TUP BULLETIN

速報633 シンディ・シーハン 月とすっぽん 060924

投稿日 2006年9月24日

FROM: hagitani ryo
DATE: 2006年9月24日(日) 午前10時54分

独裁者はチャベス大統領ではありません。ブッシュです。
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 ついに国連で堂々とブッシュを「悪魔」と呼んだベネスェラのチャベス。
 この大統領については、これほど国際的に注目されているにもかかわらず、日
本では名を知る人すら少なかったのですが、これで知名度もアップ・・・でも、
「喧嘩男」ぶりばかりが知られるとしたら、それはちがうでしょう。
 6〜7月のNHKスペシャルが紹介したように、この政権の進める社会福祉、教育
との取り組みこそ、もっと知られなければなりません。
 以下にご紹介する記事は、古いのですが、シンディ・シーハンさんがじかに会っ
たチャベス氏の人となりを紹介していて、興味深いものです。
 シーハンさんの推薦するジェフ・コーエンの記事も参考になると思い、訳出し
て後半につけます。
TUP 萩谷 良
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私ならブッシュでなくチャベスを大統領にしたい

じかに見たウーゴとジョージ

2006年7月17日
シンディ・シーハン

カリフォルニア州ベルフラワーでの子ども時代の私は、想像力は豊かな子どもで
したが、自分の人生がこんなふうになるだろうとは思ってもみませんでした。自
分の生む子が戦争のために不正に、ひどい仕方で命を落とすことになるだろうと
も、自分が世界の指導者と会うことがあるとも、ノーベル平和賞候補にあげられ
るとも、思ったことはありませんでした。

私がこれまでに会って十分な時間をかけて話をした政治指導者のうちに、スペイ
ンの副大統領やアイルランドの外相やオーストラリアの法務長官、そして世界中
の数え切れないほどの議会議員などとならんで、ベネスェラのウーゴ・チャベス
大統領がいます。チャベス大統領については、メディアのプロパガンダがなされ、
私の同国人であるアメリカ人の多くが無知であるため、私が同氏に会いに行った
ことはひどく批判を受けました。しかし、この国の皆さんにぜひ念を押しておき
たいのですが、我が国はベネスェラと外交関係をもっていますし、私たちはベネ
スェラと交戦しているわけではないのです。

最近、MSNBCの「ハードボール」に出たときも、司会者のノラ・オドネルは私を紹
介して「独裁者」ウーゴ・チャベスと一緒に写真を撮ったなどと言うのでした。
紹介が済んで、ちょっと一息ついたとき、私は彼女を見つめて言いました「チャ
ベス大統領は独裁者じゃありませんよ。民主的に8回の選挙で選ばれた人です」
〔訳注 MSNBC、マイクロソフトとNBCの共同出資により1996発足したケーブルTV
とインターネットを通じた報道中心の放送局。Hardballはその番組で政治的話題
を扱うニュースショー〕

するとノラは言いました「それについては私たちもすごく議論をして、かれは独
裁者のように支配していると判断したのです」。この言葉に私はつよい衝撃を受
け、苛立ちを覚えました。MSNBCとノラ・オドネルがチャベス大統領は独裁者だな
どという神話を永続化して、視聴者にまちがいを吹き込むとは、また事実に反し
て「彼は独裁者のように支配していると判断した」などとは、信じがたいことで
す。

「じゃ、あなたはジョージ・ブッシュを独裁者と呼ぶべきですね」。そう私が言
ったとたん、インタビュー開始のサインが出されました。

それからの、ノラがインタビューと呼び、私には「攻撃」と呼ぶべきものに思え
たプログラムの間(この攻撃のあと私は彼女をハグしたのは、それが実は彼女に
必要なものだと思えたからです)、私たちはウーゴ・チャベスを話題にし、つい
に私は、私ならジョージ・ブッシュでなくチャベス氏を大統領にしたいと言い切
りました。それは、私の経験と調査から出た発言でしたが、このほんとのことを
口にして以来、私は、生命を脅かされること数回、また平和のための戦死兵遺族
会のウェブサイトへの嫌がらせメールは劇的に増加しました。

