TUP BULLETIN

速報597号 IAEA持続可能エネルギー路線へ  060401

投稿日 2006年4月11日

FROM: hagitani ryo
DATE: 2006年4月11日(火) 午前10時20分

人類史に残る劇的方向転換に踏み出したエルバラダイ事務局長!!!
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TUP訳者注:以下の記事に対しては、4月2日以降下記の原文掲載サイトに「も
ちろん、これはエイプリルフールのジョークです。しかし、国連が皆さんの税
金で、危険で汚れた原子力を推進していることは重大な問題です」という但し
書きが追加されたのでご注意!

原文:UN Agency to drop nuclear bombshell
http://www.greenpeace.org/international/news/UN-agency-bombshell-010406
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チェルノブイリ原発事故から20年となるこの4月の初日に、世界を揺るがす
ニュースがグリンピース・インターナショナルから飛び出しました。IAEA(国
際原子力機関)が原子力推進をやめて再生可能エネルギー推進にシフトすると
いうのです。カーン博士を筆頭とする核のブラックマーケット、核兵器削減な
どどこ吹く風の核保有5カ国(米露英仏中)、公然の秘密の核を持つイスラエ
ル、新たに核兵器を手にしたパキスタンとインド、核兵器開発をうそぶく北朝
鮮、すでに40トンものプルトニウムを保有し六ヶ所再処理工場で年間8トンの
プルトニウムを作るという日本、非核国イランへの先制核攻撃も辞さないとい
う一方で原子力産業の利益のために核拡散防止を骨抜きにする取引をインドと
結んだ米国――チェルノブイリ以降、世界はますます危険になっています。こ
の現状を憂うIAEA事務局長エルバラダイが、右手で核兵器削減・核拡散防止の
旗を振り左手で原子力を後押しするというIAEAの本質的矛盾を解決したいとい
う。4月の初日、世界の反戦・反核・反原発勢力をハッピーな気分にさせ、原
子力産業界をブルーにさせたニュースをお届けします。
(翻訳:福永克紀/TUP)
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【オーストリア-ウィーン 4月1日】国連の国際原子力機関(IAEA)事務局長
が、原子力機関の任務を原子力の推進から再生可能なエネルギーの推進へと転
換することを検討していることが、本日グリーンピース・インターナショナル
が入手した衝撃的な漏洩文書で明らかになった。

原子力機関の職員だけに向けるとする本日付の短い内部メモには、モハメド・
エルバラダイIAEA事務局長による原子力機関任務宣言書を書き変える意図の概
要が記されている。

「私が独自に原子力機関の任務を変更するわけにはいかず、9月の次期総会に
報告できるように専門家部会を事務局長指令として招集するつもりである。部
会に付託される事項は、原子力機関が再生可能なエネルギーの世界的指導者・
提唱者となりうる最善の方法を見つけ出すことである」

わがグリーンピースの核問題専門家でありIAEAに詳しいウィリアム・ヒル
(William Hill)は、以下のように述べた。

「当初は信じられませんでした、冗談だと思ったのです。しかし充分に理解し
た私たちは、IAEAの二重的役割という基本的な欺瞞の認識と、それは維持可能
ではないという責任ある確認であると歓迎するのです。私たちは迅速な変革が
なされてこなかったことにがっくりとし、さらに産業利益に支配された協議期
間がまだまだ続くであろうという見通しに失望してきたのです。しかし今日、
私たちはほぼ間違いなくこの歴史的発展を祝うシャンペンの栓を抜くことにな
るでしょう」

我々グリーンピースは長年、IAEAの二律背反する役割を批判してきた。IAEA
は、一方で核兵器の拡散を防止し、加盟国の核軍縮を指導するという任務に当
たっている。しかしもう一方で、核兵器製造手段を供給する民生用原子力発電
を促進している。

つい昨日、我々はIAEAの劇的変革を示す証拠を持っていると言う内部通報者か
ら連絡を受けた。アート・シックスノーフォーとだけ名乗った男は、ウィーン
のある公園での漏洩文書の手渡しという手の込んだ方法を設定した。

この文書は、我々が入手してまだ時間も充分たっておらず、この文書が示唆す
るものの充分な分析、および提案された計画の詳細を確認できたわけではない
が、その強烈な内容は迅速な発表に値すると考える。

原子力機関の任務が変更されると判断するのはまだ早計ではあるが、現在の
IAEAの任務宣言書の核心にある無鉄砲な矛盾を取り除こうとするエルバラダイ
の勇気を称賛することだけはできるだろう。もし彼の提案が採用されれば、世
界はもっと安全な所となるであろう。

―――――以下、漏洩文書―――――

原子力機関の任務宣言書を再構成することに関する事務局長よりの通達

世界の指導者たちは、核兵器と核のテロが人類に対する最大の脅威だと常に警
告している。私は彼らに同意する、すなわち核兵器のない世界を作り出す行い
は、全ての国家が通過せねばならない道なのである。単なる宣言や雄弁などで
はなく、具体的な行動や措置が緊急に求められている。イランその他の事象が
明示するごとく、我々が直面しているのは、民生用核プログラムが民生用のま
まであり続け核兵器に結びつかないという保証などどこにもないということで
ある。

