TUP BULLETIN

速報640号 トム・エンゲルハート「ハイジャック機アメリカ号のイラク突入」 061015

投稿日 2006年10月15日

FROM: hagitani ryo
DATE: 2006年10月15日(日) 午後10時49分

☆ブッシュ政権の嘘と現実★
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日本ジャーナリスト会議のメールマガジン「JCJふらっしゅ」9月23日
号《1》によれば、9・11事件5周年にあたる9月11日、ブッシュ大統
領はホワイトハウスからのテレビ演説で「テロとの戦いに勝利しなければ、
中東に核武装したテロ国家や急進的な独裁国家が出現する」と警告し、その
前日の10日には、チェイニー副大統領も「ブッシュ政権が主導してきた対
テロ戦で米国はより安全になった」と強調しています。ライス国務長官も
「ザルカウィと旧フセイン政権との関係があった」と述べ、正副大統領を擁
護したそうです。昨今のメディア報道に伝え聞くかぎりでも、アメリカ国民
の大半はこうした言説を信じなくなったようですが、ここで、情報の断片の
なかに真実――細部に悪魔――を見るジャーナリスト、トム・エンゲルハー
トによる分析を読むのは、現況を整理して知るうえで有益であると考えま
す。
 本稿は、9・11事件5周年を期して発表されたものですが、1か月以上
も経過した今になっても、色褪せていないと思います。ただし、英国の有力
“医学誌”ランセット(The Lancet)オンライン版《2》が「イラク戦争に
よるイラク人の死者数は65万5000人以上」とする疫学調査論文《3》
を10月11日付けで公表するなど、事態は予想以上に大きく動いていま
す。井上
1 http://blog.mag2.com/m/log/0000102032/107729343.html
2 http://www.thelancet.com/
3
http://www.thelancet.com/webfiles/images/journals/lancet/s0140673606694919.pdf
[関連記事]朝日新聞オンライン版
http://www2.asahi.com/special/iraq/TKY200610120195.html
シバレイのたたかう!ジャーナリスト宣言
http://www.actiblog.com/shiba/17584

凡例:(原注)[訳注]《リンク》〈ルビ〉

トム通信: ハイジャック機アメリカ号のイラク突入
抗マスメディア毒・常設サイト「トムディスパッチ」
2006年9月12日

(読者の皆さんへ: マザー・ジョーンズのウェブサイトに新設されたばか
りの新企画「嘘また嘘(Lie by Lie)」《1》をお見逃しなく。これはクロ
スリファレンス[関連項目の相互リンク]の行き届いた年表であり、ブッ
シュ政権が、戦争に至るまでの間、また戦争が始まって以後、ついてきた嘘
と情報操作のすべてを網羅している最中である。まだ工事中だが、重要なサ
イトである。ブックマーク[または「お気に入り」登録]をお忘れなく。そ
れに、私がイラクの最新動向を知るのにお世話になっている情報源として、
特に次の3つのサイトに感謝したい。ホアン・コールのブログ、インフォー
ムド・コメント[情報通評論]《2》は、いつもながら欠かせない。アンチ
ウォー[反戦]コム《3》は、他では見つけられない記事を満載している。
ウォー・イン・コンテクスト[文脈のなかで読む戦争]《4》は、重要な記
事を発掘する編集者の眼力が冴〈さ〉えている。トム)
1 http://www.motherjones.com/bush_war_timeline/
2 http://www.juancole.com/
3 http://www.antiwar.com/
4 http://warincontext.org/

9・11とイラクの真の関連、ついに明るみに
――トム・エンゲルハート

2001年9月11日の事件とイラクとには関連がある――これは皆さんが
大統領および副大統領から、さまざまな形で何度も聞かされてきたことだ。
これを真剣に考えて、二つの間にあるつながりというものを見てみよう。

数字は語る

●7月の間に少なくとも3438人《1》のイラク国民が暴力的手段により
死亡した(6月と8月にも、ほぼ同数の人びとが亡くなった)。これは、2
001年9月11日の攻撃による死者の数、2973人《2》よりもかなり
多い。
1 http://www.thestate.com/mld/thestate/news/nation/15466519.htm
2 http://en.wikipedia.org/wiki/September_11%2C_2001