チャベス大統領の政権を擁護する立場で、もっと学問的に書かれた優れた本や記
事はたくさんあり、企業所有のメディアにまちがいを教えこまれている市民に、
ベネスェラの政治と経済と市民社会について、ほんとうのことを教えてくれます。
最近ジェフ・コーエンの書いた「馬鹿はベネゼラに失せろ」は特に優れています。
ですから、私は、学問的な論文を書く代わりに、ジョージ・ブッシュとウーゴ・
チャベスの体制について、個人的に知ったことを述べてみたいと思います。

まず、私に思い出せるかぎりで一番大切なことは、ウーゴはどこの国にもウソの
口実で根拠のない戦争をしかけて侵略したりしていないということです。ジョー
ジはしています。まちがいなくチャベス大統領は、「カウボーイ外交」を振り回
したり、「かかってこい」などというセリフを吐いたりせず、自国の資源をたく
みに外交手段として使って、世界に友人を作り、他の国に行いを改めさせている
のです。ジョージは、私たちの子どもを軍隊に入れて、他の国に押し入るために
使い、米国の敵を作り、彼の赴くところ死と破壊を残します。

二番目に、ウーゴはとても見事な演説をします。どんな話題であれ、何時間も
(ほんとですよ)話をすることができます。気がきいていて、容姿端麗で、素晴
らしいユーモアのセンスがあって、会う人と人間的なレベルで接触できるように
ちゃんと時間を取ります(あるとき会って話をしましたが、ジョージとは違って、
その間に一度も私を「おかあちゃん」などとは呼びませんでした)。私はベネスェ
ラで3度、彼と会いましたが、そのたびにアメリカ(北と南)の歴史について長
いことまったくメモなしに語り、それが、我々の歴史と今の情勢を非常に意味深
く結び付けたものだったのです。それにひきかえ、ジョージ・ブッシュはテレプ
ロンプターに出てくる文字を読まなければ、ほとんど話などできず、ぶっつけ本
番でしゃべったり、下準備のない質問に答える破目になると、山の中の鹿がやに
わに車のヘッドライトを浴びたようにうろたえます。国民は家族を養うのにかま
けていればいい、自分は言うことがなければ適当にでっち上げておこうとでも思
っているのです。

オドネルがチャベス大統領を独裁者と言ったとき、私は、この人はCIAが2002年に
チャベス政権転覆のクーデタを仕掛けたことも知らないし、2004年にチャベスが
従うことを了承した国民投票で60%の支持票を得て大統領の座に再任され、それ
を「左翼の変人」のジミー・カーターが率いる国際監視委員会が公正な投票だっ
たと認めたことも知らないのに違いないと思いました。ジョージ・ブッシュが政
権についたのは2度とも、クーデタと呼んだほうがいいような疑惑だらけの選挙に
よってです。2度も不正によって選挙に当選して、まるで自分には世界をぶち壊す
権限が与えられたと言わんばかりのふるまいです。いつも「声明にサインをして」
議会を回避して議会には何も言わず、令状なしにアメリカ人の電話を盗聴し、令
状なしに私たちの電子メールを読んだり、銀行の口座の記録を見たりし、違法に
人を拘束して拷問にかけ、9・11で死んだより多くの無辜の人たちを毎月イラクで
殺すイラク駐留をあくまでも続け、CIAの隠密行動をとっている職員の名前を漏ら
すことを承認し、私たちの民主主義をジャック・アブラモフのような連中に競り
売りし、筋金入りの反国連主義者であるジョン・ボルトンを、通常の任命手続き
では通らないと知っていたので、議会休会中を狙って国連大使に任命し、私たち
の国を犠牲にしてネオコンに外交政策の乗っ取りを認め・・・こんなブッシュを
チャベスと比べて、いったいどっちが独裁者ですかと、ノラとMSNBCに聞きたいも
のです。

メディアはベネスェラのほうがアメリカよりもずっと自由です。どの放送局も軒
並みチャベス政権に敵対的な局が、公然と政権転覆を呼びかけることすら、たび
たびあります。私たちの企業所有のメディアは、世界の問題や時事について間違
った情報しか持っていないために、私たちに間違った情報を与え続けるか、さも
なければブッシュ政権のプロパガンダの共犯者です。報道機関のどれかひとつ、
たとえばニューヨーク・タイムズなどがブッシュ一味は何か違法なことをしてい
るなどと、ほんとうのことを報道したりしてごらんなさい。この報道機関は何か
悪いことをしたと糾弾されるのです。逆に、同じ報道機関にもジュディス・ミラー
のようにスコット・リビーと共謀してCIA諜報員のヴァレリー・プレームの身元を
明かすようなことをする翼賛派がいます。MSNBCのニュースショーにも、私でなく
てホストたちが集まって、こういう問題を、我が国の民主主義のハイジャックと
して、あるいはジョージの嘘として、世界に対するテロ戦争として取り上げるコー
ナーがあればいいのです。

