにあって、創造の活力はなおさら盛んにあふれる。

平和の鳥芸術学校が、この活動に、ささやかながら寄与していることを報告できるの は、嬉しい。子どもたちは、音楽、演劇、陶芸の教育を受けている。

陶芸教室で、テーブルいっぱいに載った焼き物を見せてもらったときは、ほんとうに 驚いた。写真でははっきりわからないけれど、作った子どもの相当な才能と思考と創 造性を示す作品があった。

イラク文化のもうひとつの特徴は、テクノロジーへの愛好だ。イラクは、電子製品や コンピュータでできたものなら、何でも使いこなす天性の素質があるらしい。

私のごく親しい友人の一人で、IT技術者がいる。ある人が彼に、アメリカの占領が 終わるとき、まだ未熟なこの国の通信産業はどうなっているだろうと聞いたことがあ る。それは生き残れるんだろうか、と。

彼は笑って言った「そのときはイラク人が仕事を作ればいいでしょう」

「イラクはどんなことだってできるんです。経済制裁のときにも、物資があんなに欠 乏してたって、何でもできたじゃありませんか。こんどアメリカが出ていくときだっ て、同じことですよ」

イラクには、たくさんの驚異的な人々がいる。

彼らは創造的で、才能に恵まれ、工夫応用の才があり、知的水準が高い。

彼らは、音楽を、舞踊を、笑うことを、そして美を、享受する。私たちとまったく同 様に。

あなたの巡礼 ドナ

追伸 下の写真は、平和の鳥芸術学校の陶芸教室で作っている作品の一部です。ある 男の子は亀を作り、ある女の子はお家を作って、見せてくれました。コンピュータ教 室では、女の子たちが最新のプログラムをいろいろ習っていました。

追追伸 お気づきでないかもしれませんが、皆さんを急性抑鬱発作に追い込まないた め、いい知らせと悪い知らせを交互にお送りするようにしています。ファルージャの 難民について、詳しい話は次回にします。

追追追伸 ML新参加のみなさん、歓迎です。平和の鳥芸術学校について詳しく知り たい方は、以前のメールを取ってありますからご覧下さい。 www.groups.yahoo.com/group/thepilgrim

追追追追伸「人は、毎日いささかの音楽を聴き、いささかの詩を読み、見事な絵を見 るべきである。神が人間の魂に植えつけた美なるものへの感覚が、世俗のわずらいに よって、消え去ってしまうことのないように」ヨハン・ヴォルフガング・フォン・ゲ ーテ (翻訳 萩谷 良/TUP)

原文URL: http://groups.yahoo.com/group/ThePilgrim/message/136