TUP BULLETIN

速報852号 エルズバーグ、オバマの欺瞞を指摘

投稿日 2010年5月11日
戦争の歯車を止めるのは、真実の力だ――ダニエル・エルズバーグ

戦争という国家事業の歯車にブレーキをかけるには何が必要なのか。それは国民に戦争の真実を伝えることである。そのためには政府機関内部からの告発が必要だ。

「アメリカで最も危険な男」と呼ばれたダニエル・エルズバーグは、長年、政府機関で働く人々に内部告発行動を呼びかけてきた。そして、もしペンタゴン・ペーパーズが今手に入ったとしたら迷わずインターネット上で公開するだろうと述べている。

最近、アフガニスタン戦争を正当化するには都合の悪いアイケンベリー米国大使の意見が暴露され、インターネット上で広く閲覧された。また、4月初旬には、米軍ヘリコプターから丸腰の一般市民が虐殺される場面を映した生々しいビデオがウィキリークス(http://www.wikileaks.org/)というプロジェクトで公開された。エルズバーグの呼びかけに応えた次世代の人々による内部告発行動の結果であろう。エルズバーグの回顧録的ドキュメンタリー映画(*)はオスカーにノミネートされながら惜しくも受賞を逃したが、彼はメディア露出度を最大限に活用して、このメッセージを広めるために精力的な活動を続けている。
今回の速報では、ダニエル・エルズバーグによるオバマ大統領への苦言に耳を傾けてみよう。

*「The Most Dangerous Man in America: Daniel Ellsberg and the Pentagon Papers」(仮題『アメリカで最も危険な男――ダニエル・エルズバーグとペンタゴン・ペーパーズ』)詳細は、http://www.ellsberg.net/ を参照。

翻訳:福永克紀・宮前ゆかり、協力:山崎久隆/TUP

「大統領はアメリカ国民を騙している」――ペンタゴン・ペーパーズを暴露したダニエル・エルズバーグがオバマ大統領とアフガニスタン・イラク戦争について語る

2010年3月30日

デモクラシー・ナウ!
http://www.democracynow.org/2010/3/30/our_president_is_deceiving_the_american
 
1970年代にベトナム戦争を終結させるための運動で大きな役割を担った人物に登場していただきます。1971年、当時のランド研究所のアナリストだったダニエル・エルズバーグは、後にペンタゴン・ペーパーズとして知られることになる文書、つまり米国が真にどれほどベトナムに関与したのかを記述した7000ページの秘密活動記録文書をメディアに漏洩しました。スパイ行為の罪に対する終身刑を回避した後、ダニエル・エルズバーグは今日に至るまで米国の軍国主義に反対を表明し続けてきました。
 
アンジャリ・カマー:オバマ大統領は就任以来初めてのアフガニスタン訪問を終え、月曜日に米国に帰国しました。ほんの6時間の訪問で、オバマはアフガニスタン大統領ハーミド・カルザイーおよびその他アフガニスタン政権高官たちと会見し、その後バグラム空軍基地で米国兵士の一団に式辞を述べました。前大統領ジョージ・W・ブッシュが頻繁に表明していたテーマを繰り返し、オバマは、アフガニスタン侵攻は米国が好んで選択した戦争ではないと語りました。
[訳注:オバマ大統領は、ワシントン郊外のキャンプ・デービッドで過ごす予定と事前公表されていた2010年3月28日に、アフガニスタンを電撃訪問した]
 
バラック・オバマ大統領:我々がここにいる理由を忘れてはなりません。我々はこの戦争を選んだわけではありません。これはアメリカがその影響力を拡大しようとして他人事に干渉するためにやっている行動ではありません。我々は9/11に悪意ある攻撃を受けました。我々の同胞男女が何千人も殺されました。そしてここはあの犯罪を犯した加害者たち、アル=カーイダが統率力を未だに維持している地域です。我々の母国に対する犯罪計画、我々の同盟国に対する犯罪計画、アフガニスタンやパキスタンの人々に対する犯罪計画が、この話をしている最中にも、ここで行われているのです。
 
そして、もしこの地域が後退するような事態に陥ったとしたら、タリバーンがこの国を奪回してアル=カーイダが咎められずに活動できるようなことになれば、さらに多くのアメリカ人の命が危険にさらされ、アフガニスタンの人々は発展や繁栄へのチャンスを失うだろうし、世界はさらに不安定になってしまいます。私が諸君の最高司令官である限り、そのようなことは許しません。
 