チャベス大統領がブッシュ一味によって悪魔化されている理由のひとつは、彼がベ
ネスェラにある米国企業に当然払うべき税金の負担と公正なビジネスをすることを
強いたことです。ウーゴは企業植民地主義に抵抗していて、これを合州国が建国以
来南米に押し付けてきた関係と呼んでいます。そして、私たちが皆知っていること
のひとつは、ブッシュ一味がことのほか企業に頭が上がらなくて、へいこらしてい
るということです。

ウーゴ・チャベスは、ゆくゆくはシモン・ボリーバルの南米連邦構想を実現したい
とも思っています。南米諸国が力を合わせて強くなれば、合州国とももっと平和に
共存できて、南米の問題に対して米国が絶えず行っているいろいろな干渉にも、連
帯して立ち向かうことができるという考えです。北米の人々は、自国の天然資源を
自分たちで管理してほんとうに自立した国をもとうとする南米の民衆に石を投げる
前に、南米に対して米国が行ってきた卑劣な干渉の歴史を知るべきです。

ウーゴは、ジョージが決してしようとはしないこともしようとしています。金持か
ら取り上げて貧しい人たちを助けるということです。いまのベネスェラでは識字率
はほとんど100%にのぼり、医療や教育での社会的事業は彼が政権についてからは
劇的に改善され、貧困率は今も高いとはいえ大きく改善を見せています。ジョージ
は逆ロビン・フッドで、私たちの孫の世代からさえ盗んで、今すでにいかがわしい
やり方で金持になった人々をもっと豊かにしようとしているのです。私は、ウーゴ
のように、自国に住む人たちの生活をよくしようとする大統領のもとで暮らすほう
が、ジョージのように私たちの社会の仕組みをぶち壊して貧しいものをさらに貧し
くする大統領のもとで暮らすよりいいと思います。

私は、MSNBCのショーで言ったように、ブッシュよりチャベスを大統領にしたいと
喜んで認めますが、ベネスェラで暮らしたほうがいいと言ったわけではありません。
私はアメリカ人で、いま明らかに混乱した道を歩んでいても自分の国を愛していま
す。私はまた、自分の国はもっとましな道を歩むことができると信じていますし、
富める者と貧しき者が分かち合い、100%の識字率が達成され、監獄やすでに肥大
しきった軍需産業戦争複合体でなく学校や老人ホームや公園や病院が建てられるア
メリカという夢を実現するために、進んで闘おうと思います。

世界が変調をきたしているとき、私たちの主流の企業メディアが事実を明らかにし、
ニュースを誠意をもって事実のままに伝え、戦争と強欲の手先にはならないるとい
うことも大切です。メディアがカール・ローヴのために復讐をしてやっているとき
何万もの人々が死んでいるのです。

そう、私はジョージ・ブッシュではなくチャベスが大統領だったらいいと思います。
しかし、ほんとうは、私がジョージ・ブッシュの代わりに大統領にしたいと思って
いるひとは、数え切れないほどいるのです。ジョージ・ブッシュは統制のきかない
犯罪者で、その嘘のために弾劾される必要があります。その逸脱のために、職務を
解かれるべき人間です。そして、人道に反する罪のために牢獄に入れられるべき人
間です。

ジョージはそもそも大統領になってはならない人間でしたが、すでにあまりに長く
私の国の大統領の座にいつづけてきたのです。

〔シンディ・シーハンは、2004年4月4日にイラクで戦死した技術兵ケイシー・オー
スティン・シーハンの母。「平和のための戦死兵遺族会」(ゴールド・スター・ファ
ミリー・フォー・ピース)の共同設立者・会長で、Not One More Mother’s
Child、Dear President Bushの2著がある。現在、米兵帰還要請行動12日目。〕

##

馬鹿はベネゼラに失せろ
ジェフ・コーエン

普段わたしは右派からのアドバイスは採用しないことにしているが、今回は例外だ。
何十人もの怒り狂った右派の人間から、お前なんかアメリカから出て行け、ベネスェ
ラへ行けというメールをもらったので、言われたとおりカラカスに行ってみたので
ある。

