TUP BULLETIN

速報632号 無許可離隊の米陸軍特技兵がカミングアウト 060923

投稿日 2006年9月23日

FROM: hagitani ryo
DATE: 2006年9月23日(土) 午後7時43分

兵士宣誓を守る義務より自己の良心に従う義務
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平和を求める戦死者家族の会のシンディ・シーハンさんは、2004年4月4日にイ
ラクで戦死した息子のケーシー・オースチン・シーハン特技兵が、なぜイラク
で死ななければならなかったのか、ブッシュ大統領に直接説明を求め、ブッ
シュ大統領の牧場のあるクローフォードに運動拠点キャンプ・ケーシーを作っ
て、反戦運動を粘り強く続けています。そのシンディ・シーハンさんが、19カ
月間無断で離隊していた陸軍特技兵マーク・ウィルカーソンがキャンプ・ケー
シーに救いを求めてカミングアウトしてきたことを、トゥルースアウトに載せ
た小論で明らかにしました。ワタダ中尉は軍隊の中でイラク行きの命令を拒否
して闘っていますが、マーク・ウィルカーソン特技兵のように無許可離隊した
兵士のカミングアウトが、これから増えてくるのではないでしょうか。「いく
つもの義務」と題するその小論を紹介します。この小論はウィルカーソン特技
兵が所属していたフォート・フード基地に出頭した8月31日の数日前に書かれ
たものと思われます。出頭したとの記事はIPS News Agency のサイト
http://ipsnews.net/news.asp?idnews=34539
に、その記事の抄訳はJANJANのサイト
http://www.janjan.jp/world/0609/0609080869/1.php
に、9月9日の記事として掲載されています。

寺尾光身/TUPスタッフ

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  いくつもの義務
  シンディ・シーハン
  トゥルースアウト | 展望

  2006年9月1日(金)

 私はテキサス州クローフォードに土地を買いました。身の毛のよだつような
悪夢である占領がイラクで終りを告げるまで、それとも、私たちの世界がブッ
シュ政権の下でもう苦しむ必要がなくなるまで、あるいはその両方が実現する
まで、みんなのキャンプ・ケーシーを続けるためです。けれどもこの土地は平
和のために役立てる恒久的な場所、希望のよりどころ、また、兵士の避難所と
なるでしょう。やってくる兵士が軍籍にとどまることを望んでいるか離脱を望
んでいるかにかわらずです。

 第Ⅲ次キャンプ・ケーシーとそれに先立つすべてのキャンプ・ケーシーに、
どんなに多くの市民が文字どおり血と汗と涙を投入してきたことでしょう。す
ばらしい平和活動家の皆さんが何日も、それどころか多くは何週間もの日々を
投げ打って、暑くて汗だくになる、干天で埃まみれのテキサス州クローフォー
ドにやってくるのは、自由のある平和をこよなく愛する人々がこの国にいて、
自分たちの生きているうちにそれを現実のものとするためなら、いのちを捨て
ることも辞さないのだということを、ブッシュ株式会社に、わが国に、そして
私たちの世界に、見せるためなのです。

 今年のキャンプ・ケーシーは、昨年夏によく(いや、それほどでもなかった
かもしれませんが)メディアに取り上げられたほどには取り上げられてきませ
んでした。それは逃げのジョージ(訳者註:ブッシュ大統領)が、キャンプ・
ケーシーが頑張った日数に比べて短い日数しかクローフォードで過ごさなかっ
たからです。どういうわけか、メディアはジョージを追っかけるのです。

 私たちみんなのまじめな努力と私が使った資金、どちらも今日突然充分に報
われることになりました。それはフォート・フード基地から出て19カ月間無許
可離隊していたマーク・ウィルカーソンという22歳の陸軍特技兵が、私たちの
駆け込み寺の呼びかけを聞きつけて、フォート・フードの軍当局に出頭する前
の最後の数日を過ごそうと、今日キャンプ・ケーシーにやってきたからです。

 イラクに一度参戦したあとマークは、この戦争は、最初は支持していたのだ
けれど、誰かが言っていたのを聞いた通り、不法で不道徳だと思うようになり
ました。良心的兵役拒否者の資格を獲得するため、まともな筋から懸命に働き
かけましたが、認められませんでした。それで、イラクへ二度も派遣されるか
わりに、無許可離隊することにしたのです。

 キャンプ・ケーシーの駆け込み寺の呼びかけを聞いて、マークはやってきた
のです。ここで住家と心から愛し支えてくれる新しい家族に出会ったのでし
た。マークは自分の決心にどんな対価でも払いたいと思っており、キャンプ・
ケーシー平和協会や平和行動で、私たちと一緒に活動したいと思っています。

 キャンプ・ケーシーに来ている記者たちがマークに何度も何度も聞いていた
のを私は耳にしましたが、その一つの問いはこんなふうでした。「一旦宣誓し
たからには宣誓を全うする義務がある、とは思いませんか?」 マークは、自
分の良心に従う義務もあると答えて、この質問を見事にさばいていました。あ
らゆる合理的で健全な基準にてらして、この戦争が不法であり不道徳でもある
ということがわかったので、嘘つきの政治指導者たちが皆に強制する戦争犯罪
と人道に対する犯罪には、道徳から言って参加するわけに行かなかったと彼は
言いました。

