TUP BULLETIN

速報805号 ダール・ジャマイル「戦争という狂気」

投稿日 2009年1月12日

戦争の狂気から目をそむけるな


イスラエル軍がパレスチナ自治区ガザ地区に侵攻して、すでに三週間目にさしかかろうとしている。国際人権団体ヒューマンライツ・ウォッチによると、人口140万人がひしめく世界で有数の人口過密地帯ガザで、イスラエル軍は白リン弾を使用しており、国際法違反を指摘している。また劣化ウラン武器の使用も懸念されている。世界中でイスラエル軍撤退を訴えるデモが繰り広げられているが、その様子を報道する主流メディアはほとんどない。何もなかったかのようにクリスマスや正月を祝い、ショッピングを楽しむ人々と、ガザで繰り広げられる地獄絵のギャップはあまりにも残酷だ。国連安保理決議ではアメリカが棄権し、実質的な影響力を及ぼせない無能ぶりを見せている。世界が麻痺状態の中、イスラエル軍はガザ上空からビラを散布して「攻撃拡大」を予告した。私たちはこの大量殺戮を許すのか。
下記のダール・ジャマイルの記事が掲載されてから、被害者の数はおよそ二倍になっている。古来から人類を苦しめてきた戦争の狂気が荒れ狂っている。私たちの社会がこの戦争の狂気から目覚めるためには、まず、狂気そのものをしっかり見据える目と、声をあげ、行動する市民の連帯が必要だ。
翻訳:宮前ゆかり・安濃一樹/TUP


極悪非道なる戦争

ダール・ジャマイル
2009年1月6日| T r u t h o u t
イスラエルによるガザ侵攻が深まるにつれ民間人死者が増える。
(撮影:アビード・カティーブ / ゲッティ・イメージ・ヨーロッパ)

http://dahrjamailiraq.com/the-monstrosity-of-war#more-1405
http://www.truthout.org/010609A

幾年ものあいだ予期されてきたと雖も
この悪行の数々
このおぞましい暴力
この計り知れない苦難のかさ
耐え難きこと変わりなし

アメリカ詩人、ロビンソン・ジェファース

フランス通信社(AFP:Agence France-Presse)によると、土曜日にイスラエル軍がガザに侵攻し始めたときに最初に殺されたのは一人のパレスチナの子供だった。

日曜日には、イスラエル軍用機が住宅に落とした爆弾で中に居たパレスチナの女性と彼女の4人の子供たちが散り散りに吹き飛ばされた。彼らもまた9000人もの軍隊がガザ地区に対して行っている継続的な空襲や地上攻撃の犠牲者521人(執筆時点)のうちに数えられる。半数が17歳以下という150万人のパレスチナ人が故郷とするこの世界有数の人口過密地域に対し、イスラエル政府は今回の軍事攻撃を開始した。

この猛攻撃について、イスラエルの新聞ハアレツは次のように書いている。

「地上侵攻に先立ち、標的を『弱体化させる』ために、午後4時ごろから大規模な砲撃を行った。ここ数日間にガザ市街地に沿って配備されていた砲兵隊が、ハマスの各標的と国境近くにある広場に対して砲撃を開始した」
「数百発の砲弾が発射された。これには広場の数々を狙ったクラスター爆弾も含まれる」

イスラエルは、ハマスが数ヶ月間守ってきた休戦協定を破り11月4日にガザへの軍事攻撃を開始した。さらに国連難民救済事業機関と世界食糧援助プログラムに配達される食糧供給を封鎖した。続いてガザの発電運転に必須となる燃料の配給が犠牲となった。最後に、イスラエルは報道陣や救援作業員がガザへ入ることを禁止した。

12月中旬、イスラエル訪問中に、国連人権調査員リチャード・フォークが、イスラエルによるガザ封鎖を「人道に対する犯罪」および「甚だしく計り知れない国際法違反」と呼んだことは注目に値する。

プリンストン大学における国際法の名誉教授であり、パレスチナ領土内での人権に関する国連特別報告者でもあるフォークは、「人道に対する犯罪に等しい諸政策により集団的懲罰を受けている一般市民を守るために、合意された規範としての責任」を果たすよう国連に要請した。フォークはさらにイスラエル軍および文民職員に対する犯罪訴追手続きの可能性を求めて、国際犯罪裁判所の調査を要求した。

このため、彼はテルアビブのベン・グリオン空港で20時間拘禁されたあとイスラエルから追放された。

イスラエル軍の戦車や地上軍がガザになだれ込み、最悪の戦闘(交戦方法を比較検討することに意味があるかどうかは別として)、つまり市街戦を繰り広げ、双方の残虐行為が続行されている。時間が経てば状況は当然ますます悪化するだけだと誰もが考えるだろうし、戦争の進行段階としてそれは必然的である。