近年、4つの現象が安全保障の展望を劇的に変貌させた――原子力用備品の秘
密供給ネットワークの出現、核燃料サイクル技術の拡散、核兵器を入手しよう
と努力している諸国の増加、大量破壊兵器を入手しあるいは使用する意図を明
らかに宣言しているテロリストの存在である。これら全ての脅威を、我々は無
視することはできない。

チェルノブイリ20周年を記念するこの年に、各国は歴史上最悪の核事故に目を
向けようとしている。今こそわが原子力機関が、我々が推進してきた核エネル
ギーの役割と未来を、じっくりと考えてみる時である。私には個人的に何がで
きるだろうかと、また全人にとってより安全な世界を創造するのに原子力機関
には何ができるだろうかと、私は長いあいだ内省を重ねてきた。今年こそ、原
子力機関が改革の行程を始めるべき年なのである。

私は、9月の次期総会に報告できるように専門家部会を事務局長指令として招
集するつもりである。部会に付託される事項は3重層になっていて、その第一
は、原子力機関が再生可能なエネルギーの世界的指導者・提唱者となりうる最
善の方法を見つけ出すことである――拡大し続ける世界のエネルギー需要に真
に応える解決策だ。その第二は、確実に軍縮を促進し検証するために原子力機
関が必要とする枠組みと資源の企画である。そして第三が、現存の核技術を軍
事的手段として利用したいものたちの手に渡すことなく、現存する原子力発電
所を解体する卓越した対話の中心に原子力機関がなる方法を探ることであり、
核廃棄物の安全な処理方法を探ることである。

この文書が多くの人に驚きをもたらすことは理解しており、であるから内部文
書として通達する。この部会と私のこの課題は、長年にわたり原子力産業内の
友人や仲間のために私たちが努力し、それを感謝し私たちに協力してくれてき
た彼らの失望を買うことは間違いないだろう。間違いなく加盟国のいくつかが
任務の変更に非協力的となるであろうが、今こそ私たちが彼らに説明する時な
のだと、私は信じる。

原子力機関が一方で原子力発電を推進し、もう片方で世界平和を追求し続ける
方法などありえないことが、私には分かる。21世紀の原子力機関には、21世紀
のための任務が必要なのだ――1950年代に想定され希望とされた原子力の夢
は、明らかに技術的にも政治的にも全く耐えうるものではないのである。この
ことを原子力機関への私の遺産にしたいと思う。

この専門家部会の構成は、学術界と加盟国理事会からのみならず、広範なNGO
や市民社会の提唱者たちから成り立たなければならない。

この変革の行程がスムースに処理され、全職員に助言を求めると共に最新情報
が伝えられることを約束する。原子力機関の新構想について助言を求めること
がチェルノブイリ原発事故20周年の月に始められ、チェルノブイリ事故の被害
を被りまた被害を被り続ける全ての人たちを永遠に記念するものとみなされる
のは、当然のことである。

機関職員としての皆さんの提案はもちろん高い評価を受けるので、あらゆる機
会にこの行程への助言をいただきたい。概要にまとめて私のオフィスからの回
覧に付されることになる。これらの変革に関する質問は、下記の「IAEA任務変
革ホットライン」にお願いしたい。
ウィーンオフィス 代表電話43-1 2600-21273 内線1270

(翻訳:福永克紀/TUP)

原文:UN Agency to drop nuclear bombshell
URL:
http://www.greenpeace.org/international/news/UN-agency-bombshell-010406

―――――以下、細川弘明さんによるエイプリルフールの解説―――――

April Fool については、日本で習慣がないので、「悪い冗談」だと思われた
方もいらっしゃるかと思います。April Fool は次の3つの要素を兼ね備えた
ものが「良い冗談」だと考えられるようです。
(1)一瞬信じてしまいかねないが、よく見れば(読めば)ウソだとわかる印
がはいっている。
(2)現実に対する何らかの批判(あるいは揶揄、あるいは警告)を含んでい
る。
(3)オルタナティブな可能性についての何らかの示唆を含んでいる。

今回のGPのものは、上記すべてを満たしているので、典型的なApril Fool と
言ってよいと思います。

(2)(3)については、読んでいただければ分かるでしょう。

(1)ですが、サイトに掲載されている IAEAの「内部文書」をみれば、偽物
であることがすぐ判ります。
── 「取扱注意」のハンコが押されているのに回覧先が「General」となっ
ている、そもそも「取扱注意」のハンコが馬鹿みたいにでかすぎる、日付が土
曜日発行になっている(彼らは土曜日は働きません)、発行部署が書かれてい
ない、責任者のサインがない、などなど。また、リリース文中にでてくる
William Hill という「グリーンピースの核問題専門家」はいない、などな
ど。

ちなみに、William Hill というのは、英国の有名な賭け屋(bookmaker、元締
め企業)で、昨年4月、英国の原発政策変更(推進に逆戻り)を発表した副首
相のスピーチ会場でグリーンピースが抗議活動をしたことをうけて、副首相の
再選予想の数字を下げた、といういわくがあります。(イギリス人というの
は、何でも賭けの対象にする人たちで、選挙のたびに、各候補の当落について
bookmaker が予想数字と配当を公表します。競馬と同じで、当選可能性の低い
人に賭けたほうが当選したときの配当は大きい。)