 私はたくさんのニュースを見ていますし、まれにしか行われないブッシュの
記者会見の記事も読んでいます。でも、誰かがマークにしたのと同じ質問を
ジョージ・ブッシュにするのを見たことが一度もありません。この総司令官
は、ベトナム戦争のとき兵役義務をはたさなかった人です。アラバマ国家航空
警備隊に転属になり、褒賞をもらっていますが、彼が任地にいるのを見て彼に
賞をやろうと提案した人がいたわけではありません。彼は軍務に就いたことな
どなかったからです。ウィルキンソンに繰り返し向けられた問いと同じ問いが
大統領に向けられるのを見たいものです。どうして大統領は、22歳の特技兵
-4(訳者註:給与では上等兵と軍曹の間、伍長と同等の兵士)を、とんでもない
口実をつけた戦争のためにイラクに送って、戦わせ、ことによれば死なせもし
罪もない人々を殺させるなどということができるのでしょう。自分は、とんで
もない口実による戦争で同世代の多くの若者が、闘い、命を落とし、無辜の人
々を殺さなければならなかったときに、父親のつてを利用しまくって逃げてい
たというのに。

 ほとんどの共和党の上院議員、連邦議会議員、行政府職員、それから「先約
ありき」のディック・チェイニーもそうですが、それが誰であれ、自分がベト
ナムに行かなくてすむために必要なことは何でも実行したことにとやかく言お
うとは思いません。私がどうしても問題にしたいのは、60年代と70年代に軍産
複合体の手から逃れた彼等が、次世紀最初の強欲のための戦争で私たちの子ど
もを貪欲な怪物にえさとして与えていることです。連邦議会は宣戦布告をする
という憲法に定められた責任も放棄し、戦争マシーンの鍵を無責任な脱走兵
ブッシュとその“副”徴兵忌避者チェイニーに手渡したのです。さらに言えば、
一国の総司令官たるもの、配下の軍隊を賢明に使う義務があるのであって、無
謀にまた不注意に使ってはならないのです。それから、私たち国民に本当のこ
とを言わなければならないという義務はどうなっているでしょうか?

 誠実と名誉心あふれる勇敢な若者にたいして義務の全うについて問うような
うさんくさい「勇気」は私にはありません。かわりに報道陣のだれかに、マー
クとケイシーの総司令官であるジョージ・ブッシュに同じ問いをしてもらいた
いものです。ジョージは東海岸生まれの恵まれた条件をすべて持ち、また、父
親の富と利権仲間を持っていました。だから、出るところに出たくないと思え
ば、出なければならないということはなかったのです。マークにはそんな条件
などありませんでしたから、1年半以上も見つかる恐怖の中で生きなければな
らなかったのです。金持ちはもっと金持ちになるために、いつだって貧しい者
の子どもたちを死に追いやるのです。

 平和運動は兵士全員に、勇気を出して武器を捨て、ワシントンの腰抜けども
と戦争マシーンのために死んだり、何の罪も無い人びとを殺すことを拒否する
よう、勧めなければなりません。平和を愛する私たちは、私たちの道徳的支持
と金銭的支援とで兵士の皆さんがそんな行動をとりやすいようにしてあげなけ
ればなりません。平和を愛する私たちは、次の戦争をとめる努力をしなければ
なりませんし、兵士の家族に情報を提供し、戦争成金どもの軍服を着る子ども
たちにはそれとは違う別の選択があることを知らせる努力をする必要がありま
す。大学はお金がかかりすぎるし、身近な地域社会には職もありません。私た
ちは戦争省からお金をもぎ取って、私たちの未来、私たちの子どもたちに返し
てあげなければなりません。

 わが子たちを戦争マシーンに提供し、彼等のよこしまな利益のために使い捨
てにさせ続ければ、戦争は延びるばかりです。

 若者を助けて戦争に行くのをやめさせるにはどんな方法があるかを知るに
は、GIの権利ホットラインに連絡してください。(訳者註:連絡のURL=
http://www.objector.org/girights/contact.html )

 良心的兵役拒否者となるための情報を得るには、良心的兵役拒否者のウェブ
サイトにアクセスしてください。(訳者註:URL=
http://www.objector.org/advice/contents.html )

 軍隊に入る以外にどんな選択肢があるのかもっと情報を知りたい方は、アメ
リカン・フレンズ・サービス・コミッティーに連絡してください。(訳者註:
例えば次のサイト= http://www.afsc.org/youthmil/default.htm )

 私の一番上の子が遺体袋に入って帰宅することになる前に、このような情報
をすべて知っていたらよかったのに、と思います。

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翻訳:寺尾光身/TUPスタッフ

原文のURL:
http://www.truthout.org/docs_2006/090106A.shtml