<てめえをあそこに送り出すための資金集めでもしろってのか、コーエン同士さん よ>

おおむねそんな口汚い調子のメールを彼らが書いたのは、私が2005年にインターネッ
トのコラムでアメリカに暮らす人はシットゴー(ベネスェラ国営石油会社)でガソ
リンを買おうと呼びかけたからである。私は、ブッシュの干渉主義的対外政策に抗
議し、かつベネスェラの革新的な貧困層支援政策を支持するために、シットゴー
「多買」運動を呼びかけたのだった。(昨年冬、シットゴーは米国の低所得層に割
引価格で暖房用の重油を売るプログラムを開始した)。

<おいアホんだら、そんなにアメリカがいやでベネゼラが気に入ってるなら、あっ ちに行ったらどうだ>

保守派の大合唱を聞けるとは悪くない。6月末、私は、米国で一目置かれている人
権擁護団体「平和のための証人」の後援を受けた実情視察団とともにベネスェラへ
と向かった。この旅は、ベネスェラの社会的、政治的状況をなるべく多くの分野と
できるだけ多様な側面にわたって見てこようという、かなりしんどいものだった。
ベネスェラは複雑な国で、それを指導しているのがウーゴ・チャベス大統領。厳し
いブッシュ批判者で、1998年に最初に選ばれて以来、現職である。

帰国後すぐに私は最寄のシットゴーの給油所で車を満タンにした。ベネスェラの貧
しい人たちに数ドルでも送りたいと、以前にもまして本気で願いながら。

<あなたは、この上なく非米国民ですな>

何十年もの間、ベネスェラの莫大な石油の富は、白人系の特権階級によって浪費さ
れ、隠匿されてきた。その一方で大半のベネスェラ人は、ほとんどが原住民、黒人、
あるいは両者の混血だが、悲惨な貧困のうちに暮らしてきた。今日、シットゴーそ
の他からの石油収益は、この国の貧しい多数派の国民に利益をもたらすための社会
事業(ミッションと言う)につぎ込まれている。それは1930年代に米国でフランク
リン・デラノー・ローズヴェルトが行ったニューディールを思わせる。ただニュー
ディールはエコノミストの失敗から生まれたものだが、ベネスェラのミッションは
好景気、今後何年かは続くと思われる石油の高価格に支えられている。

<チャベスのせいで、共産主義が南米にはびこっているのだ>

私が見ることができた限りでは、資本主義がさかんである。外国の石油資本はいま
もベネスェラの石油のおかげでたっぷり利益を得ている。ただ、以前より公正な税
負担をし、油田使用料を払っているというだけだ。ベネスェラに展開するマクドナ
ルドの80店舗も同様で、去年は脱税容疑でほんのしばらくの間店を閉めていた。

多国籍企業と従来の特権層はいまのベネスェラでも健在である。だから、ベネスェ
ラの左翼のなかには、チャベスは「21世紀の社会主義」などと言っているが、ほん
とうは企業帝国主義の手先だ、と批判するむきもある。

ほかの石油輸出国と同様、ベネスェラはかつては国内の生産的経済を衰退するに任
せていた。石油のほかに生産品がほとんどなく、食糧は大半が輸入されていた。こ
んにち、貧困地域の人々は、生産的な農産物の生協を、政府の低利のローンで自分
たちで運営している。私たちが視察した連邦銀行では、国中の女性が経営する企業
に財政援助を行っていた。

私の思うに、もしベネスェラでチャベスの政策が成功すれば(といっても、超大国
米国の裏庭の、腐敗と貧困と犯罪がはびこる国では、それは決してたやすいことで
はないが)、この経済システムは、キューバよりスウェーデンに似たものになるだ
ろう。

異論の余地なく確かなのは、貧しい人たちがチャベス政権に希望を見出していると
いうことである。だから、彼はたぶん西半球で一番人気のある大統領なのである。
それは、米国政府とベネスェラの野党勢力も、12月の再選で彼を負かすことは不可
能だと認めざるを得なかったほどなのだ。

