TUP BULLETIN

速報613号 リバーベンドの日記 6月6日 拉致と暗殺の日々 060608

投稿日 2006年6月7日

DATE: 2006年6月8日(木) 午前7時19分

民族粛清が行われている


戦火の中のバグダッド、停電の合間をぬって書きつがれる若い女性の日記 『リバーベンド・ブログ』。イラクのふつうの人の暮らし、女性としての思 い・・・といっても、家宅捜索、爆撃、爆発、誘拐、検問が日常、女性は外 へ出ることもできず、職はなくガソリンの行列と水汲みにあけあけくれる毎 日。すぐ傍らに、リバーベンドの笑い、怒り、涙、ため息が感じられるよう なこの日記、ぜひ読んでください。 (この記事は、TUPとリバーベンド・プロジェクトの連携によるものです)  http://www.geocities.jp/riverbendblog/


2006年6月6日火曜日

ひどい一日・・・

まったくひどい日だった。たまらない暑さで目が覚めた。この地域に電気がく るのは、だいたい4時間くらいで、頼りは発電機なのだけど、それも天井の扇風 機が使えるってことで、エアコンを使えるほどではないの。

発電機が動いていないことを示すいやな静けさでわたしたちは目が覚めた。E がお隣りに行って確かめてきた。今日一日、発電機は動かないということだ。責 任者のお隣さんは、時間が空き次第「発電機ドクター」を連れてくることになっ ていた。

電気は夕方6時にわたしたちをあざけるかのようにたったの20分だけきた。 ぱっと電気が点いた瞬間、わたしたちは台所に集まっていたのだけれど、近所の 子供たちがわっと歓声をあげるのが聞こえた。

その前に、バグダードのサルヒーヤ地区から多数の人たちが拉致されていった というニュースを聞いた。サルヒーヤはたくさんの旅行代理店でにぎわっている 地区だ。戦争からこのかたというものヨルダンやシリアに逃げ去っていく人たち がこの地区のあちこちのオフィスで予約を取るので特に忙しくなっている。

この地区に住んで働いている人たちによると、警察が15台くらいの車でのりつ けて、制服姿の男たちが路上や自家用車から引きずり出した市民に頭から袋を被 せ、警察の車に追い込んでいったという。抗議しようとするものは容赦なく殴ら れるか、車に詰め込まれた。連れて行かれた人たちの数は全部で50人くらいと みられる。

内務省の得体の知れない男たちによる市民の一斉検挙や連行は、イラクのいた るところで行われているけど、こんなに多くの人々が一度に連れて行かれたこと はなかった。気がかりなのは、イラク内務省が、この最近の大量拘束についての 関わりを否定していることだ。(これは彼らの新しい傾向で、大量拘束、拷問、 暗殺などについては、人権団体が絡んでくるので、そんなことはなかったと否定 するのだ!) これは良くない兆候だ。つまり、この人たちは多分数日内に死体 で発見されることになるだろう。わたしたちは、彼らが生きて帰ってくることを 祈っている…

その日のうちに、もうひとつとりわけ悪いニュースがはいってきた。ドーラ地 区で、スクールバスに乗っていた学生たちが殺された。なぜなのか誰もはっきり わからない。彼らがスンニ派だったのか?それともシーア派だったのか?多分両 方混ざっていたのだろう。学年末試験のために暑さに耐えながら夜遅くまで勉強 していた彼ら。家を出る時には、及第できるかどうかということしか考えてなく て―ご両親は激励と祈りの言葉で彼らを送り出したのだろう。彼らはもう永遠に 家に帰ることはない。

現在、民族粛清が行われていることを否定するのは不可能だ。人々はIDカー ドに従って殺されている。両方の側の過激主義者たちが、生活を不可能なものに している。彼らの何人かは“ザルカウィー"のために働き、他はイラク内務省の ために働いている。シーア派教徒は“スンニ トライアングル"の中で殺され、 “ウマル"という名(注:第2代カリフであるウマルにちなんだ名前。アリーの 血統しか認めないシーア派は、カリフウマルを認めず、アリーの地位を剥奪した 者として忌避している)の1ダースものスンニ派教徒の死体が、バグダードの死 体置き場に運び込まれていると聞いている。自分が実際に自動車爆弾を懐かしく 思うようになるなんて思いもしなかった。少なくとも自動車爆弾は人を区別した りしないもの。スンニかシーアかといって、だれかを探し出して爆破するなんて ことはしないわ。

防衛や内務など、重要な省には大臣がまだ置かれていない。イラクはバラバラ になっていて、マリキと彼の仲間は依然誰が権力を持つべきか言い争っている。 誰がより外国占領者の手を借りてイラク人を抑圧するのに適任であるか?その上 さらに、イラク議会は7月と8月に‘休暇’をとるという噂だ。彼らは言い争い や権力争奪戦に疲れ果ててしまったので、2ヶ月の休暇が必要だってわけ。がっ ちりと警備された家を数カ月留守にして、家族と海外で過すのだ。(家族はとっ ても大切だから、イラクになんか住まわせられないの)

どこに行けば死や破壊から逃れられるっていうの?アメリカ人はこの進歩に満 足だっていうの?ブッシュはこれでもまだ、わたしたちが進歩してるって言い張 るの?

エミリー・ ディッキンソンが書いてる、“希望には羽が生えている"って。 もし彼女が書いてることが本当なら、希望は遠く―イラクからとても遠くに飛び 去ってしまった…

午前2時53分 リバー

(翻訳:リバーベンド・プロジェクト:ヤスミン植月千春)