●バグダッドの遺体公示所が公表した修正値によれば、8月にバグダッドだ
けで1536人のイラク人が死亡した。1か月の間に、単一の都市で9・1
1の犠牲者数の半分を超える死者数に達したことになり、これがますます普
通になっている。ワシントン・ポストによれば《*》、この死者数は、自爆
攻撃による犠牲者、その他の市内の病院に収容された人びとを含んでいない
し、首都近傍の町の死者も含んでいない。
http://www.washingtonpost.com/wp-dyn/content/article/2006/09/07/AR2006090700768_pf.html

●9月になるまでに、2974名の米軍人《1》が、イラク国内、その他の
ブッシュ政権の対テロ世界戦争で死亡しているが、これは9・11攻撃の死
者数よりも多い。(9月はじめの9日間で、さらに22名の米兵がイラクで
死亡し《2》、アフガニスタンでは、少なくとも3名が落命している
《3》)
1 http://edition.cnn.com/2006/WORLD/meast/09/03/death.toll/
2 http://antiwar.com/casualties/list.php
3 http://icasualties.org/oef/Afghanistan.aspx

●英紙インディペンデントのエミリー・ゴスデンとデイヴィッド・ランドー
ルによれば《1》、ブッシュ政権の対テロ世界戦争は、5年目で少なく見積
もっても9・11の死者数の20倍の死者を出すという結果を招き、多く見
積もると、60倍に達する。対テロ世界戦争は「最低6万2006人の人び
とを直接に殺し、450万人の難民を発生させ、世界中の貧困国の債務を償
還できる額を超える財政負担を米国にかけている。その他の数字にされてい
ない死者――抵抗勢力、2003年侵略戦争さなかのイラク軍将兵、欧米メ
ディアに個別事例として記録されない人びと、負傷により亡くなった人びと
――の推定値を勘定に入れれば、死者数は18万人に達するかもしれな
い」。オーストラリア人ジャーナリスト、ポール・マグーによれば《2》、
イラク政府当局(その他《3》)は、同国における2003年以降の死者数
は「5万人――対人口比で換算すれば、アメリカの57万人に匹敵する規模
――またはそれ以上に達する」と見積もっている。
1 http://www.truthout.org/docs_2006/091006A.shtml
2 http://fairuse.100webcustomers.com/fairenough/age25.html
3 http://www.iraqbodycount.net/

●先週、米国上院がイラクとアフガニスタンの軍事作戦のために630億ド
ルの追加予算《1》を承認したが、今年になってから現時点までの両国にお
ける軍事活動にかかった経費は、月平均100億ドルである。これでブッ
シュの戦争の(納税者負担による)経費は現時点までに約4690億ドルに
達し、なおも膨らみつづけている。これは、グラウンド・ゼロ記念物の予想
経費の総額プラス超過分《2》がすべて認められた場合の金額の469倍に
相当するものであり、最近訂正されたように記念事業の予算が5億ドルに縮
小するなら、さらにその2倍になる。(忘れないでほしいが、これら2つの
戦争の見積経費には、兆億ドル単位になるはずの退役兵のための医療《3》
をはじめ、将来に必ず発生するさまざまな経費は含まれていないのである)
1
http://www.signonsandiego.com/news/nation/20060907-1543-defensespending.html
2.http://www.tomdispatch.com/index.mhtml?pid=83814
3 http://www.tomdispatch.com/index.mhtml?pid=62903

●2003年、イラク侵略の完了時、ブッシュ政権がイラクに駐留させてい
た兵力は15万人だった《1》。それから3年半近く、太平洋における第二
次世界大戦に勝利を収めるのに要したのとほぼ同じ期間が経過したいま、し
かもマスメディアが来るべき兵力の「削減」についてさかんに報じているに
もかかわらず、米軍兵力は現実に増大しつつある――先月の例では、1万5
000人が増派された。現時点の兵力は14万5000人《2》で、占領開
始時のそれよりもたった5000人少ないだけである。(侵略開始前、ポー
ル・ウォルフォウィッツ国防次官[当時]ら政権幹部たちは、バグダッド占
領から3か月以内に駐留兵力を3万人ていどに削減できるに違いないと見て
いた)
1
http://www.usatoday.com/news/washington/2003-06-02-white-usat_x.htm
2
http://news.yahoo.com/s/ap/20060907/ap_on_go_ca_st_pe/us_iraq_troops

