TUP BULLETIN

速報876号 エジプト民衆蜂起ウォッチング@ロンドン (その 2 )

投稿日 2011年2月1日

◎メガリークの衝撃:ロンドンで聞くエジプトの声 その2




刻々と変化するエジプト情勢から目が離せず、家にいる限りはテレビをつけっぱなしにしてウォッチングしている。それらの一部をタイプして自分のブログ


http://newsfromsw19.seesaa.net/


に掲載し、TUPのMLにも流したところ、メンバーからTUP速報の読者とも共有しようとの提案があった。そんなわけで「エジプト民衆蜂起ウォッチング@ロンドン」第二弾を速報します。第一弾(速報875号)はTUP速報のホームページでお読み下さい。


https://www.tup-bulletin.org/modules/contents/index.php?content_id=907


藤澤みどり/TUP


 

<第4信>

2011年02月01日火曜日9:00GMT (日本時間18:00)
 
 

革命なう@エジプト第8日

市民革命が起きることがようやく信じられるようになってきた。どうかこれ以上、誰の血も流れることのないように。

タフリール広場で夜を明かした人々が今日の巨大デモの準備を始めている。若い父親と母親が脇に立つ小さいテントの中から起き出してくる小さい男の子と女の子のきょうだい。大勢の興奮した大人たちに囲まれて街中の広場で過ごしたこの夜は、この子たちにとってどんな思い出になるんだろう。

カイロばかりじゃなく、アレクサンドリアでもスエズでも、他の都市でも同様にデモの準備が始まっているという。カイロでは夕べの時点ではまだインターネットも電話回線もあまり回復しておらず、人海戦術でデモを告知して回っていたらしい。

チャンネル4ニュースはメインキャスターのジョン・スノウが現地入りしていて(この人は根っからの現場記者らしく、いつも事件の震源地に行きたがる)デモの組織者の一人に街頭でインタビューしていたが、それによるとフライヤーを3万枚印刷していまそれを撒いているところだと言い、もし何かあって自分が殺されるようなことがあったとしてももう人々の流れは止まらないと、悲壮感ではな
く、むしろさっぱりとした様子で話していた。

動員の方法については、別のチャンネル(あっちこっちサーフィンしていたのでどこか忘れた)で電話インタビューに答えていた大学生(女性)も、人々が自主的に通りから通り、家から家を回ってデモ告知していると言い、聞いた人が自分も告知する側になり、どんどん広がっていると言っていた。

このコミュニティの濃さ。

昨日はアカウンタントに会いにセントラルに行き、行きがけに買ったガーディアンで、ガーディアンのウィキリークス本『ウィキリークスーージュリアン・アサンジの機密戦争内幕 Wikileaks Inside Julian Assange’s War on Secrecy』が31日発売と知ったので、用件をすませてからあっちこっち回ったんだけどまだどこにも売ってない。結局、地元まで戻ってきて駅前のウォーターストーン(書店チェーン)のカウンターで聞いたら、公式の発売日は2月1日になっていて、店頭に並ぶのはその2、3日あととのこと。ガーディアンに直接注文したほうが早いかしら。割引だし。

9.00 GMT

 
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<第5信>
2011年02月01日12:09GMT (日本時間01日21:09)
 
革命なう@エジプト第8日(続き)

エジプト人俳優のオマー・シャリフ(『アラビアのロレンス』『ドクトル・ジバゴ』)が滞在中のカイロのホテルからインタビューに答えていた。かれの宿泊している高層階の部屋は、二面の壁がすべてガラス張りになったすばらしく見晴らしのいい部屋で、窓辺に立つと人々でぎっしり埋まったタフリール広場が見渡せる。

「ほんとうに美しい眺めだ」「エジプトの人たちが、こんなに口々にデモクラシーという言葉を使うのを初めて聞いた。いままで一度も聞いたことがない。この状況が人々を勇気づけ、この言葉、デモクラシーを使わせているのだろう」

かれはこのデモを見届けて、今日、住まいのあるマドリッドに帰るそうだ。「若い人たちがほんとうに礼儀正しく、抗議行動もとてもよく組織化されていて、こんな若者たちがたくさんいてくれて心から誇らしい」

今日のプロテストに対しては軍事力を用いないと軍から宣言があり(国営テレビで放送され)、それを聞いてまだ半信半疑だった人々や、すでに家族を失って引きこもっていた人々なども街頭に出てくる決心をしたようだ。

さっき、電話インタビューを受けていた女生徒は、これが自分にとって生まれて初めて抗議行動だと言い、家族のだれもいままでプロテストにでたことはないが、今日はみんなでいくと言っていた。

2003年2月に「イラクを攻撃するな」デモに行ったときのことを思い出す。ロンドンの路上を200万の市民が埋めた。息子は7歳になったばかりで、自分で描いたウォーモンスターのバナーをもって出た。ノッティングヒルゲイトの駅からサークルラインに乗ると、同じ車両の中にいた少なくない人たちがデモの参加者で、かれのバナーの出来を口々に褒めてくれた。

あのとき、デモクラシーは裏切られた。議会制民主主義の限界を感じた。

今日はどうだろう。

BBCのベテラン戦場記者のジョン・シンプソンがカイロからレポートしている。「集まった人々は確かに30年の圧政に怒ってはいるが、心持ちも態度も非常に穏やかであり、陽気であり、まるでカーニバルのようだ」。スタジオからの「1989年と同じことが起きていますか?」との質問に、「事情が違うし、そっくり同じというわけではないが、this is a sort of 1989 moment だと言える」と答え
ていた。

経済ニュースのコーナーには旅行産業のエキスパートが出てきて、抗議行動が起きているのは国のほんの一部であり、いまは有名観光地のいくつかが機能していないが、ダメージを受けたわけではないので観光産業にはほとんど影響はないだろうと答えている。どのぐらいで観光客が戻りますかとのスタジオからの質問に対し、「数週間、長くても数ヶ月で」と答えた。「タイランドの暴動のあとも、ロンドン・ボムのあともそんなもんでした」

11.40GMT (現地時間:13.40)

タフリール広場で祈りが始まった。

国営テレビで(アルジャジーラがシャットダウンされているのでいまはこれしか放送していない)、ムバラク支持者のデモが放送されているそうだ。スタジオのアナウンサーは、クラッシュがないといいですね、とコメント。

これは夕べもあったお手盛りのものだろう。夕べはタフリール広場のすぐ近くの川岸にムバラク支持者が集まり(集められ)、ムバラク支持と、エルバラダイへの不支持(電話インタビューされた若者は、あまりにも汚い言葉なので言いたくないと答えていた)を繰り返し訴えていたようだ。国営放送はこの様子を放送し、数千人規模と言っていたが、その電話インタビューに答えた若者が実際に
見に行ってきての報告によれば、マキシマムで200人とのことだった。

広場を見渡す場所からジョン・シンプソンが報告する。過去30年、そこらじゅうに密告者がいる状態で、人々は思うことを口にすることもできなかった。いま、それが一斉に解き放たれて、みな思いの丈を口にしている。

カイロ市内に数カ所(7~8箇所ぐらいか)デモの起点が設けられている。だから、タフリール広場に集まっている人がすべてではない。

アレクサンドリアで取材中のBBCの記者は、群衆に近過ぎて全体の人数等の把握はできないが、非常にたくさんの人々が市内の何箇所の決められた場所に集まってきていると報告していた。

国連の人権高等弁務官事務所の報告があった。このプロテストが始まってからのエジプト全土での死者は300名。

そろそろ祈りが終わるころか。もう誰も死なないように。

12.09 GMT

 

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