<あなた方リベラル派に共通の問題は、反米的で民主主義を憎んでいることだ>

チャベス政権のベネスェラでは、民主主義への参加がさかんである。それは、ひと
つには分極化が進んだためだが、同時にそれだけ多くの貧しい民衆が初めて政治に
積極的に参加するのに十分な力を与えられたことを感じているためである。2005年
にラテンアメリカ18か国で行われた大規模な世論調査では、ベネスェラ人が他のど
んな統治形態より民主主義がいいと答える率の最も高い国民であること、自分たち
の民主主義に満足を感じ、自分たちの国は「完全に民主的」だと信じる率が最も高
いことが示された。

<オイルマネーは貧しい層には決して行きません・・・あなたはチャベスから報酬 をもらって書いているにちがいありません>

ベネスェラじゅうどこに行っても、公教育に新しい投資が行われている例には事欠
かない。学校は都市部でも地方でも改善されつつあり、無料の朝食と昼食を出し、
美術や音楽、放課後の活動を行うことが義務付けられている。米国と違い、これら
は潤沢な資金を受けて行われている。ユネスコによれば、非識字はほぼ皆無になっ
ており、それは成人教育が貧困層に浸透したおかげである。

貧困な地区では、「メルカル」と呼ばれる連邦出資の店が食料品を市価の半額で売
っている。首都カラカスでは、政府運営の炊き出しの店(スープ・キッチン)が何
千箇所も開かれて、ウイークデーには毎日、原住民たちに無料の昼食を提供してい
る。私たち視察団が拠点にした教会でも日に150食の無料の昼食を出していた。国
のいたるところで、これまでベネスェラ人が住んできた「ランチョ」(掘っ立て小
屋)の連なる貧民窟に変わって新しい住宅が建ち、人々に提供されている。、

何千もの無料の「バリオ・アデントロ」(貧民窟内)診療所が、これまで医者など
見かけられたことのない界隈に建てられている。あんまりたくさんあるので、高速
道路からでもそれとわかるほどだ。そこにいる医師は大半がキューバ人だ。その代
わりにキューバはベネスェラから石油を受け取っている。私たちは、ある地区のリー
ダーに、地区の住民はキューバ人医師にどんな反応を示すのかと聞いてみたところ、
ベネスェラ人の医師で貧しいバリオで働こうとする者はほとんどいないという答え
だった「このあたりの者は、医者がフランス人でもドイツ人でもカナダ人でもメキ
シコ人でもキューバ人でも気にしません。とにかくここに居てくれて私たちを診て
くれりゃあいいんだから」

<ベネゼラに行って、せいぜい独裁者のご機嫌を取ってくることだな>

もしベネスェラが独裁体制なら、メディアの大半を野党が牛耳っている史上最初の
独裁国家だということになる。そして、大統領宮殿のすぐ外で定期的に大統領批判
のデモが行われるという点でも、史上初の。(その主催団体はさまざまだが、とく
に多いのが、約束が果たされていないことと政府の非効率に不満を訴える低所得層
だ)

ベネスェラでは野党が元気にやっている。反チャベス派の批判がテレビにあふれか
えっているのは、特に見るともなしに見ていてもわかることだ。テレビはこの国で
一番強い力をもつメディアであり、それは大半が保守的企業の所有である。反政府
側は、その勢力をテレビに及ぼして、2002年の短命に終った軍部クーデタ(第一撃)、
製油所の経営者によるロックアウト(第2撃)、そして2004年の失敗に終ったリコー
ル選挙(第3撃)を支援してきた。チャベスはこのリコール投票で60%近い支持票
を得たが、これは国際査察団によって綿密に監視された投票だった。

チャベス降ろしの動き(手段は民主的も非民主的もあり)は、ブッシュ政権の支援
を受けてきた。だから、米国の極右宗教団体「アメリカ家族協会」が、インターネッ
トで流した「ベネゼラの独裁者、米政権つぶしを誓う」などというでっち上げにも
とづいてシットゴー不買運動をしようとしたのは、皮肉というほかない。この見出
しは現実をさかさまに見る傾向があるようだ。チャベスはそんな誓いはしていない。
アメリカ家族協会の忠実な信者たちは、私のEメール・アドレスに何ヶ月もそんな
デタラメを送り続けてきた。