再建の実態

アメリカ国民は、9・11を記憶にとどめるために、マンハッタンのグラウ
ンド・ゼロに壮大な超高層ビル4棟を建て、巨大でやたらとコスト高な記念
の窪地を造ろうと計画している《1》が、バグダッド市民が考えることはも
う少し現実的である。彼らが乏しい財源をはたいて作ろうとしているのは、
遺体公示所の支所(冷凍装置完備)2か所なのだ《2》。そこに、いまあの
国で一番潤沢にあるもの、死体を収容するために。これで市内の死体公示所
の収容能力が一日あたり250体に増やせる。フル稼働すれば、月に750
0体。考えてみてほしいが、これが今後ますます深刻化する事態に備える対
応である。
1

2
http://www.washingtonpost.com/wp-dyn/content/article/2006/09/07/AR2006090700768_pf.html

ニューヨークでは、係争や経費超過のために、各種記念物の建設は軌道に乗
せることができない一方、バグダッドのどまんなかには、本来ならグラウン
ド・ゼロの本当のアメリカの記念物として考えられたものかもしれないもの
が建てられつつある。しかもそれは、マンハッタンに建つ予定の建築物やイ
ラクで提案されている他の建設プロジェクトのどれとも違って、予定どおり
に進行している。前記のポール・マグーによれば《*》、7億8700万ド
ルをかけた21階建て「大使館」――要塞化された(首都の救いようのない
電力や水道に頼らない)総合ビル――は、作り付けの地対空ミサイル発射装
置の他、スターバックスやクリスピー・クリーム[ドーナッツ]店、美容
院、水泳プール、スポーツ・センターまで備え、投資金額以上のお値打ちも
の。予告のとおり控えめに3500人ものスタッフを擁するこの「大使館」
は、基本的に「ワシントンの延長」なのであり、ブッシュ政権のありったけ
の傲慢さを見せつけながら、われわれはここから出ていかない、断じて出て
いかないというメッセージを放っているのだ。
http://fairuse.100webcustomers.com/fairenough/age25.html

記録破りの月日

●路傍爆弾(またの名、即席爆破装置)、すなわち「米軍兵士にとって一番
の殺人兵器」による攻撃は、今年の夏、記録的な数にまで増えた――ワシン
トン・ポストによれば《*》、8月の件数は1200であり、2004年1
月に比べて4倍に達した。その一方、イラク国民による爆弾や攻撃の通告は
急激に減っている。その数は4月に5900件だったのが、7月には370
0件に落ちこんだ。(「通りへ出ることが、それほど命懸けでなくできるよ
うになれば、状況は好転するだろう」というのが、即席爆弾対策統合機関
[米陸軍参謀本部付]の局長、モントゴメリー・C・メグス退役陸軍大将が
述べた希望的観測の弁だった)
http://www.washingtonpost.com/wp-dyn/content/article/2006/09/07/AR2006090701372.html

●このほど公表された、ペンタゴンが議会に四半期ごとの提出を義務づけら
れている評価報告によれば《*》、昨季のイラク国民犠牲者数は51パーセ
ントという記録的な急増を見せていて、たった2年間で4倍に膨れあがって
いる。
http://www.uslaboragainstwar.org/article.php?id=11505

●同報告によれば、米軍とそれに連携するイラク政府軍に対する月間の攻撃
数は約800件に達し、2004年初期に比べて倍増している。スンニ派反
抗勢力の中核地帯、アンバル州(海兵隊の「非常に悲観的な《*》」秘密評
価報告が「われわれは軍事的に敗北していないが、政治的には敗北している
――この地では、戦いは一進一退である……」と述べている地域)では、攻
撃数が一日平均30件になっている。
http://www.washingtonpost.com/wp-dyn/content/article/2006/09/10/AR2006091001204.html

