TUP BULLETIN

速報812号 戦時下ガザからの報告13――アブデルワーヘド教授

投稿日 2009年2月5日

◎子どもに深い傷跡が残る。自家発電で命がけで世界に発信される現地の声


巷間では3週間で死者1300人以上という数字が強調されていますが、生き延びた何千人という子どもたちが、家族を失い、友人を失い、3週間以上も恐怖のただなかに置かれ、生涯にわたる心の傷を負っています。
 
依然、戦闘機が飛来し、空襲すると見せかけて、人々の恐怖を弄んでいるようすが綴られています。
 
ガザのアブデルワーヘド教授からのメール(1/27)の邦訳です。
〔岡真理/TUP〕 ―― 凡例: (原注) [訳注]
 

 
【メールその41】
日時: 2009年1月27日 (火) 07:29
件名: トラウマを負った子どもたち
 
家族を失いトラウマを負ったパレスチナ人の子どもたちは、心理セラピーや特別のケアを必要としている! 誰がこの子たちの世話をするのだ? 疑問なのだが! 地元にも心理セラピーのための団体はいくつかあるが、諸般の事情で事態に対処できない。とはいえ、ここでその理由を説明しているわけにはいかない。子どもたちは今もなお悪い思い出から離れられない。恐い夜やうなされた悪夢の数々について今も話している。悲惨、語られていない物語、ストレス、抑鬱といったもののオンパレードを見ているようだ!
 
そんなさなかの一昨日、悪夢のような日々の記憶がよみがえった。PFLP[パレスチナ解放人民戦線]が 2発のロケット弾をイスラエルに向けて発射し、それに対してイスラエルが報復するという噂が流れたのだ。中央郵便局をはじめとした多くの政府の建物から、そしてガザ市内の多くの学校から、みなが緊急避難した! だが、生徒たちは学校から走って逃げ出したものの、どこへ行けばよいか分からなかった。下校時間ではなかったので、スクールバスもなかったのだ! 多くの海外メディアの特派員たちも事態の新たな展開ないし混迷化を恐れて、ただちにガザを離れた!
 
きのうは、アメリカ製の F16戦闘爆撃機が頭上を飛んでいたのだが、すわ空襲すると見せかけて、音速の壁を破って、すさまじい爆音をとどろかせた! ガザ市内の誰もが恐怖におののいた。どこかで爆発があったと思ったのだ!
 
イスラエルは依然、なんだろうとおかまいなく恐怖をあおり続けている! それなのに、国際社会はガザへの武器密輸について真剣に議論している! いったいどんな武器がガザに密輸されているというのだ。実際問題、侵攻が証明したのは、イスラエルのいかなる種類の航空機であれヘリコプターであれ、困らせることのできる武器など、パレスチナ人は何一つ持っていないということだった。連中は、対空砲火ひとつ受けずに飛来し攻撃したではないか!
 
イスラエルの戦車は、軍事用ブルドーザーがガザの農地の 60%を破壊するのを護衛し、また、ジャバリーヤのエズベト・アーベドラッボとガザ市のはるか北部にあるアタートラとのパレスチナ人の住宅を破壊するときもブルドーザーを守った! 現場に到着した外国メディアの記者たちはその目を疑った。土地の地勢そのものがすっかり変わり果てていたからだ。
 
人々の精神状態さえすっかり変わってしまった。土地はまるで地震に襲われたかのようだ。そして……なんといっても、それはみな市民の住まいだったのだ! 何千人もの人々が家を追われて、UNRWAの学校で生活したり、[今は変わり果ててしまった]かつて自分たちの住まいであったものから離れて、どこかの親族のもとに身を寄せている! とにもかくにも、今のこの様子がどんなか、とても言葉では言い表せない! ホロコーストよりおぞましい!450人もの幼児や子どもがハマースのメンバーや支援者だったなどとはついぞ知らなかった!
 
みなさんは、どうかお元気で……
 
 

原文: Prof. Abdelwahed (ガザ・アル=アズハル大学教養・人文学部英語学科) 発信の一連の電子メール邦訳: 岡真理/TUP
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