<不信者め、もしお前がキリストを嫌うなら、悪魔はいつでもお前を連れ戻すだろ う・・・お前はどんなテロリスト集団とつながっているのだ>

もしあなたが米国は政治的に二極分解していると思っているとしたら、それはベネ
スェラに行ったことがないからだ。クリントンがセックス問題で宗教的右派に弾劾
されたことなど、ベネスェラで行われていることに比べれば子どもの遊びである。
チャベスは、彼を決して大統領と認めない保守主義野党勢力にあわや殺されかけた
のだから。

コラムニストのポール・クルーグマンは米国の「新たな階級闘争」について語って
いる。ベネスェラにあるのは大変古めかしい階級闘争である。チャベスと野党の間
の政治、メディアでの対立は、毒々しく、相手の人格を狙った、むき出しの攻撃で
ある。ベネスェラにいる民間の人権擁護団体は、政府が野党側の大物やジャーナリ
ストを脅すケースが散発的に見られることを嘆きはするが、この国が民主主義の危
機に瀕しているだの、独裁体制になろうとしているなどと聞けば、笑いだす。

こんにち、チャベスは人気があり(彼の支持率の前にはブッシュなど足元にも及ば
ない)、精力的に支持者を駆り立てて国内の反対派にもブッシュ政権にも立ち向か
おうとし、毎日ぶっつけ本番で何時間も語る中では誇張もしがちである。彼は米帝
国とブッシュに対して言葉の戦陣を張って、ブッシュを彼は「ミステル・ダンジェ
ル」(Mr.Danger 危険氏」と呼んでいる。だが、そんなのは、チャベスをアドル
フ・ヒトラーになぞらえたラムズフェルド国防長官や、チャベス暗殺を呼びかけた
福音派の宣教師パット・ロバートソン【元大統領立候補者】に比べれば礼儀正しい
ほうである。

<あなたはチャベスが偉大だという記事を書けばいい。だが、私をはじめとする真 のアメリカ人は彼がいい人間ではなく、可及的速やかに権力の座から取り除かれる べき人間であることを知っているのだ>

私にとって、問題はチャベスのことという以上に、彼の政府が解き放った社会的構
想である。私が初めてベネスェラのことを書いたのは14ヶ月前だが、そのとき私は
単純な経済政策をとることを勧めた。シットゴーで給油して、私たちがそこで払う
金が中東の産油国寡頭支配層のふところでなくベネスェラの貧しい人たちのほうに
行くようにすることである。これは今なお名案である。

今では私は政治的行動もお勧めしている。議会に連絡をとって、米国がベネスェラ
の政治の動きに首を突っ込まないようにさせることである。ベネスェラのことを決
める権利はベネスェラ人のもので、私たちにそんな権利はないからだ。米国はベネ
スェラの保守派を支援する活動をやめ、ベネスェラの右派グループに資金を送るこ
と(アメリカ民主主義基金 NED)は一切やめるべきだ。

そして最後に私は我が右派批判家たちのお勧めを一つ聞き入れたいと思う。ベネスェ
ラへ行っちまえというやつである。その用意ができるのであれば、あの国の社会の
転換を自分で確かめるといい。現地でスペイン語を覚えるといい。数十年も続いて
きた貧困と、無視と、腐敗が、ウーゴ・チャベスの大統領選出につながったことを
確かめ、彼の政治が物事を改善しているかいないか知るがいい。

あの国に赴く人には必ずおまけの利益がひとつある。ガソリンが1ガロン18セント
【19円強。1リットル5円程度】なのである】。ベネスェラ人が高すぎると不平を
言っているか、確かめるのをお楽しみに。

〔ジェフ・コーエン メディア批評家。もとテレビ評論家。近著「ケーブルニュー
ス秘話 企業メディアでの我が受難」”Cable News Confidential: My Misadventures
in Corporate Media,” (http://jeffcohen.org/ で入手可)〕。

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原文タイトルとURL

I would rather have President Chavez than George Bush
Me, Hugo and George
by Cindy Sheehan
http://www.venezuelanalysis.com/articles.php?artno=1779

Go to Venezuela, You Idiot!
by Jeff Cohen
http://www.commondreams.org/views06/0706-32.htm

(お断り 上記の文中では、Venezuelaを現地の発音通り「ベネスェラ」と表記し
ましたが、一部、チャベスに悪意をもつ米国人の発言の場合は彼らの発音を尊重し
て「ベネゼラ」としました。「ミステル・ダンジェル」というのは、チャベス氏の
スペイン語訛りの英語の発音です。)

TUP 萩谷 良

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