TUP BULLETIN

速報779号 アメリカ市民がオバマ候補に送る公開書簡

投稿日 2008年8月30日
わたしたちが信じるに足る変革 Change We Can Believe In


ブッシュ王朝の終わりを告げる米国大統領選挙は、ホワイト・アメリカン男性 (70歳代)、ホワイト・アメリカン女性(60歳代)、アフロ・ホワイト・アメリカン男性(40歳代)という、過去に例を見ない取り合わせで戦われて来ました。

優勢が伝えられて来たオバマを、マケインが抜いたとの報道が見られるようになっています。そうした状況の中で、この選挙運動の最初からオバマが掲げて来た“Change"というスローガンに期待を寄せる人びとによって、その内実をより鮮明にするよう迫る書簡が公開されました。

8月30日の時点で24280名が署名に参加した書簡は、変革あるいは改革から改変、そして改変から変更あるいは変化へと、オバマがその姿勢の質と内容を低下させて行くのではないかと、深い憂いをもって、問い掛けています。

どのような答えが出されるでしょうか。

この書簡で問い掛けているものとオバマ陣営の日々の言動、そして世論調査の 行方などを見比べながら答えを予想して診る。そうすることは、この選挙に投票権は持たないけれど、その結果には避けがたく組み込まれるわたしたちの、決して小さくはない責任だと考えます。

訳/岸本和世

バラク・オバマ氏に送る公開書簡 2008年7月30日

親愛なるオバマ上院議員

若い有権者にとって先例のない年となっていますが、戦いはまだ終わっていま せん。学生であるか否かに関係なく、すべての若者が11月に投票できるように するためには、どうしたらよいでしょうか。

わたしたちは、あなたが米合州国大統領選挙運動で非常に大きな成果を挙げた ことを祝して、この手紙を差し上げることにしました。

あなたの立候補は、この国では何十年も見られなかった政治的熱意のうねりを 引き起こしました。演説で、より良い未来のビジョンを次のように描いていま す。米国は、国際的にはその好戦的な姿勢を脱ぎ棄てて外交に、国内では市民 のより大きな公平と自由に、政策の焦点を絞る。このビジョンは、多くの有権 者に政治的な立場を超えて感動を与えています。数十万にもおよぶ若者たちが はじめて政治的なプロセスに参入し、アフリカ系アメリカ人有権者があなたを 支持して集まり、相も変らぬ政治から遠ざかっていた人たちの多くが再び参与 しています。

今日あなたは、ご自身の活動の全体を包むものとして主張して来た変革を深く 信じる運動の先頭に立っています。集会に出席し、運動に寄付し、ウェブサイ トにアクセスする何百万の人びとがこの新しい運動のエネルギーと情熱の力強 い証しです。

この運動は二つの理由から極めて重要です。第一に、それは11月にジョン・マ ケインに対する勝利を確かにする手がかりとなります。ブッシュ政権の下での 強欲と軍事力による冒険主義の長い夜は、マケイン政権になれば継続されるし、 簡単に終わらせることはできないでしょう。熱心なボランティアや運動員の集 団は、ブッシュ時代の幕を閉じるべく、選挙日に出かけるよう有権者に働きか けています。第二に、この運動を支持する勢力があなたを大統領に迎えること によって、運動の綱領となって来た変革の実現が可能となります。真の変革を 求める人々の上にのしかかっているアメリカにおける政治の金力と既成の権力 という重荷は、あなたを支持する広範で活き活きした草の根の基盤だけが、そ れと対決することができるのです。アメリカにおける政治の金力と既成の権力 という重荷が真の変革を求める人々の上にのしかかっています。それと対決す ることができるのは、あなたを支持する広範で活き活きした草の根の基盤だけ です。

ですから、あなたに大統領選の勝利をもたらしそれ以降の職務を可能にする人 びとの声に、ぜひとも耳を傾けてください。

予備選に歴史的な勝利をして以降、憂慮すべき兆候が見受けられます。それは、 運動を支えて来た多くの人と共有していたはずの中心的な約束から、あなたが より臆病で中道的な立場へと離れつつあるという点です。具体的に指摘するな ら、テレコム会社の不法な盗聴の訴追を免除するFISA法の修正に賛成票を投じ たことです。それは支持者の多くを怒らせ落胆させました。

