TUP BULLETIN

速報926号 シリーズ:マラライ・ジョヤとアフガニスタンの今  第1回 マラライ・ジョヤ、アフガニスタンの隠れたヒーロー、ヒロインを代表して語る

投稿日 2011年10月7日

◎シリーズ:マラライ・ジョヤとアフガニスタンの今


2001年9月11日の出来事を受け、10年前の10月8日、米軍とNATO軍はアフガニスタン空爆を開始します。以後、今日まで続く「対テロ戦争」の始まりでした。こうして、ソ連の撤退以後、世界の忘却の中に打ち棄てられてきたアフガニスタンは9・11という出来事によって世界の耳目の中心となりました。けれども、2003年にイラク戦争が起こると、世界の関心はイラクに移り、アフガニスタンは再び忘れ去られていきました。


2014年末までに外国軍が完全撤退することが発表されてはいるものの、10年たっても外国軍の駐留は続き、アフガニスタン国内は「平和・安定」とはほど遠い状況です。「対テロ戦争」の開始から10年、アフガニスタンは今、どうなっているのでしょうか。


アフガニスタン空爆さなかの2001年11月、ローラ・ブッシュ大統領夫人(当時)は、全米向けラジオ演説で、空爆はターリバーンに抑圧されるアフガン女性解放のためと語り、アフガニスタンの女性の人権を理由に攻撃を正当化しました。しかし、10年後の現在、アフガニスタンでは女性の焼身自殺があとを絶ちません。多くの女性たちにとって、自ら命を絶つことが、絶望的な現実から救われる唯一の道だからです。


今月、アフガニスタンの女性人権活動家、元国会議員のマラライ・ジョヤさんが「RAWAと連帯する会」の招聘で来日し、広島・沖縄・大阪・京都・東京・名古屋でアフガニスタンの現状について講演会をおこないます。

(詳細はこちらをご覧ください。http://rawajp.org/?p=244


ジョヤさんは、2005年の議会選挙で、最年少で国会議員に選出されました。しかし、国会の内外で、内戦で国を破壊し、国民を虐殺した軍閥政治家を戦争犯罪者として糾弾し、その処罰を求め続けたために議員資格を停止されてしまいました。


現在、国内で、暗殺の危険にさらされながら、ターリバーン、軍閥、外国軍の占領という三重の敵と闘いつつ、女性のための人権活動に挺身しています。


日本もまたアフガニスタンの惨状と決して無縁ではありません。アフガニスタンに自衛隊が上陸こそしていないものの、インド洋に自衛隊を派遣し、米軍に燃料補給し、アメリカの「対テロ戦争」を支えてきました。また民主党政権は2009年、ジョヤさんがその腐敗を告発してやまないカルザイ政権に対して「2010年から5年間にわたり50億ドルの民生支援」をすることを発表しました。


マラライ・ジョヤさんが来日されるこの貴重な機会に、TUPは、これまでのジョヤさんの主張ならびにアフガニスタンに関する記事を速報として発信し、忘却にふされていたアフガニスタンの<今>をお伝えするとともに、私たちの責任について考えたいと思います。


シリーズ第1回は、本年5月、アメリカにおけるジョヤさんの発言です。ジョヤさんの主張のエッセンスが凝縮した文章です。


 

シリーズ前書き : 岡真理(TUP)

第1回翻訳:岡 真理

シリーズ「マラライ・ジョヤとアフガニスタンの今」
第1回 マラライ・ジョヤ、アフガニスタンの隠れたヒーロー、ヒロインを代表して語る

「合衆国はそもそもの最初から、汚いシナリオをもってやって来た」 — マラライ・ジョヤ、ナジュアン・ダードレ

Peace X Peace、
2011年5月16日

マラライ・ジョヤは、2005年に国会議員となったが、2007年半ば、戦争犯罪者が国会の場にいることを公然と弾劾したために、国会を追放される。最近、[自伝]“A Woman Among Warlords” (軍閥に囲まれた女)を出版、講演ツァーのため合衆国を来訪した。コネクション・ポイント・プロジェクトのマネージャー、ナジュアン・ダードレが、ワシントンDCのユニオン・ステーションでマラライ・ジョヤにインタビューした。マラライは以下のように語った…。