だからこそ、君たちはここにいるのです。私は兵役を担う諸君全員に対して、次のように約束してきました。絶対に必要でない限り、私は諸君を危険な戦場に送り出すことはしないと。私は君たちが払う代償に思いを馳せ、心を痛めています。だからこそ、私は必要がない限り諸君を送り出しはしないと約束します。
 
アンジャリ・カマー:オバマ大統領の訪問は、彼がアフガニスタンへさらに3万人の派兵を命じて4ヶ月目のことであり、彼が就任してからの派兵数は合計5万人になります。これは、反戦を唱える批判者たちがオバマはブッシュ大統領の二期目の外交政策をほとんど踏襲していると非難する原因となった、数々の大統領決定事項のひとつです。
 
エイミー・グッドマン:では、ここで1970年代にベトナム戦争を終結させるための運動で大きな役割を担った人物に登場していただきます。1971年、当時のランド研究所のアナリストだったダニエル・エルズバーグは、後にペンタゴン・ペーパーズとして知られることになる文書、つまり米国が真にどれほどベトナムに関与したのかを記述した7000ページの秘密活動記録文書をメディアに漏洩しました。スパイ行為の罪に対する終身刑を回避した後、ダニエル・エルズバーグは今日に至るまで米国の軍国主義に反対を表明し続けてきました。彼はカリフォルニア大学バークレー校からこの番組に参加しています。
 
デモクラシー・ナウ!にようこそ、ダン・エルズバーグさん。オバマ大統領による突然のアフガニスタン訪問のその後、お考えをお聞かせください。
 
ダニエル・エルズバーグ:オバマ大統領は、この戦争を「オバマの戦争」と命名するに相応しいあらゆる象徴的なステップを踏んでいます。丁度1969年11月にベトナム戦争がニクソンの戦争になったように、つまりそのようなことにならないようにと私がペンタゴン・ペーパーズのコピーを作っていた頃のようです。そして、それはジョンソンがベトナム戦争をジョンソンの戦争にしたように、また1965年6月に私が上司マクナマラのために働いていたときに彼がベトナム戦争を拡大することに決め、そこで終わりなき拡大を展開し、それをマクナマラの戦争にしたのと同じです。またそれは、アイゼンハワーやケネディがそれを終わりなき戦争にするという以前からの遂行決意を踏襲していたのと同じです。オバマはそれを現在あそこで行っているわけで、結局はほとんど同じ結果、特に巻き込まれた国やアメリカ人にとって、悲劇的な結果をもたらすであろうと思いますし、多分彼には、ジョンソンが直面したのと同じような圧力がかかっているだろうと思います。
 
エイミー・グッドマン:ダン・エルズバーグさん、このニューヨークで「トップ・シークレット(最高機密)」という非常に興味深い演劇の上演の後で、あなたが講演するのを拝見しました。この演劇はニューヨークタイムズとペンタゴン・ペーパーズに関するものというわけではなくて、もちろん、ニューヨークタイムズは最初にペンタゴン・ペーパーズの印刷を開始した後でニクソン政府によって沈黙を命じられたわけですね。そうしたら次にワシントンポストがこの書類を印刷し始めた。この演劇はそれに関する内容です。とにかく、その演劇の後で、あなたはアフガニスタンの米国大使についてお話され、アイケンベリー大使がこれらのメモや電信で発言した内容が公になったこと、それがいかに重要であるかについてお話されました。それらについてお話くださいますか?
 
ダニエル・エルズバーグ:はい。そうですね、もう何年も前の、私たちがイラクを侵略することを決めたときに根拠となった2002年の嘘は、私がペンタゴンにいたときにベトナム戦争に突入した頃と同じような嘘でした。その頃から私は政府の高官たちにこう言ってきました。「私のようなことはしないでください。私が1963年や1964年、まだ戦争が始まる前に、まだ爆弾が落とされる前にしておけばよかったのにと思うことを、実行してください。私のように待ってはなりません。すでに戦争が始まってしまい、実際に戦争を止めることができなくなるまで待ってはなりません。希望がないという真実が政府内で理解され、不可能性について、つまりどのような意味でもその地での勝利はありえないという真実を語らなければならなくなるまで、待ってはいけません。今、それを実行してください」
 
実際、最近のことですが、私のその呼びかけに答えが返ってきました。それが呼びかけに対する直接の結果かどうかは知りませんが、誰か政府の高官が、今はオバマ大統領の目からするとアメリカで最も危険な人物になっています。もちろん、きっとたった今、機密漏洩阻止作業が行われており、誰がその通信を、カーブルの米国大使カール・アイケンベリーの秘密の通信を漏洩したのかを探し出すための捜索が行われていることでしょう。カール・アイケンベリーは、中将、退役軍人で、アフガニスタンでは司令官だった人物で、最初はアフガニスタン軍を訓練する責任者だったが、のちにマクリスタルに引き継ぐまでアフガニスタンにおける米軍の作戦すべてを統率していました。今はそこでわが国が支援しているいわゆる政府、その主席であるカルザイーを相手とするわが国の大使となっています。
 