●対テロ戦争には、本筋の欄外にこんな記録もある――アフガニスタンです
でにそうとう大規模になっていたアヘンの生産量が、今年は少なくとも50
パーセント増大して、世界供給量の92パーセントという驚異的なシェアを
占めることになると予測される《1》。国連薬物犯罪事務所のアントニオ・
マリア・コスタ事務局長によれば、これは世界の麻薬消費量を30パーセン
ト上回ることになる――他にも、同様な記録が不気味に浮上している。(一
方、ワシントン・ポストによれば《2》、オサマ・ビン=ラディンの所在の
探索は最低の成績を記録している。彼の足跡は「杳〈よう〉として知れ
ず……オサマ・ビン=ラディンの捕捉または殺害を任務とするアメリカの特
殊部隊は、2年以上にもわたって、信用するに足る情報をひとつも得ていな
い」)
1
http://news.yahoo.com/s/afp/20060902/wl_asia_afp/afghanistandrugscrimeun
2
http://www.washingtonpost.com/wp-dyn/content/article/2006/09/09/AR2006090901105_pf.html

イラク国民が陥った状況

内戦、近隣社会の民族浄化、ますます激化する反乱、最悪の治安状況に並ん
で、イラク国民を見舞っているのは、今年おそらく70パーセントに達する
急激なインフレ(昨年の32パーセントの2倍以上)《1》、上がらない賃
金(仮にありつけるとしても)、金融システムの「不活発」、年間270
パーセントも上がるガス・電気料金、広範な腐敗(先週、国連後援の監査
《2》で、昨年、数億ドルものイラクの石油収入が不正に記帳されるかまた
はごっそり消え去ってしまっていたことが発覚した)、当てにならない電力
や飲用水の供給、推定により異なるが15パーセントから50〜60パーセ
ント《3》の範囲に頑強に高止まりしたままの失業率(最近のペンタゴン議
会報告に引用されたイラク政府の発表によれば、失業率18パーセント、不
完全就業率34パーセント)、世界第3位の石油埋蔵量を誇る国なのに、政
府が乏しい財源から8億ドルを割いて近隣諸国から精製石油製品を輸入せざ
るを得ず、果てしないガソリン・スタンドの給油の列《4》と夜通しの順番
待ちが日常生活の主要部分となってしまうような(「満タンにするのに、数
日分の賃金か修道士なみの忍耐、またはその両方を必要とする……」)ガソ
リン・灯油・ガスの深刻な不足《5》、侵略ですでにボロボロになり、それ
以後もずっと衰退し続ける石油産業(目下、イラクの3大製油所は生産能力
の半分の稼動率で、侵略前の原油精製量の半分しか精製しておらず、バイジ
にある国内最大の工場にいたってはわずか7.5パーセントの稼働率で操業
している場合もある)、ガソリンに対する政府助成金の大幅な削減(国際通
貨基金の要請による)、増加する栄養失調《6》のため、ペンタゴン議会報
告によると25.9パーセントにもなる児童の発育阻害といった苦境。
1 http://uruknet.info/?p=m26150
2
http://www.canada.com/montrealgazette/news/story.html?id=0ccb57a1-0dd9-4d8d-a90c-b418650c450b&k=41440
3
http://www.tompaine.com/articles/2006/09/08/iraqs_reality_sinks_in.php
4
http://www.alertnet.org/thenews/newsdesk/IRIN/055fe3e8901e65fe36ce0f1a211f56ca.htm
5 http://cnews.canoe.ca/CNEWS/World/2006/09/05/1803957-ap.html
6 http://www.abc.net.au/news/newsitems/200605/s1639071.htm

言い換えると、経済的に見るかぎり、イラクはすでに解体された《*》ので
ある。
http://www.abc.net.au/news/newsitems/200605/s1639071.htm

