TUP BULLETIN

速報792号 イラク・アフガニスタン帰還兵の証言 No.8 マイケル・トッテン

投稿日 2008年12月19日

配信  2008年12月20日(土)

冬の兵士 マイケル・トッテン
人種差別と戦争: 敵を非人間化する(3)

訳 パンタ笛吹 / TUP冬の兵士プロジェクト


今こそ魂が問われる時である。夏の兵士と日和見愛国者たちは、この危機を前に身をすくませ、祖国への奉仕から遠のくだろう。しかし、いま立ち向かう者たちこそ、人びとの愛と感謝を受ける資格を得る。トマス・ペイン、小冊子「アメリカの危機」第1号冒頭1776年12 月


メリーランド州シルバースプリング公聴会
2008年3月13〜16日

マイケル・トッテン 画像出典;IVAW 証言ビデオマイク・トッテンです。私は第101空挺師団の第716憲兵隊大隊に服務していました。2003年4月にイラクに派遣され、翌年4月に帰国しています。派遣されてから最初の6カ月間は、部隊の中佐と最先任上級曹長が使う装甲警備車の運転手を務めました。最後の6カ月間は、第194憲兵隊中隊の前線小隊に戻されました。

私たちの任務には、カルバラにある刑務所の運営が含まれていました。その刑務所は、敵の戦争捕虜を抑留するためではなく、一般受刑者を収監するための施設でした。受刑者らがイラク警察によって護送されてくると、私たちが収監手続きをしながら、アメリカ流の扱い方を見せつけることになっていた。

私たちは必ずしも戦争捕虜の責任担当ではなかった。そこへ、2003年10月17日の夜、イラク警察が6人の男たちを連行してきました。イラク警察は、男たちは前夜の事件[待ち伏せ攻撃]に加わっていたから、連合軍の基準に基づき、戦争捕虜と見なされると主張した。

連れてこられたとき、すでに男たちはひどく殴られていたように見えました。彼らはコンクリート壁の前に並ばされた。そして両手の指を交差させて……指を交差させるように……私たちがそうしろと命じました。指を交差させるのは制御方法のひとつです。中指と人差し指を両方つかんで、ぎゅっと絞りあげると、かなりの痛みを伴いますから。

両手の指を交差させて、額をコンクリートの壁につけさせ、両足首を重ねさせ、両手を頭の上にあげさせる。そうやって身体検査をして、収監手続きを済ませる。彼らは鑑札をつけられ、検査され、そして殴られた。殴ったのはアメリカ兵だけじゃない。ブルガリア兵も殴った。ポーランド兵も殴った。イラク警察官も殴った。そして私も殴りました。

[ここでトッテンは沈黙。長い間があった]

ひとりの男の顎をつかみ、目をのぞきこんで、頭を壁に叩きつけてやった。そしてまた目をのぞきこみながら、「グリリーを殺したのはお前だな」と言った。男は倒れた。私は蹴りつけた。巨漢のイラク人警察官がいました。たぶん、この会場でいちばん大きい警備員と同じくらいの体格だったでしょう。その警察官が、コディアック熊ほどもある大きな手で、別の男の側頭部を6回ほど殴りつけた。

私が思ったのは……男を見て笑いながら……「ざまあみろ。当然の報いだ」くらいのことでした。しかし男たちが本当に……これは士官が……私の上官がいる前で、何人もの下士官たちの目の前で、行われたことです。男たちが、あの6人の捕虜が、その後どうなったか知らない。私には何も……どこに行ったのかも知らない。何ひとつ知らない。

私は今日ここで、まだ帰還していない人たち、声をあげられない人たちに代わって、証言しています。これは偶然に起こった特別な出来事ではありません。下士官たち、士官たち、多国籍軍の兵士たちの目の前で起きたことです。誰もが加害者だった。そして同時に目撃者でした。

10月16日……いや10月17日の前夜……16日の夜に、上官だった中佐も殺されました。私は怒りを感じています。だからここにいる。いろんなことに怒っている。アメリカ人が海外でしていることに、怒りを感じる。私たちの大統領が、イラク戦争は成功したと空々しく言い続けることに、怒りを感じる。そして、この国の市民にも、怒りを感じる。この占領に無関心な市民に、怒りを感じている。

これが今日ここで証言するもうひとつの理由です。こんなことが私たちの名の下に行われている。あなた方すべてが、一人ひとりが、同じように責任を負っています。

私は、自分の行為について心から謝罪します。やってしまったことはもう消せはしない。イラクの国民と祖国の国民に私は許しを請います。もうこれ以上、こんなことは続けさせません。

ペトレイアス将軍。あなたは私のことを覚えていないかもしれない。あなたはかつて私を指揮していた。あなたはもう兵士たちのリーダーじゃない。あなたは、自らの利益のために、軍隊を不当に利用してきた。あなたは、ただのチアリーダーになりさがり、アメリカを破壊しているこの占領政策を応援している。

ペトレイアス将軍。あなたは、その手で、この勲章を私の胸につけた。2003年のバビロンで、10月16日に起きた事件の後に。私はもうこれ以上、あなたの個人的な利益と、政治野心のために、操られる人形でいるつもりはない。

[マイケル・トッテン元特技兵は「あなたは、ただのチアリーダーになりさがり、アメリカを破壊しているこの占領政策を応援している」と言い切って、目の前にあった一枚の紙を手に取った。証言が終わったと思った聴衆は立ち上がって拍手を送った。しかしトッテンが手にしたものは、自分の原稿ではなく、青銅星章の授与に際して受け取った召喚状だった。召喚状には、デイビッド・ペトレイアス将軍の署名がある。トッテンは「あなたの個人的な利益と、政治野心のために」という言葉に重ねて、その召喚状を引き裂いた]
 

凡例: [ ]は訳文の補助語句。


2008年9月、反戦イラク帰還兵の会(IVAW)、冬の兵士の証言集を全米で刊行。

仮題『冬の兵士証言集──イラク・アフガニスタン帰還兵が明かす戦争の真相』
編集アーロン・グランツ

Winter Soldier: Iraq and Afghanistan: Eyewitness Accounts of the Occupations, by Iraq Veterans Against the War, edited by Aaron Glantz,
(Haymarket Books; September, 2008).
>>Haymarket Books
>>amazon.com

★岩波書店より刊行予定。現在、TUPにて邦訳作業中。

 イラク戦争を追いつづけてきたジャーナリストが『証言集』の書評を書いている。

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  • TUP冬の兵士プロジェクト 証言の一覧
  • マイケル・トッテンの証言ビデオ
    http://ivaw.org/wintersoldier/testimony/racism-and-war-dehumanization-enemy-part-1/mike-totten/video
    http://warcomeshome.org/content/mike-totten
  • 反戦イラク帰還兵の会 公式サイト
    Iraq Veterans Against the War
    http://ivaw.org/
  • 反戦イラク帰還兵の会「冬の兵士」特集ページ
    Winter Soldier: Iraq & Afghanistan
    Eyewitness Accounts of the Occupations
    http://ivaw.org/wintersoldier
  • KPFAラジオ プロジェクト"The War Comes Home"
    http://www.warcomeshome.org/