そしてその通信、秘密通信は大統領が決定を発表した後に、誰かが1月に漏洩しました。でも、これを言うのは残念ですが、この人物には私が最も強く呼びかけていること、彼が伝えた真実、つまりこの通信を送ることを、この大統領決定が発表される前にやって欲しかったですね。それでも、この決定は完全に執行されたわけではなく、特に議会では、歳出予算として成立しなければなりません。議員たちは自分たちが決める歳出の内容をきちんと読むべきでしょうね。
 
アイケンベリーの通信は現在、この段階では、アフガニスタンのペンタゴン・ペーパーズの要約のように読むことができます。そしてそれは今私たちが必要としている書類の第一弾なのでしょう。地名を「サイゴン」から「カーブル」に変え、わが国お雇いのベトナム共和国軍を、その代わりを担うアフガニスタン国民軍に置き換えてみれば、これらはほとんど同じように読み取れます。アイケンベリーは自分が大使として派遣された国の大統領、そしてオバマ大統領と一緒に訪問した相手、カルザイーについて、説明しています。そしてカルザイーはアイケンベリーの自分に対する評価、つまり、彼が米国にとって十分な戦略パートナーではないと評価され、そして汚職や効率が低いことが理由として挙げられているという評価を読んだことでしょう。
 
私たちが耳にするところでは、オバマが17時間かけてアフガニスタンに出かけた理由は、カルザイーの政府を清廉にすべきであるとするわが国の要求をオバマが彼に個人的に伝えるためだったそうです。ケネディやジョンソンがわが国のマフィアを雇ってカストロを捕らえようと決めたときのことを思い出します。彼らはわざわざマフィアにこんなことは言わなかったと思いますよ。「ところで、頼みたいんだがね、君たちが僕たちのパートナーになるんだったら、君たちの身を潔白にしてくれないかね、麻薬商売から手を引いてくれないか」。カルザイー政権では、マフィアの場合と同じように、汚職とは私たち、麻薬とは私たちのことなのです。汚職こそがカルザイー政権です。それがカルザイーの地盤であり、カルザイーの収入源です。カルザイーが、例えば自分の兄弟であるアフメド・ワリー・カルザイーを我々の次の作戦陣地であるカンダハールから取り除くことはまったくありえません。汚職がカンダハールの中心を占めている限り、麻薬取引がその中心を占めている限り、大統領カルザイーの弟、ワリーがそこで権力を握っている以上、カンダハールではどんな成功もありえないと、わが統合参謀本部議長が言っている事実にも関わらずにね。
 
明らかに、これは単なる象徴などではありません。アフガニスタンでわが国が人心に訴えているはずの相手の人々の目に正当性が受け入れられる期待がまったく持てないような政府を、私たちが擁立しているということが事実です。それこそがこの戦争すべての象徴となっています。アフガニスタンでの成功の可能性がまったくないのは、ソビエトが10年かけてあそこで何も達成できなかったのと同じであり、私たちにとってベトナムで勝利をおさめる現実的な可能性がフランスより大きくなかったのと同じです。しかし各国家は他の国々の失敗からほとんど何も学ぶことができないようです。
 
アンジャリ・カマー:ダン・エルズバーグさん、対武装抵抗戦略について、あなたはどのように評価されていますか。オバマ政権が推進しており、ペトレイアス将軍とスタンレー・マクリスタルが推進している戦略のことです。
 
ダニエル・エルズバーグ:その理論はよく知っていますよ。と言うのも私がベトナムで長年取り組んでいたのがそれで、対武装抵抗理論、つまり戦略理論です。私の仕事は、字句通り言うと「進展」、それを評価することで、それはベトナムでは何の進展もないこと、完全な行き詰まり、進展の完全な欠落を意味しました。そのために私はベトナム43県の38県を歴訪し、行き詰まりを報告しました。この報告では「進展」という言葉が使われていたのだが、それを聞いたマクナマラはその意味を理解しました。丁度オバマが「進展」について語っていたときのように。
 