ハイジャック機アメリカ号のイラク突入

チェイニー副大統領は、2001年12月9日のミート・ザ・プレス《1》
[NBCテレビの政治家インタビュー番組]で、9・11攻撃に対してイラ
クの関与があったと公式に主張しはじめた。彼は、ティム・ラサート[番組
ホスト]に、ハイジャック首謀犯のモハメド・アタが犯行前の4月にプラハ
で「イラク諜報機関の幹部要員」と会っていたことは「十分に確認されてい
ます」と語った。2002年9月8日《2》、彼は番組に再出演し、さらに
強い調子の発言で、この仮説を裏付けようとしている(「明らかに〔アタ
は〕何回かの機会にプラハに行っています。そして世界貿易センターに対す
る攻撃の数か月前に少なくとも一回は、彼がプラハでイラク諜報機関の高官
と一緒にいたということを示す報告をわれわれは得ています」)。チェイ
ニーや大統領、その他の政府高官から発せられる、この手の発言は他にも山
ほどあり、いつも、イラクと9・11、あるいはサダムとアル=カイダ、あ
るいはサダムとザルカウィの近縁関係をほのめかしながら、関係があったと
の最終判断は視聴者たちに任せるのが常だ――ことごとく、文字どおりの
ブッシュワ(Bushwa)=戯言〈たわごと〉だったのである。
1
http://www.whitehouse.gov/vicepresident/news-speeches/speeches/vp20011209.html
2 http://www.mtholyoke.edu/acad/intrel/bush/meet.htm

このようなものは、イラク侵略の前にも、間にも、後にも、情報機関内部で
も、他の場でも、そのまやかしを暴かれていた主張である。私たちは、つい
先日になって遅ればせながら一部公表された米上院諜報委員会報告によっ
て、ブッシュ政権高官たちがサダム・フセインとアル=カイダとの関係はイ
ラク侵略を正当化すると断言していたときに、米国諜報部局の分析官たち
《*》はこの高官の主張に強い異議を唱えていたことを知った。また、諜報
関係者たちはサダム・フセインがザルカウィの捕縛をじっさいに試みていた
ことに気づいていたということも、また去年の秋、CIAが、ザルカウィと
サダムがなんらかの共謀関係にあったという主張を全面的に否定したことも
知った。これでもなお、副大統領や大統領は、主張を撤回するときでさえ、
言外に、または公然と、このようなつながりを語るのをやめようとしない
――大統領にいたっては、先日の8月21日になってもまだ、サダムは「ザ
ルカウィと関係していた」と主張する始末。
http://www.washingtonpost.com/wp-dyn/content/article/2006/09/08/AR2006090800777.html

よくあるように、こういう嘘や情報操作の陰には、さらに深い真実が潜んで
いる。この場合、これを願望成就の真理と呼ぶことにしよう。9・11とイ
ラクとの関係は不幸なことに、あまりにも現実である。9・11後のショッ
クの熱気のなかで、ブッシュ政権がそうしてしまったのだ。

つながりというなら、こう考えていただきたい。9・11の直後、米国大統
領と副大統領とは、せいぜいカッターナイフと催涙ガスていどの脅し文句と
いうローテク凶器を振りかざし、私たちの国をハイジャックした。その後、
彼らは大部分の乗客を載せたまま、それにユナイテド航空93便[ペンシル
ベニア州に墜落したハイジャック機]の予備燃料がどれだけあるかも確かめ
ずに、アフガンを領空侵犯してから、この国家という飛行機をじかにイラク
に激突させ、カトリーナ級の災害を引き起こし、それがはてしなく続いて、
あの国を――南はバスラから北はクルディスタン国境まで――地球規模のグ
ラウンド・ゼロに変貌させてしまったのだ、と。

[筆者]トム・エンゲルハートは、書籍編集者・著述家。ネーション研究所
提供、「抗マスメディア毒・常設サイト」トムディスパッチ・コムの主宰者
であり、「アメリカ帝国プロジェクト」の共同創始者。著書に、冷戦期のア
メリカ勝利主義の歴史を描いた“The End of Victory Culture”《1》、出
版業界の実情がテーマの小説“The Last Days of Publishing”《2》があ
り、この秋の最新刊にトムディスパッチ・インタビュー第1集“Mission
Unaccomplished: Tomdispatch Interviews With American Iconoclasts And
Dissenters (Nation Books)”《3》。
1 http://www.amazon.co.jp/gp/product/1558491333
2 http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/1558495061
3 http://www.amazon.co.jp/gp/product/1560259388

[原文]
Tomgram: Crashing the Plane of State into Iraq
posted September 12, 2006 at
http://www.tomdispatch.com/index.mhtml?emx=x&pid=120725
Copyright 2006 Tom Engelhardt

[翻訳]井上利男 /TUP