私はマラライ・ジョヤ、人権活動家です。アフガニスタンでは、民主的な心を持つ活動家は多くの困難、危険、障害に直面しています。私とほかのアフガン人活動家の違いはただ、私が有名だということだけ。私たちはみな、マフィア同様の傀儡体制、そして占領と闘っています。私たちは祖国に、正義、平和、民主主義、女性の権利、そして人権をもたらすために闘っています。

今、私が重要だと思うのは、アフガニスタンの人々、とりわけ女性の政治的意識を高めることです。女性は人口の大きな部分を占めていますが、その大半は教育を受けていません。女性の人権について彼女たちと話をすることはたいへん重要であると思います。彼女たちは自らの立場について目覚める必要があります。

私の仕事のひとつは、合衆国の集会に参加し —今、ここにいるのもそのためですが—、アフガニスタン国民のメッセージを伝えることです。そのメッセージのひとつは、アフガニスタンでは、軍事的な戦争だけでなく、プロパガンダの戦争も起きている、ということです。主流メディアは、強力な政治家の代弁者であり、世界の良心的な人々の目を曇らせています。私は、合衆国の良心的な人々に、彼らの政府の間違った振る舞いを知らせ、彼らにイスラーム原理主義者、ターリバーン、そして軍閥の精神構造がどういうものであるか語ることで、主流メディア〔の報道〕に対抗しています。同時に、国際的な連帯も求めています。

今回の合衆国訪問で、私は未来への希望を得ました。そして、アフガニスタンの政治や政治家の若い世代に対する信頼を築きました。アフガニスタンの人々を代表し、光栄にもノーム・チョムスキー教授にお会いすることもでき、たいへん嬉しいです。今日は “Devil’s Game: How the United States helped Unleash Fundamentalist Islam”(『悪魔のゲーム 合衆国はいかにして原理主義的イスラームを解き放ったか』)の著者であるロバート・ドレフュス氏ともお会いすることになっています。彼は、アフガニスタンのみならず他の無数の国におけるCIAの政策を暴露した、たぐい稀なアメリカ人です。

兵士の方々や、アフガニスタンに兵士として赴いた息子や娘を亡くした方々にもお会いしました。私は彼らに言いました「どうかその悲しみを街頭行動に変えてください。悼むだけでは十分ではありません。アフガニスタンにおける占領とこの残虐な戦争に反対する声をもっと大きく上げてください」

私は講演の中では、アフガニスタンの民主的な心をもった女性や男性のことを「隠れたヒーロー、ヒロイン」と呼んでいます。なぜなら、彼らはなかなか合衆国へ来たりすることはできません。私が、可能な限り、招待に応えるのはそのためです。彼らのメッセージを届け、良心的な人々の目から企業メディアがいかに現実を隠しているか、プロパガンダ・マシンの実態をあばくためです。

3月、合衆国政府は、私にビザの発給を拒否しましたが、それは政治的理由のためだと思います。過去に合衆国その他の西側諸国に行ったとき、私は戦争屋たちの欺瞞的な政策を暴露しました。正義を愛する人々に、納税者の何十億ドルというお金が軍閥や麻薬王、そしてターリバーンの懐に流れていることを話しました。占領軍による爆撃や集団虐殺について話しました。今回、ホワイトハウスはこれが耐えがたくて、ビザを拒否したのだと思います。

数年前、傀儡政権は私を国会から追放し、旅行を禁じました。今回は合衆国政府が、私の声を封じようとしています。西側の政府は、私の国を爆撃し、無辜の市民を殺しています。その大半は女性と子どもたちです。民主的な心を持った人々には、それぞれの政府に圧力をかけていただきたいと思います。これらの政府は、アフガニスタンにおける女性の権利や人権を主張していますが、バカげたことです。真実ではありません。