この戦略が無視しているのは、あそこにいる私たちの敵にとって、外国軍の存在が新兵を集める主な手段だという点です。私たちが外国軍を増やすほど、その新兵募集手段を支えることになる。私たちが殺す敵の一人ひとりが、特にその家族を殺され、結婚式への攻撃で参列する人々が殺され、葬儀参列者が殺されている人たちが、外国勢力を自国から追い出そうとしている。そういう人たちすべてがより多くの新兵を集めることになり、オバマ大統領が言っていることとは正反対に、それが私たちには勝ち目がないことを保証してくれるのです。オバマが我々はあきらめないと強調しているとき、少なくとも、さしあたり、残念ながら、それは正しい。これから何年もかかるでしょう。
 
ところで、私は、これはイラクにも当てはまると考えています。それに、わが国の大統領はアメリカ国民を欺いていると思います。軽い意味で言うのではありません。彼の前任者すべてが、私が仕えた大統領たち、ケネディもジョンソンもニクソンもすべてが、ベトナムに関して国民を欺いたのと同じように。特に、オバマが一般教書演説で、2011年末までにイラクからすべての軍隊を、戦闘部隊だけでなく全部隊を撤退させると言っているとき、それは嘘だと思いますよ、そのうえ彼はそれが嘘だと知っているし、傭兵だけではなく米兵が配置される米国基地を撤去しようと本気で考えたり計画したりはしていないと思います、絶対にね。オバマの第二期まで、または彼の後継者が誰であれその第二期までには、3万から5万人の米兵がイラクに無期限に駐留する将来を見ることになるでしょう。私たちの子供たちの命のことを話しているのですよ、実際の計画での話です。
 
そしてアフガニスタンにおいては、同じ一般教書演説でオバマがアフガニスタンへのこの第一次の臨時部隊増派を示唆するとき、この増派は事態を悪化させることになり、改善することはないと言ってカール・アイケンベリー大使が反論していた増派で、カルザイー政府がさらに我々に依存することになり、わが国撤退の日時を早めるよりむしろ遅らせることになると言って大統領に特に反対していたもので……、この増派は単に第一次の増派に過ぎません。大統領は来年の末までに、いやむしろ今年中かも知れないが、3万から4万人のアフガニスタンへのこの増派を示唆して10万人にも昇るレベルに増やすと言っており、そうなるとNATO軍と合わせて、ソ連がアフガニスタンを占領して10年後に失敗したときのレベルにまで引き上げることになり、それがマクリスタルの最後の要求だったなんて、まったくばかげている。マクリスタルはこの時点で8万人の増派を求めていたのであり、それもまた第一次増派のひとつでした。
 
私が知っている対武装抵抗ドクトリンは、マクリスタルとペトレイアスのドクトリンに関する記述を読む限り、彼らのものと同様良くもあり悪くもあるが、それによれば、あの規模の国では数10万人もの軍隊が必要です。その数をアフガニスタン軍に求めることはできません。アフガニスタン軍の兵士は、私たちがアフガニスタン新兵を雇う早さとほぼ同じ速さで脱走し、まるで私たちが共に働いたベトナム兵士の政府と同じように、外国勢のために働こうという意欲がそれほどあるわけではない。アフガニスタン軍ではそのギャップを埋められません。わが国の兵士をイラクから実際に帰還させ、13万人から、今では9万人からかも知れないが、3万から5万人に減らせば、余分になった10万人の兵士が帰国して両親や配偶者や子供たちとわずかな時間を過ごすだけでアフガニスタンに行くことになる。今から4年後のアフガニスタンでは、今から2年後よりももっとたくさんの兵士がいることになると思います。国民はこのことを理解していないようだし、費用見積もりを見るとアフガニスタンでのわが国の取り組みは最終的に1兆ドルなどという数字になる。それを2倍にしてみればいい。もっと兵士が必要になるはずです。こういう見積もりは――イラクでも同様の見積もりができるが――、すべての兵士をイラクから撤退させるという意向を基にしています。そんなことは起こりえません。
 
エイミー・グッドマン:ダン・エルズバーグさん……
 
ダニエル・エルズバーグ:ですから、こんな見積もりは幻想です。2倍にしてみればいい。

エイミー・グッドマン:昨年の夏以降、米国とNATOの軍隊が、軍検問所内ないしはその近くで30名のアフガニスタン人を殺害し、そのほかに80名を負傷させたと、カーブルの軍高官たちが認めました。どの事例でも、犠牲者が軍にとって危険であったと証明されてはいません。ある最近のテレビ会談で、スタンレー・マクリスタル司令官が「我々は驚異的数量の人々を射殺してきたが、私の知る限り、誰一人として脅威であったとは証明されていない」と言いました。これに対するあなたの返答は?
 