わたしたちは、どのような民主主義にも歩み寄りは必要だと認識しています。 大統領という最高の職務を得ようとする人たちが、耐えねばならない圧力がい かに強烈であるかを理解します。しかし、あなたの運動の特徴となって来た立 場からの後退は、選挙に勝利し約束している変革をもたらすために必要な力強 い支援を示して来たこれまでの運動を弱体化させることになります。

あなたが示して来た主要な見解を下記に挙げましょう。わたしたちはそれらが 運動を支えるために不可欠だと信じています。

# 確定した時刻表に基づいてイラクから撤退すること。

# より革新的な財政及び福祉制度を通して、金持ちと一般市民との間の格差を 縮小するよう、現今の経済危機に対処すること。公共投資によって雇用を創出 し、崩壊しつつある国のインフラを修復すること。公正な貿易政策を進めるこ と。労働組合を組織する自由を回復すること。政府による労働法を有意に施行 し、産業の規制を意味あるものにすること。

# 全国民が加入する健康保険制度を創ること。

# 化石燃料に消費している数十億ドルを代替エネルギー源の開発に移すことで 経済を変革し、数多くの環境に優しい関連産業と雇用を創造する環境政策を打 ち立てること。

# ブッシュ政権時に盛んだった、拷問や人権と自由の侵害および三権分立を逸 脱する行政権の濫用を終わらせること。

# 人工中絶を選択する権利と改善された中絶手段および産婦人科医療サービス を受ける女性の権利を実現すること。

# 子どもの教育機会均等法や関連諸法令の改革を通して、教育における機会格 差などを含む都市地域の生活環境の改善と人種的不平等を終らせること。

# 入国しようとする人びとに人道的に対応し、既に米国内に在住する人びとに 市民権を得るための筋道を提供する出入国管理システムを確立すること。

# 助力を必要とする数十万人を留置所に監禁するよう定めている薬物法を改定 すること。

# 政治プロセスの改革を通して、金力と企業のロビイストの影響を減らし、一 般市民の声が大きく反映されるようにすること。

以上がわたしたちの信じる変革です。その他の諸問題、すなわちイラクにおけ る残留部隊と傭兵隊の扱い、アフガニスタンにおける米国の軍事的介在の拡大、 イスラエル―パレスチナ紛争の解決、そして死刑制度などについてですが、あ なたの主張は、最近あなたが「左側にいる友人たち」と呼んだわたしたちの多 くが持っている主張といつも異なっていました。11月の選挙に勝利したなら、 同意できる場合にはわたしたちはあなたの立場を支持するよう努力をし、でき ない場合には異議申し立てをします。あなたが大統領に選ばれたなら、前向き で建設的な対話がなされることを期待します。

あなたがひたすら明瞭に言い表した諸原則に固く立つなら、わたしたちに信じ るよう鼓舞して来た変革をこの国にもたらすことに成功するでしょう。

以下は、この公開書簡に初期に署名した者51名の氏名です(但し、日本語での 表記を省略):

Rocky Anderson

Moustafa Bayoumi

Norman Birnbaum

Tim Carpenter

John Cavanaugh

Juan Cole

Chuck Collins

Phil Donahue

Barbara Ehrenreich

Tom Engelhardt

Jodie Evans

Thomas Ferguson

Bill Fletcher Jr.

Eric Foner

Milton Glaser

Robert Greenwald

William Greider

Jane Hamsher

Tom Hayden

Christopher Hayes

Richard Kim

Stuart Klawans

Richard Linklater

Bill McKibben

Walter Mosley

Eli Pariser

Richard Parker

Gary Phillips

Jon Pincus

Chip Pitts

Frances Piven

Elizabeth Pochoda

Katha Pollitt

Marcus Raskin

Betsy Reed

Bob Scheer

Herman Schwartz

Jonathan Schell

Gene Seymour

David Sirota

Norman Solomon

Mike Stark

Jean Stein

Matt Stoller

Jonathan Tasini

Zephyr Teachout

Studs Terkel

Katrina vanden Heuvel

Gore Vidal

David Weir

Howard Zinn

原文: "Change We Can Believe In: An Open Letter to Barack Obama," The Nation (August 18, 2008). URI: http://www.thenation.com/doc/20080818/open_letter