「鋳造された鉛作戦」と名づけられたイスラエルによる最新の攻撃は、12月27日以来520人以上のパレスチナ人の命を奪った。ガザの医療担当職員によると、負傷者の数は2400人を超え、ほとんどが民間人である。

ハマスのロケットにより5人のイスラエル人が殺された。うち一人は兵士であり、4人は民間人であった。パレスチナ民間人を殺し、負傷させたイスラエルの攻撃が戦争犯罪であると同様に、ハマスがイスラエル内に大いに不正確な砲撃を打ち込んで、イスラエル民間人を負傷させ殺すこともまた戦争犯罪となる。

KPFAラジオの通信員サーメフ・ハビーブによると「ガザ北部の町バイト・ラヒアで、[アル=アタトラ家の]約17人が殺害された。これには数人の子どもと、二人の兄弟、20歳の男性ひとり、そして多くの老齢男性が含まれ、全員が一発のロケット弾によって命を奪われた」という。ハビーブはさらにイスラエル軍の飛行機が複数の浄水場、数十軒の住宅を攻撃し、白リン焼夷弾武器が使用され、少なくとも15のモスクが爆撃されたことを報告している。モスクに対する攻撃で何十人かの人々が殺された。イスラエル外相ツィピ・リブニは根気良く次のように説明する。

「戦争は戦争です。このようなことは起こり得ます。私たちが意図的にそうすることはありません。ただし民間人に死傷者が出ることを完全に避けることはできない。とにかく、この責任はハマスが負うべきです」。

イスラエルがガザに強いてきた2年間にわたる経済的封鎖の結果、積み重ねられた深刻な食糧や医療品不足に悩むパレスチナの人々の苦しみは、この殺戮によってさらに深まるばかりだ。

2006年、イスラエル首相エフド・オルメルトの顧問ドブ・ウェイグラスは、封鎖について次のように語った。

「これは、パレスチナ人にダイエットは強要しても飢え死にはさせない、という発想に基づいています」

援助は届いているとするリブニの主張にもかかわらず、国連はガザに到達する救護に「重大なギャップがある」と警告している。

UNRWA(国連パレスチナ難民救済事業機関)のスポークスマン、クリストファー・ギュネスは、人道的危機は存在しないという主張について、それは非常識だと却下している。彼は次のように説明している。

「私が所属する組織UNRWA(国連パレスチナ難民救済事業機関)は、およそ9000人から1万人の職員を現地に配備しています。職員は、ガザ地区の一般市民と話をしている。……人々は苦しんでいる。これまでに殺害された人々の4分の1は民間人でした [2400人を越える負傷者の大半は民間人]。だから、民間人に死傷者が出ることを全力を挙げて避けているという言葉は、まったく、ただむなしく響くだけです」

米国の軍隊が軍事作戦中に電力、食料、水そして医療品の供給源を絶ち、いかに各都市を定期的に封鎖してきたかについて、私はイラクから報告してきた。2003年3月の米国によるイラク侵略に先立ち、12年半におよぶ大量殺戮に等しい制裁で50万人の子供の命が奪われたことを忘れてはならない。イラクの人々は、ガザの人々と同じように、「ダイエット」を強いられていたのである。

さてガザでは、赤十字国際委員会が日曜日に述べたところによると、イスラエル軍により同組織の救急医療隊がこの地域に入ることを妨害されて三日目になるという。ここでもまたイラクでの状況と異様なほど同じことが起きており、特に2004年の二度におよぶ米軍のファルージャ包囲では、医療および救援チームが街へ入ることは許されず、すでに中にいた一団が負傷者の救助を試みるたびに軍隊から攻撃を受けた。

KPFA通信員ハビーブは、イスラエルの戦車の妨害で負傷した人々のもとに救急車がかけつけることができないこと、またある家族を救助しようとしていた三人の救急医療士と救急車人員がイスラエル軍によって殺されたことを報告している。さらにオックスファム救助機関もその事件について報告している。ジャーナリスト活動家エバ・ジャシーウィックは次のように伝えている。

「12月31日、午前2時ごろ、ガザ北部のジャバリーヤ地区で、負傷者の救助に向かう二人の緊急医療隊員がイスラエルのミサイルに狙われました。一人は即死。もう一人も、身体内部の損傷により引き起こされた合併症のために、間もなく死亡しました。二日後、さらに二人の隊員がガザ東部で負傷しています。この時も勤務中に起きたことであり、この時も負傷者の救助に向かっているところでした。ジュネーブ条約によれば、イスラエルは、医療隊員が負傷者の救助に向かえるように、通行を許可し、その安全を確保する義務がある。それに反して、イスラエルは医療隊員を常に標的としています」