10年にわたる占領で、彼らは何千人もの無辜の市民を殺しながら、恥知らずにも、主流メディアで、これらの人々を暴徒やテロリストと呼んで、犠牲者の数を少なく発表してきました。そうすることで彼らは、アフガニスタンの人々の傷ついた心に塩を擦りこんでいるのです。これは、アフガニスタンの人々を裏切るだけでなく、アメリカの人々をも裏切ることです。納税者の何十億ドルというお金を浪費し、兵士たちの血を無駄に流しているのですから。政府は兵士たちに、ターリバーンと闘っているのだと言い聞かせながら、同時に、テロリストであるムッラー・オマル[ターリバーン指導者]に対し、マフィア同様の傀儡政権に加わるよう呼びかけているのです。

そもそもの最初から、合衆国は汚いシナリオをもってやって来ました。アフガニスタンがコントロールできれば、合衆国は中国、ロシア、イランなどのコントロールもより容易にできるようになり、中央アジアの共和国における天然ガスや石油へも手が届きます。アフガニスタンにおけるターリバーンや軍閥の存在を利用し、彼らは状況を危険なままにして、それを口実に占領を正当化しているのです。

アフガニスタンにおける不法行為の廉で数名の兵士を法廷で裁く代わりに、合衆国は、ロバート・ゲイツ[ブッシュ、オバマ両政権下の国防長官]やデヴィッド・ペトレイアス将軍[2010年7月~2011年7月、アフガニスタン国際治安支援部隊(ISAF)司令官兼アフガニスタン駐留米軍司令官]こそ、部隊に爆撃命令を出し、市民を殺害した廉で法廷で裁くべきです。オバマ政権もまた問題にされなくてはなりません。その対外政策はブッシュのそれにもまして危険なものです。最悪の集団虐殺は、オバマ政権下で起きているのです。公式の報告によれば、オバマが政権の座に就いてから、民間人の死者の数は24%も増加しています。

合衆国はなおも、アフガニスタンの女性の惨状を悪用しています。女性がなぜ、地獄のような状態に置かれているのか、誰も問いません。大半の州で、強かん、家庭内暴力、学校に通う少女たちに対する[硫酸や塩酸などの]酸や放火、毒物よる攻撃、強制結婚、性的虐待その他もろもろの悲惨な出来事が起きており、その数は増加しています。TIME誌が、[アフガニスタンの]女性の身に起きていることを報じていますが、同誌は、それが占領下で女性の身に起きていることでもあるについては、何も語っていません。

アフガニスタンのよく知られたことわざに、殺人者に妥協したらあなたも共犯者だ、というのがあります。アフガニスタンでは枚挙にいとまがないくらい、こうしたことが起きています。今やターリバーンと交渉しようとさえしているのです。状況はますます血塗られ、悲惨なものになっていくだけです。アフガニスタンの人々は、軍閥、ターリバーン、占領という3つの強大な敵によって、ぼろぼろになっています。これらすべてと闘うことは決して容易なことではありません。だからこそ、私たちは占領を終わらせたいのです。占領軍が立ち去りさえすれば、私たちは、国内の二つの敵と闘うことができるようになるからです。

いかなる国であれ、ほかの国に解放を与えることができるとは思いません。国はみずからの力によってこそ解放できるのです。私は多くの脅迫にさらされていますが、恐れてはいません。私が恐れるのはむしろ、これらの不正義に対して沈黙してしまうことです。

私は、ひとりの人間、大海の小さな一滴にすぎません。でも、この小さな一滴が、私の責任なのです。確かなことは、私よりも勇敢な「マラライ」がほかにもたくさんいるということ。私など較べるべくもないような、でも、誰も知らない「マラライ」たちがほかにも大勢いるのです。私の声は彼女たちの声でもあります。声なき者たちの小さな声です。


原文

[注]マラライ・ジョヤ自伝日本語版は、耕文社より10月刊行の予定です。