ダニエル・エルズバーグ:それは、マクリスタルにしては驚くほどの、驚くばかりに素直な評価です。そう言ったことは称賛しておきましょう。彼はまた、初めて、民間人犠牲者を減らす希望を語っています。だが、現地米兵の数を大いに増強して交戦の数が増えれば、たとえ交戦ごとの民間人犠牲者の割合を減らしたとしても、その全体的な効果として、武装抵抗に加わることになる人たちの身内を殺していくことになります。
 
話をしているのは、ベトナムと同じように、2000年の伝統を持つ国のことで、国外からの侵略者を駆逐し、そう自負しているだけではなく実際に成功をおさめてきた国の話です。あの国では、組織化はうまくされてはいません。渓谷ごとに、部族ごとに、分裂した状態だと言えるでしょう。それが、国外勢力の支配を駆逐するには理想的な組織で、中央政府の支配に対してさえも――ここがベトナムとちょっと違うが――つまりカーブルによる支配に対してもそうであって、たとえカーブルがその行ないを正したとしても、すなわちカーブルがその性質をまるっきり変革したとしてもそうなのです。
 
アイケンベリーの論点のひとつは、カルザイーが彼の人生の現時点で、自分の特質を変えたり、政府の特質を変えたりすると想定する根拠はまったくないということです。ところで、この話は大統領に宛てたアイケンベリーの秘密電文にあったわけです。まるでペンタゴン・ペーパーズのようだ。公の証言では、つまり私たちが聞いた彼の議会での証言は「ええ、私はマクリスタルの計画を全面的に支持します」なのに、彼は秘密裏にそれを覆していた。「私は彼の計画を全面的に支持します。まったく信頼しています」。ようするに、大統領に仕えるどの役人とも同じく、大統領が決定を下した後でアイケンベリーは嘘をついた、というか、ともかく自分の秘密証言とは矛盾をきたした証言をした。ですから議会がすべきことは、ただ彼を引きずり戻し、ニューヨークタイムズのアーカイブで公開されて誰でも入手できる彼の秘密電文と議会証言の相違を明確にさせ、真実を語る機会を与え、辞任させることです。
[訳注:ニューヨークタイムズのアーカイブにある秘密電文
http://documents.nytimes.com/eikenberry-s-memos-on-the-strategy-in-afghanistan ]
 
アンジャリ・カマー:ダン・エルズバーグさん、あなたのペンタゴン・ペーパーズ漏洩が、ベトナム戦争終結を導く手だてとなりました。今イラクとアフガニスタンの戦争を終結させるためには、何が起こる必要があると思われますか。
 
ダニエル・エルズバーグ:議会に、どうにかして、勇気をだしてもらい、信念をもってこの戦争の予算を削除させるように、特に戦争拡大の予算を削減させるようにしなければなりません。バーバラ・リーという一人の女性議員は、かつて2001年にトンキン湾決議に相当するアフガニスタンの決議に反対票を投じたほどの勇気ある女性で、遠い昔のトンキン湾決議と同様に審問も議論も証拠もなしにただ大統領に白紙委任状を与えるだけだと指摘して反対したのですが、それも、その議会で反対票を投じたのは一人だけだったその彼女が、法案を提出していて――法案3966号だかだったと思うけど(正しくは3699号)――
アフガニスタンでの戦争を拡大させる追加予算の削減を提案しています。そしてその法案が、歳出予算案が待ち受けています。
 
歳出委員会の長デイビッド・オビーも、ナンシー・ペロシ下院議長も、ハリー・リード上院院内総務も、皆さらなる拡大には反対だと言った。元将軍でわが国の駐アフガニスタン大使であるアイケンベリーと同じように。しかし、それが、国民をアフガニスタンに送り込み、死なせたり殺させたりする歳出案に反対票を投じることを意味しますか。ありえない、まったく、まったくありえそうにありません。でも、彼らの同僚の誰かがするでしょう。
 
エイミー・グッドマン:あと10秒しかありません。
 
ダニエル・エルズバーグ:そして、私たちが同僚たちにそうするように圧力をかければ、それが私たちが望むもの、結局戦争を終わらせることができる道なのです。ベトナム戦争を終わらせることができたたったひとつの方法は、議会が資金を断ったことです。それが戦争を終わらせるたったひとつの方法で、それには長い時間がかかります……
 
エイミー・グッドマン:ダン・エルズバーグさん、ここで終らなければなりません。
 
ダニエル・エルズバーグ:……私がベトナミスタンと呼ぶ状況下では。
 
エイミー・グッドマン:ここで終らなければなりませんが、話は続けてデモクラシー・ナウ!のウェブに載せましょう。ヘンリー・キッシンジャーが「アメリカで最も危険な男」と呼んだダン・エルズバーグさんでした。