文化的であるとされる政府に対し、理論上は国際法によって保護されているはずの医療人員を意図的に攻撃していると非難することは、直接自分で戦争を体験したことのない人にとって、信じがたく、ショックが大きいであろうことを私は理解している。しかし、他にも私と同じくこのような戦術を何度か直接目撃した人々がいる。私は2006年の夏にレバノン南部での攻撃でイスラエル軍がこの手段を使用するのを目撃しており、2004年に米国軍がファルージャでこれを行ったのも目撃している。

これが戦争の狂気なのだ。

ベテランのジャーナリスト、ロバート・フィスクは、戦争のことを「人間的精神の完全なる敗北」と説明している。
戦争という野犬が放たれたときと、ガザで起きている大規模な殺戮に、何も違いがないことは誰にも一目瞭然ではないだろうか。精神異常であり、精神病である。何よりもそのまことしやかな「理屈」―― つまり、戦争によってある危機が解決できるという基本的な前提そのものが嘘なのだ。歴史が始って以来、このことはすでに明らかではないのか。

「このような戦争の出来事は、古代の儀式法典に従う先祖がえりをした野蛮人たちによって実行されるのではない。通常は、文明的価値、人道的法律、倫理的教育、審美的文化を誇る社会が訓練を施した軍隊によって実行される。また、それは日本に典型的だったり、アメリカに典型的だったり、ドイツ、セルビアなどに特有だったりというような、一国に特有な行動でもない。また軍隊内にいる例外的な精神病質の犯罪者だけに限った行動でもない。まったくそうではないのだ。これが戦争である。これが戦闘なのだ。集団的規模であろうと、個人的規模であろうと、どちらにせよ極悪非道に荒れ狂う暴力の因襲であり、執念深い元型的行動である。これは軍神マールスにより統治され、呪縛され、支配される象徴的元型の行動なのである。」

―ジェイムズ・ヒルマン、ユング派心理学者 「戦争への恐るべき愛」より

今こそ、これはとにかく止めなければならない。どのような人間であれ、その人種、宗教、国籍が何であろうと、誰も戦争の影響を耐え忍ぶべきではない。
しかし、世界中の無能な各政府機関は今もなお仲裁に踏み込もうとせず、積極的な黙認を決め込んで、攻撃を受けている人々の極度の苦痛をさらに悪化させている。エジプトはラファの道を完全に閉じることで、不運な生存者であるガザ住人たちに対し支援物資を届ける手段を事実上遮断した。

しかし、異議の余地なく無能の極みこの上ない栄誉を授与されるべきは国連である。ここ何年もの間試され経験を積んだやり方で、先週の土曜日の夜、米国はまたもやイスラエルの行動を保護する拒否権行使を振り回した。イスラエルとハマスとの間の暴力がエスカレートすることに懸念を表明し、ガザ地域とイスラエル南部での即時停戦を求める国連安保委員会の声明承認を阻止したのである。ことによると、そのような声明が承認されたところで、暴力を抑制できない空っぽなしぐさにしかならなかったであろうから、これはそれほどの損害にならないということで慰めになるのかもしれない。

危機の救いようのなさに苛立ち、国連における米国の拒否権に明らかな怒りを示して、国連総会議長であるニカラグアのミギュエル・エスコト=ブロックマンはイスラエルの行動を激しく非難し、次のように発言した。「これは極悪非道だ。まさにそれ以外の呼び名は見つからない。またもや、世界は安保理事会の機能不全の有様を愕然として見守っている。」

フォーク教授は「ガザ破局の解説」と題した最近の記事で次のように述べている。

「ガザの人々は最悪かつ残酷な地政学上の犠牲者である。軍事的能力をまっ たく持たず、F-16爆撃機やアパッチ・ヘリコプターを駆使したイスラエルの攻撃に対し完全に無防備であり、本質的に防衛手段を持たない社会に対し、イスラエル自身が「完全なる戦争」と呼ぶ状況が展開している。これは、また、大虐殺が続き、死体が積み上げられる中で、ジュネーブ条約で取り決められている国際人道保護法の目にあまる違反が、沈黙のうちに無視されていることを意味する。さらに、これは国連の主要メンバーが、大規模な違法的武力行使の影響から人々を守るという政治的意思能力を剥奪したことにより、国連はまたもやその無能さを露呈したということでもある。最後に、これは世界中で市民たちが声を張り上げ行進しても、何もなかったかのごとく殺戮が続くことを意味する。ガザで毎日毎日描き出される画像は、新たな取り組みを懇願している。それは、特に軍国主義から外交的リーダーシップへの転換を含め、変革を国民に約束した新しいリーダーシップによる国際法と国連憲章の権威に対する取り組みであり、それはまずここ米国で始めなければならない。」

「怒り狂う二つの炎がぶつかり合うとき、その怒りを煽る種の数々もいずれ燃え尽きる」とは、「じゃじゃ馬ならし」からのシェイクスピアの言葉である。しかし、世界最悪の衝突とされる状況では、逆のことが起きている。凶暴さも火炎も衰えることなく猛威を振るい続けている。